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私、人生迷ったら世界最強魔導士になりました。  作者: 工藤 零
第一章 『自分探しの旅』
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49『女神の企み』

前話と比べると随分と長くなってしまいました。

「えーと、皆さん。集まりましたか?」


「「『はーい』」」


「じゃあ、宝石は私の所に……って、アイツが居ないんですけど」


見回すとやはり、この場にはルイと私とラリアンしかいない。

直人の姿が見えないのは何故なのか。


『藤谷さんなら、急用で遅れてくるそうですよ』


「急用って何」


女神の事だから、真偽は不確かだ。

この、来たばっかりの街に何の急用があるのか。


『さあ?急に、私にこれを託してどこかへ行ったものですから』


「へえ?」


『まあ、そう疑わないで下さいよ。だって、私が嘘をつく理由が無いじゃないですか』


「まあ、そうだけど」


確かに、女神が直人の所在を偽る理由はない。

ただ、どうにも怪しい。


『まあまあ。これ、渡しときますよ』


どこからか小さな箱が飛んでくる。

スローなので、そっと手を添えて受け止める。

箱を開けると、中には小さな宝石が入っていた。


「てんきゅ」


これで3つ。

あと1つはこれから皆で取りに行く予定だ。

一先ず、女神のことは置いといて優先順位の高い方から行こう。


「それで?この先はあんたついてくんの?」


『いえいえ。私は忙しいので。暇ができたらまた来ますよ』


――来なくていいんだけどねえ。

と、この言葉は口に出さずに呟く。

どうせ女神には聞こえているだろうが。


この思考にも、女神は突っ込んでくるものと思われたが、意外にももう居なくなってしまっていたようだ。

居ないなら居ないで都合がいい。


ルイとラリアンが不思議そうな顔を浮かべていたが無視して進む。


「さあ、最後の欠片集めに行くぞー!」







「あ、あー!誰か!誰かいませんか!……くそ、ここはどこなんだよ」


目が覚めると、そこは暗闇の中だった。

身体はあるようでない。

確かに、動かしているような感触はするのだが見えないのだ。


――気持ち悪い。

何なんだかよく分からないこの場所に、気分が悪くなって吐き気を催す。

ただ、吐く場所も器官もない。


何も無い。

何も感じない。

何も見えない。

何もきこえない。


残されたのは、遺されたのは、自分の虚しい感情だけだ。

寝転がり息を吐く。

目を瞑って、頭を整理する。


何があったのか、まだよく分かっていない。

けれど、女神が何かを企み、実行したのは確かだろう。

その何かが分からないのだが。


ふと、風を感じた。音も聞こえる。爽やかな風が吹いているような音。匂いも感じる。青臭い草の匂い。

目を開けると、青空が見えた。雲一つない青空。

見たことのあるような景色だ。あれは確か、自分が死んだ後に来た場所。

女神と初めて出会った場所と同じ景色だ。


「ご名答です。藤谷さん。ここは私の、私の為だけの空間、無の空間です。さあ、あなたは何故ここに呼ばれたのか分かりますか?」


悠々と現れて、歩いてきたのは久しぶりのご対面、女神だ。

相変わらずの笑みで、瞳の色はうかがえない。


「分かりませんよ。また死にでもしたんですかね?」


そんな冗談に、女神は表情を大して変えずに答える。


「そんなまさか。あなたは死んでないですし、それに、あなたのせいじゃありませんよ。ごめんなさいね、こちらの不手際で」


「じゃあ、何があったって言うんですか」


「いやあ……」


と、眉間に皺を寄せながら女神は語った。


「上層部に怒られちゃって。

えっと、実はですね、あなた、本当はこの世界に転移する予定はなかったんですよ。

だけど、あなたが懇願するものですから、私も慈悲をかけたんですけど、バレちゃって。秘密だったんです。

