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私、人生迷ったら世界最強魔導士になりました。  作者: 工藤 零
第一章 『自分探しの旅』
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58『中央の街』

「うええぇ」


堪え難い吐き気が容赦なく胸を襲い、口を手で押さえる。

1週間程かかってやっと今、中央の街に着いたのは良いのだが、毎回乗るたびに起こるこの馬車酔いは如何しようも無い。

息を吸って吐き、呼吸を整える。


「ふぅ……」


そんな私の疲労もつゆ知らず、ラリアンと素材屋のおじさんはこちらを見もせずに喋っている。

ルイと直人も、軽い足取りで街の中を走り回っている。

──羨ましい。


酔いはどうにか治ったので、私もルイと直人同様、街の中を見て回る。

今まで見てきた街より圧倒的に交通量が多い。

道もきちんと整備されているし、建物も、ほとんどが高層ビルだ。


「都会だ……」


東京なんて比べ物にならないぐらい、発展した街だ。

走っている車のほとんどは、タイヤなんか付いていないし、見上げても一番上が見えないんじゃないかと言うほどのビルも建っている。


「今までの街、何だったんだろ……」


「ほんとだよ……」


あまりにも圧倒的すぎるその光景に、私達は感動以外の感情は何も出て来なかった。


「ひとまず、私は素材屋に行ってくるぞ」


感動していない人もいるようだが。

とりあえず心を落ち着かせ、今するべき行動を考える。


「じゃあ、私は泊まる所を探してくるね」


「俺も」


「じゃあ、ルイも!」


いつの間にか戻ってきていたルイも加わり、再び分かれて行動することとなった。






「それにしても、凄いねえ。何でこんなにこの街は発展してるんだろう」


「魔法があるだけでこんなにも違うのか?」


確かに、魔法の力は偉大なはずだ。

しかし、それにしても発展しすぎでは……。


「この街は、転生者の人がつくったって聞いたことがあるの」


「へえ。それこの前、ラリアンが言ってた人とかかなあ」


「かもね」


確かに、転生者の力があればこのくらいの発展はしそうなものだ。


「あ、あったよ。ホテルって書いてあるとこ」


「じゃあ、そこ行こ」


「ホテルって何?なの」


……。

どうやら、私たちの予想は完全に当たっているようだ。






「おお、ここがこの街の宿屋か。随分と綺麗なんだな」


「うん。あ、ラリアンも同じ部屋ね。混んでるみたいで、安い部屋だと2部屋しか取れなかったの」


「了解した」


荷ほどきをしながら、帰ってきたラリアンに声をかける。

ラリアンは疲れたのか、部屋に入るなりベットにどかっと座った。


「どうだった?」


「ん?何がだ?」


「素材屋さん。いいの見つかった?頼まれてたでしょ?自分は入れないから代わりに買ってきてくれって」


「ああ。買ってきたぞ。もう渡してきたさ。その量を見て素材屋が言ったんだ。これは、もう街の仲が悪いことが妬ましい、ってさ」


私はそう言ったおじさんの顔を思い浮かべ、思わず笑う。


「仲、良くなるといいね」


「本当に。……ルイはどうしたんだ?姿が見えないぞ」


「ああ、なんか直人と遊ぶって隣の部屋に。迎えに行ってくれる?」


「それはいいが……。わざわざ迎えに行かなくてもいいんじゃないか?いっそ、向こうで寝ても……」


「ダメ」


ラリアンのデリカシーのない提案に即答する。

冗談じゃない。あいつ、放っておくと何するかわからないんだから。今ももしかしたら……。


「幼女に手を出したら駄目に決まってる。捕まって困るのはこっち……」


「分かった分かった。行ってくるよ」


ラリアンは勢いよく立ち上がって部屋の外へ出て行った。

私も丁度荷物を広げ終えたので、今後の計画を1人で練る事にする。


「明日にはきっと、抗議に行くはず……。でも、本当にそれでいいのかな?この街にそんな悪い人達の考えが眠っている様にはとても考えられない。きっと、一部の人だけ……」


「何をぶつぶつ言ってるの、おねーちゃん?」


「ふぁっ!?」


あまりにも驚いたので、思わず背中を仰け反らせる。


「ルイ?早いね」


「うん、お姉さんが早くって言ったからなの」


ルイは少しヘソを曲げている様で、その矛先はラリアンに向いているらしい。


「ごめんね、戻ってきてってお願いしたのは私なの」


「お姉ちゃんなの……?」


ルイが、顔を上げてこちらを見つめる。

その瞳は疑いで曇っていたが、だんだんと晴れていく。


「うん」


最後に、私が一つ頷くと、完全に疑いは晴れた様だ。


「じゃあ、許すの!」


「そう?ありがとー」


ルイの頭を撫で、ラリアンの方を向いてごめん、と手を顔の前でまっすぐに立てて謝る。

ラリアンはため息をついて部屋に入ってくると、小さい声で言った。


「これだから子供は……」


どうやら今回の件で、ラリアンは完全に子供嫌いになってしまったらしい。

ルイの頭を撫でるのをやめ、立ち上がると、ラリアンが何か言いたげにこちらを見ていた。


「ん?」


「明日は、政府棟に入るぞ。話はつけておいた。3時間だけ、話せるとのことだ」


「へえ、意外と空いてるんだねえ」


政府のお偉いさんなら、忙しくて急な話は出来ないはずだ。

だからせめて、早くて明後日ぐらいだと踏んでいたのだが……。


「何とも、昔のよしみで、だと。笑わせてくれるわ。すっかりお偉くなっちゃって。元はと言えば、みんなの世界だったというのに」


「ラリアンの知り合いなの?」


「まあな。会えば分かるさ。取り敢えず、今日はもう寝るぞ。明日の朝早くだ。遅刻は許されない」


「はあい」

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