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私、人生迷ったら世界最強魔導士になりました。  作者: 工藤 零
第一章 『自分探しの旅』
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53『関わってしまったからには』


「ということで!心機一転、私達は共に歩んでいこうと思います!」


私は、2人の前で大きな声で宣言した。

地獄から、無の空間を通して期間を果たした私達は、宿屋にいたラリアン達を呼び出して、地下の街を出た。

現在は、地下の街上の地上、大穴の空いた場所の近くにいる。


「よかったよかった。2人とも無事で」


「ルイもそう思うの」


「心配させてごめんね」


2人にはひどく迷惑をかけた。

まず、ルイは私が居なくなったとき眠っていたし、ラリアンは、私が今までそこにいたのにいつの間にかいなくなっていまっていたというのだ。

まあ、全て女神のせいなのだが。

もう既に事情は全て話したので、双方の疑問は解消されている。


「それで?あいつの言った、代償って何だったんだ?」


「ルイも気になる」


「ナツメが生きている、ということは、そう大したものじゃないんだろう?」


「まあね」


正直実感はないのだが、私のチート能力は無くなってしまったという。

世界と引き換えにするものがそんなものでいいのかと思ったが、女神が言うには、

「充分なんです」

とのこと。

「夏目さんのチート能力は、約束によりそれを確立させています。その約束は規模が大きく、おそらく、その約束を破棄すると、私の縛りも消えることになります。なので、今からシュに頼み込んできます」

少し待っていてください、と言って消えた後、私達はこうしてこの世界に戻ってくることができた。


そう話すと、ラリアンは納得したようにうなずいた。


「なるほどな。少し納得したよ。でも、ちーと、というのは何なんだ?」


「あー、ごめん。そうだったね。チートってのは、私でいうこの、特殊能力みたいな感じで、まあ、簡単に言えばインチキな事の総称、みたいな感じ?私もよく分かんない」


「はあ。よく分からないが、約束、というのが気になるな。ナツメはそれについて聞いていないのか?」


「なんにも」


それについては、私も気になるところだ。

そんな事約束した覚えは無いし、確か私がチート能力を持った理由は、女神に気に入られていたから、だったはずだ。

何か、私が知らない、別の事実があるはずだ。

自分に関わるので少し興味があるが、何も言わないということは、言いたくないのだろうから、女神に深く勘繰りはしないことにする。


「そうか。実際、その、ちーと能力とやらは消えたのか?」


「分かんない。やってみるよ」


とは言ったものの、何をすればいいのか。

一先ず、魔法を使ってみることにする。


「……」


何も起きない。

イメージしたのは、初めて魔法で生み出した鉄の針だ。

だが、空間には何の変化も生まれない。


「アイアン・ニードル!」


きちんと唱えてもだめだ。

やはり、消えてしまったのだろうか。


「水はどうだ?」


ラリアンが、考え込みながらもそう言ったので、試してみる。


「アクア・ボール」


マナを集めて水に変換するようなイメージをすると、見事に水球が発生した。


「あれ?」


「やっぱり」


そう、ラリアンは納得したような顔をする。


「どゆこと?」


「ナツメは元から、水属性の魔法が使える力が備わっていたんだ。もし、ちーととやらが消えたのだとするのなら、水球だけが作れたのにも納得できる」


「でも、今、マナを使うイメージでやったよ?マナが使えるのもチートじゃないの?」


「それは……。私には分からない。あやつが応えてくれるならいいのだが」


今、女神は完全に応答しない状態だ。

きっと、あれでも女神だから、色々と忙しいのだろう。


「まあ、今度会った時にでも聞いてみるよ」


「そうだな。まあ。今日は寝よう。今後についてはまた、明日話し合おう」






というわけで、夜が明けたので、私達は先日と同じ場所に移動した。

ラリアンが椅子と机を創世し、向かい合って座る。


「まず、宝石の話をしよう。昨日、直人はいなかったし、ルイは寝てたから」


3人の同意を得、話を始める。


「昨日の宝石は実は、大きな宝石の1つだった、と私は考えてる。全部集めて完全な形にすると、新世界の創造ができる。だからあんなにも、あいつらは頑張って宝石を探してる」


