番外編Ⅱ 1 admission
「初めまして。私はマヌル。これから仲良くしてね」
そう私に話しかけたのは、下級貴族の出だという髪の短い女の子だった。
彼女は前の席で、わざわざ私に話しかけてくれたのが、とても嬉しかった。
「私は、蘭。こちらこそよろしく、マヌルさん」
私は彼女の手を握って返事を返し、彼女との会話を始める。
今が昼休みという事もあって、私達の会話は一層弾んだ。
昼休みが終わる頃、彼女は少し考え込むようにして、私に向かって言った。
「ねえ、私の友達に会わない?きっと、話が合うと思うの。それに……」
「それに?」
「ううん。やっぱ何でもないわ。取り敢えず、放課後話しましょ」
彼女がそう言うと同時に、昼休みの終わりの鐘が鳴って、ようやく私達の会話は終わりを迎えた。
「さあ、秘密の場所へ行きましょう!」
最後の授業が終わると、私は帰る準備をする間も無く、マヌルに手を引かれて何処かへ向かうことになった。
「どこへ行くの?」
「秘密!」
彼女はこちらを振り向きもせずに足早に進んでいく。
道を覚えられなくなりそうな程何度も角を曲がりやっと着いたのは、校内のどこか一角だった。
「着いたわよ!」
「うわあ……!」
彼女が手を広げて見せてきた光景は、言葉では言い表しきれない程綺麗だった。
名前も分からないような花が所狭しと咲いており、木々が陽光に照らされ美しく生命を誇っている。
「ここは……?」
「私達の秘密の場所!良い所でしょう?」
「うん。でも、どうしてここに?」
「僕達に会わせるためだよ」
背後から声を掛けられ、思わず肩を跳ねさせる。
振り向くと、うちの学校の制服を身につけている、長身の男性と3人の女性が立っていた。
「紹介するね、こちらは私の友達……」
マヌルの声を遮って長身の男性が喋る。
「僕は、ユーピテルだ。君は転入学してきた蘭さん、だったよね?これから、宜しく頼むよ」
「よ、よろしくお願いします……」
ユーピテルに手を差し出され、恐る恐るその手を握ると、すぐさま強く握り返された。
がっしりとした手にウブな胸を高鳴らせていると、他の女性3人の自己紹介が始まった。
「私、は、イア。よ、よろしく……」
「イア……。よろしく!」
彼の手から逃れた手でイアの手を握り、自己紹介をした順に手を握っていく。
「私はナジュです。虹って書いて大樹の樹。あなたも西方の出身ですよね?仲良くしましょう」
「私は、アステリウ・ラノ。ラノって呼んでください」
どこか優しげな雰囲気のする虹樹と眠たげなラノと握手をし終わると、マヌルが威勢良く、一度したはずも、なぜかもう一度自己紹介をし出した。
「最後は私ね!私はケツァール・マヌル!マヌルって呼んでねっ。一応貴族だけど、下位も下位だから、気にしないで!それじゃあ、よろしく!」
マヌルが私の手を握りながら近寄ってくるので、思わず後ずさる。
「ちょっと、マヌ。蘭君が困っているじゃないか」
「ああ、ごめんなさい。つい……」
マヌルは手を離し、私の顔の近くから離れると、私以外の他と何やら話し始めた。
あまりに小声なので、こちらには何と言っているのか全く聞こえない。
数秒もすると、輪の中からユーピテルが出てきて私に向かって言った。
「ねえ、蘭君。僕達と共闘しないかい?」




