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私、人生迷ったら世界最強魔導士になりました。  作者: 工藤 零
第二章 『それぞれの道』
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幕間『×××××××』

「あいつが、死んだ?」


 母が発した言葉に、私は珍しく驚きを覚えた。


「ええ、そうなの。今朝、部屋の中で」


「へえ」


 その後、母が死んだ理由を話していたが、詳細には覚えていない。

 おそらく、あいつの普段の生活から察するに、アルコール依存症の類だ。


 ──やっとあいつが死んでくれた。

 感極まって、目尻に雫が浮かぶ。

 その涙は、はたから見れば悲しみによるものだったかもしれないが、私にとっても、母にとっても、それは喜びの涙でしかなかった。

 少しの涙を指先で拭き取り、母を見る。


「一応、お母さんはやらないといけない事があるから仕事休むけど、明日香はちゃんと学校へ行ってね」


「うん」


 朝食のパンを見つめて、返事をする。

 そのパンが視界の中で僅かに歪み出したのは、もしかしたら、過去に少しの心残りを抱いていたからなのかも知れない。

 私は、横たわる父の横顔を横目に、学校へ向かった。






「夏目君、もしかして、今日何かあったんじゃないか?いつもと変わったことが」


 机に向かっていると唐突に、先輩は鋭い声でそう言う。

 私は、ペンを置いて、先輩を見る。


「分かりますか?」


「ああ。何かが、いつもと違う」


「そうですかね……。まあ、気にしないで下さい。少し嬉しい事があっただけなんで」


 先輩の瞳から目を背け、書類をまとめながら口走る。

 先輩は、私のこの言葉に対してどう思うだろうか。

 今日は、私達だけの部室だ。なにも遠慮することはない。


「……そうかな。今日はいつもより、寂しそうな感じがするけれど」






 父の葬式は行われなかった。

 母は次の日、その次の日とどこかへ出かけていて、久し振りに自分1人だけの時間を過ごした。

 朝方、ようやく帰って来たと思うと、母は何やらぶつぶつと呟いていて、私のことなんか見向きもしなかった。

 学校から帰ると、もうすでにその姿はなく、一枚の書き置きとカードを残して、母の痕跡も、父の痕跡も何も残っていなかった。


 何があったのかは今も分からない。

 その夜はただただ、懐かしい頃の写真が入っている写真立てを握り締めて、泣いていた。






「大変な人生だったんですね……」


 ──何を……。


「もう大丈夫ですよ。もう少しで、私がその人生を、やり直させてあげます。もう少し眠って行ってください。もう少し、その記憶を私に……。あの記憶まで……」


 どこか聞いたことのあるような声が、私の涙を拭う。

 ──どこまで思い出せば、この地獄は終わるの……?

 あそこまで行ってしまえば、私の心は壊れてしまうかも知れないのに。

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