ラリアンは頷き、直人もルイもしっかりと聞いている。

ルイは想像しにくいのか、うーんと唸っているが、直人は納得したようで、口を開いた。


「なるほどな。で、集めた宝石はどうしたんだ?」


「私が持ってる。あの依頼人には今から会いに行こうかなって」


「あ、その前に寄りたいとこあるんだけど、ちょっといい?」


「どうぞ」


そう答えると、何故かラリアンとルイは遠慮したかのように、街の復興の手伝いをしてくる、とどこかへ行ってしまった。


「今からどこ行くの?今はどこも復興作業で忙しいと思うんだけど」


「俺も心配だけど、多分大丈夫だよ。開店してから一度も閉めたことないって言ってたし、昨日も……」


「ん?」


「いや、何でもない」


1層の外れ、それも殆ど何も無いような場所に来た私達は、真っ直ぐに伸びた道をひた歩いている。

直人はお店に行く、と言っていたが、本当にやっているのか。

と、突如趣のある木造の小屋が現れた。


「来た来た。あそこに行きたかったんだ」


「へえ。随分と古い感じのするお家だけど、個人宅じゃないの?」


「ううん。違うんだよ、それが。まあ、付いて来なって」


直人はそう言って私の手を引っ張って行く。

あまりにも駆け足なので、足がもつれる。


「ちょっと、待ってよ」


直人は木の戸を叩き、失礼します、と声をあげた。


「どうぞ」


私も促されるまま小屋の中に入り、1人のご老人を目視する。

その老人は、何か作業をしているようだ。

見回しても、他に人がいる様子は無い。どうやら、この小屋の主はこの老人のようだ。


「こんにちは」


余程集中しているのか、挨拶しても返事は無い。

そこに無遠慮に直人の声がかかる。


「おっちゃん、出来た?」


「……」


黙りながらも、老人はどこかから木箱を取り出し、直人に差し出す。

直人はそれを受け取り、続けた。


「ありがと、おっちゃん。また来るよ」


「……」


私達はすぐにその小屋を出、私は帰宅しようとしたが、直人が止めた。


「待って」


「ん?」


直人は木箱を手に持ったまま俯いている。

何度も、口を開こうとしてはやめている。

やがてそれも終わり、直人はこちらを真っ直ぐに向いた。


「明日香……」


どうやら、私に何かを告げようとしているらしい。

それが何かも、私はある程度察しがいいので分かっているつもりだ。


「昨日俺は振られちゃったけど、それでも言ってないことがまだあるんだ」


「え?」


少し予想外だった。

諦めの悪い直人がまた告白してくる気かとばかり思っていたのに。


「誕生日おめでとう」


「ふぇ」


「明日香は、誕生日になる前に死んじゃったから覚えてないかもだけど、今日は、1月11日なんだって。向こうからこの世界に来てからだいぶ経っちゃったけど、ここと向こうに時間はちょっと違うみたい。だから俺は、明日香の誕生日を祝おうと思ったんだ。まあ、思いついたのは昨日なんだけどね」


