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私、人生迷ったら世界最強魔導士になりました。  作者: 工藤 零
第一章 『自分探しの旅』
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60『×××××××』

『夏目君。放課後の件だけど、僕の家ですることになった。大丈夫かい?』


『もちろんですとも!』


『はは。じゃあ、家で待ってるよ。直人くんも是非、連れて来てくれ』


驚きでつい、おかしな言葉遣いをしてしまった。

充電中のスマホを床に置き、ベッドにもたれ掛かる。


「勉強会、か」


当然、あの人も来るのだろう。それに、直人も一緒だ。

そのせいで、なかなか2人でいられるチャンスが来ない。

勿論、2人きりでいたいという欲望丸出しの言葉なんて、先輩にはおろか直人にも言えないが。


受験ももう間近だし、気を引き締めていかないと。今は恋愛にかまけている場合ではない。


「絶対、先輩と同じ高校に通うんだから」






「夏目君、どうしたんだい?さっきから上の空だよ?」


「あっ、ごめんなさい」


「だから、ここはね……」


先輩は、私が意識を取り戻したのを確認すると、説明を再開した。

最近、隣にいればいるほど、思いが強くなってしまっていっているような気がする。

それが勉強への原動力になっているのだから、否定するようなことはしないが、このままでいいのか、という疑問もある。

いつか伝えるべきなのに、今は……、といつまでも口に出せない自分がいるのも事実だ。


「理解出来たかい?」


「あっ、はい。ありがとうございます」


ノートを自分の方に引き戻し、ペンを握り直す。

しかし、いくら参考書を見つめていても、その内容が頭に入ってくることは一向になかった。






『先輩!受かりました!』


今しがたネットで確認した合否を簡略化して、先輩宛にメッセージを飛ばす。

すぐに既読がついて、通知音とともに返信が来た。


『おめでとう!今日は祝賀会を開かないとね。また、僕の家で集合でいいかい?』


『はい、すぐ行きます!』


次の返信を待たずに立ち上がり、クローゼットを勢いよく開く。

おめかし、と言っても化粧はしないし服もそれほどないので、憎たらしいもう一方の先輩に選んでもらった服を渋々手に取る。


──またもう一度、先輩と同じ学校に通える。

合格した喜びより、そちらの喜びの方が断然強かった。






「「合格、おめでとう!」」


その後行われたパーティは、少ない人数ながらも、盛大に執り行われた。

一体いつ用意したんだ、と言いたいぐらいのお菓子やジュースが所狭しと机の上に並んでいる。


「いやー、2人とも受かって良かった。努力した甲斐があったね」


「先輩方のおかげですよ!成績底辺の直人まで受かるなんて……。やっぱり、先輩方は偉大です!」


「本当ね。夏目さんは勿論、直人君も、よく頑張ったわ。でも、厳しくなるのは今からよ。うちの学校は超スパルタなんだから」


「そうですよね……。これからもっと頑張ります!」


せっかく受かったのだ。ここで安心する訳にはいかない。


「また一緒に登校できる日まで、後もう少しだね。でも、ここで勉強のペースを落としてはいけない。また明日、ここで勉強会を催すよ。いいかな?」


「はい!」


──ああ、今から高校生活が楽しみだ。

また、去年までと同じように楽しい日々を過ごせると思うと、期待の感が胸から溢れ出してしまいそうだ。

日が落ちるまで、その家には若者の楽しげな声が響き続けた。






「彼が死んだのは、あなた達のせいではないわ。でも決して、彼のせいでもない。……それだけは、覚えておいて」


涙を流しながら話す彼女の声が、泣きじゃくる私達の胸の中に、鋭利な牙となって刺さる。

結局、先輩と一緒に高校へ通うことは、1度として達成出来なかった。


──あれから2年経った今でも、あの鋭利な牙は、私達の胸の奥深くに刺さったままだ。

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