「ありがとう……」


「泣くなよ。ほら、プレゼント。高かったんだぜ。急いで作ってもらったから余計」


涙がポロポロと溢れていく。

泣いたのはいつぶりか、こんなに嬉しくて泣けたのは初めてかもしれない。

それを止めようとは思わなかったし、止められなかった。


直人から木箱を受け取り、蓋を開ける。

すると、中に入っていたのは、赤い宝石を絡めたネックレスだった。


「かして」


直人は箱からネックレスを取り出し、私の首に掛けた。


「ん、似合ってる。明日香にピッタリだよ」


そう言って、直人は笑った。


「本当に、ありがとう」


私は直人にお礼をするつもりで、直人に抱きついた。

彼は何も言わずに、抱擁し返した。

とても暖かかった。





「お、終わったのか?」


「うん」


ラリアンは何故か大袋を浮かせているが、私達が帰ってくると何かに安心したようにそう言った。

私は思わず、首に掛けられたネックレスを触る。

その動作を見てか、ルイがにぱっと笑って大声で言った。


「お姉ちゃん、なんか嬉しそうなの!」


「ちょっと、ルイ!?」


ルイのその無邪気な一声に、耳がどんどん熱くなっていくので、顔を下に向け、赤くなったであろう顔も隠す。

やはり、子供なりに察しが良いそれは、私にとってはひどく迷惑ではあったが、仲間であるから出て来た言葉だということを思うと、少し嬉しくもあった。


「さあ、行こうか。こちらも新たな1歩を踏み出そうじゃないか」


「そ、そうだね!早く依頼人に会いに行こ!」


乗り掛かった船だ。ラリアンが話を変えてくれそうだったので、それに便乗する。


「ナツメも機嫌が良いようだしな」


ラリアンがこちらを向いて不敵な笑みを浮かべる。

やはりラリアンもラリアンだ。からかうのが好きだ、とは聞いていなかったような気がするのだが。


「もう!」





「ありがとうございます!これで安心できます」


私達は依頼人に会い、入手した宝石を渡した。

依頼人はハンカチでそれを包み、疲れた顔に笑みを浮かべる。


「いえいえ。それより、街の様子はどうです?私達も手伝いたいのですが」


彼の疲れている原因は一目瞭然。崩されてしまった街の復興による疲労だろう。

その彼らの負担を減らそうと私は話題を変えたのだが、


「大分進んできています。なので、手伝いは必要ありません」


と、さらっと流されてしまった。


「そんな訳にも行きませんよ!ぜひ手伝わさせてください」


「大丈夫です。あなた方の手を借りる訳にも行きませんから」


そう言う依頼人の言い分も分からなくもない。

私達は、この街に長く留まっているとはいえ所詮、この街には無関係の他人だ。

そんな人達に迷惑をかける訳にも行かない、と言う事なのだろう。


「私達は、ここまで関わってしまったんです。襲撃者を追い払ったのは私達ですし、この街の力の由縁も知ってしまいました。だったら、復興の手伝いぐらいさせて下さいよ」


そう、これ以上関わらない訳にも行かない。

私は、この街が好きだ。そんなに多くの人と関わった訳でもないし、この街のことを知っている訳でもない。

でも、


「私はこの街の人達ともっと関わりたいです。なのに、彼らが元気をなくしたままじゃあ、私はそれが出来ません。見てるだけなんて嫌です。手伝わせて下さい」


私は、彼の目を真剣に見つめる。

そんな私の暑さに当てられたのか彼は、目を逸らし、言った。


「分かりました。お願いします。内容は、各場所で指示に当っている人が教えてくれると思います。私達を、助けて下さい」


「はい。喜んで」


その後私達は、各担当場所に分かれ、この街の復興を手伝った。

私とルイと直人は力仕事、ラリアンは空いてしまった穴の修繕、そして依頼人は、宝石を使って穴を修繕するラリアン達の力の増幅を行なった。

私は途中倒れそうにながらも、街中を駆け回り、街人の力になることができた。

そして無事に、地下の街の大穴は修復された。


ようやく活気の戻った街の人達を見ながら、息をつく。


「ふう、終わったねえ」


「うん、終わったの!」


「「……」」


ラリアンは疲れて声が出せないのか、黙って活気の戻った街の人達を見守っている。

直人は、街の子供達と楽しそうに遊んでいる。どうやら、手伝ううちにすぐに仲良くなってしまったらしい。


「私、もう少しこの街にいたいな。忙しくて街の人と喋れた事、あんまり無かったし」


「そうだな。私もそう思うよ。それに、彼も同じように思っていそうだしな」


ラリアンは直人を指差す。

私は苦笑いをして、


「私達も、仲間に入れてもらお。楽しそうだよ」


「ああ」


ラリアンは立ち上がり、ルイは嬉しそうに手を挙げて直人のいる方に駆けて行った。

私も、街の人の輪に加わって何かを飲んでいる依頼人を見つけ、手を振った。


「私にもそれ下さーい!」





「うえぇ……」


「う、ラリー、なんか手が増えてない……?」


夜が明けて、私達は陽の下で口を押さえている。

私達、と言っても、ルイと直人はおらず、私とラリアン、その他街の人達だけだ。

今頃2人は宿屋でグースカ寝ているはずで、私はそれが非常に羨ましい。


「飲み過ぎた……」


そう呟くのはラリアンだ。

彼女は昨晩、腹から溢れるんじゃないかと疑うほどに酒を呑んでいて、吐きそうになるのは自業自得だと私は思っている。

そう思う半分、自分も酔っているので物理的にも言い返せないところがある。


「うぅ……」


一応、私は未成年のはずだ。しかし、酔っ払ったラリアン他街の人達に無理やり飲まされてしまった。

「ナツメも飲め!気分が良くなるぞ」

と言ったあの時のラリアンの表情は忘れられない。


「宿に戻ろ。そして寝よ……」


グラグラとする視界をどうにか見分け、宿屋に戻ろうとする。

しかし、耳を疑う一報が頭に直接叫び込まれた。


『大変です。夏目さん!また敵の襲撃が!』

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