それで、このままだと私は処分されちゃうんでここにあなたをお呼びしたんですよね。

今から何をするって?簡単ですよ。

あなたには正式に死んでもらいます。

実はあなた、行方不明扱いなんですよね。

自殺する前に私が回収したものですから。

地獄、ですか?あんなの、あなたの夢ですよ。

ここの世界観には地獄も天国もないんです。

体を失った魂は私達の手によって洗浄され、また生まれ変わります。

そして、これから死ぬあなたにはその過程を行ってもらうことになりますね。

一先ず、前の世界に戻しますから、目を瞑ってください。

待ったは聞きません。将棋と同じですよ。

こちらの不手際はこちらで修正します。

あなたは黙って言う通りにしておけばいいんです。

さん、に、いち」


ぐん、と頭の中で加速感を感じながら女神の言葉を振り返る。

正直、意味がわからなかった。

ただ、もう明日香には会えないのかも、と思うと涙が出てきたのだった。







一瞬、何かの違和感を感じた。

その違和感は直ぐに消えてしまったのだが、私の頭の中からは離れようとしなかった。

それを気にすることなく私は言う。


「最後の欠片って言っても今までと同様、回収自体はそんな難しくないはず。根気強く頑張ろ」


「ああ」


今現在、私達はこの街最難関の迷路に挑戦している。

迷路はなんと地下1階の外れにあって今回の難を逃れていた。

ここも巻き込まれていたら、地下の街はいずれ消え去っていたのだろう。


拠点にしたい街なのでそれは困る。

なので、ここが残っていたのは不幸中の幸いとも言える。


「それにしても、難しすぎるな、この迷路は。いったいいつになったら辿り着くんだ」


「もう、ラリーがどうにかできないの?」


「さっきやったじゃないか。私が頑張ってどんなに巨大な階段を生成しても、この壁はそれを易々と超えてしまったし、ワープゲートを作ろうにも、宝石の存在する場所は常に座標が移動していてできない、と。それに、ナツメが地面を掘ろうとしても無理だったじゃないか」


それは、確かにそうだ。どんなにこの迷路の抜け穴を探しても、すぐに対処されてしまう。

だから、純粋にこの迷路のゴールを探すしかないのだ。

ただ、休みなくずっと歩いているので疲労感は半端ない。


ルイはすでに沈没中で、そのルイをラリアンが宙に浮かせているためラリアンの集中力もそがれる。

私は案の定、体力がなさ過ぎるので、歩くのは諦めてラリアンに浮かせてもらっている。

なので実質、真面目に迷路から脱出しようとしているのはラリアンだけだ。


「そろそろナツメも歩かないか?私はもう、集中力が切れそうだぞ」


ラリアンはフンフン鼻を鳴らしながら歩いている。

まだ元気そうなので、元気じゃない私はそれをスルーする。


「こんな時、空からここを眺められる人が居たらなあ」


『はあい、呼びましたかー?』


どこからか間抜けな声が聞こえた。

言わずもがな、女神だ。


「よっ、救世主」


一応、嫌いとはいえ、求めていたので嘘でも持ち上げる。

それに女神はまんざらでもなさそうだ。


『どうもどうも。それで、何かお困りですか?』


「いやあ、道に迷っちゃって。天から眺める女神様のお力で彷徨う私達を救ってもらえませんか?」


『ええ、いいでしょう。では、そこを右に曲がって……』


すぐに道案内を始めてしまったので、止めに入る。


「私はいいからラリーに言ったげて。歩いてるのはラリーだし」


『ええ、でも……』


「いいから。仲いいんでしょ?」


『そんなことは……』


ためらっている女神をよそに食い気味に話す。


「私が道に迷って死んでもいいの?」


『それは困りますけど……』


「でしょ?だったら早く」


『分かりました……』


何をためらう必要があるのか。

2人は旧知の仲と聞いたのに、女神の方はあまり嬉しそうでない。


暫くラリアンを眺めていると、反応があった。

ぴくり、と肩が動く。

と同時に、この迷路中に恐ろしい声が響いた。


「お前、何故私に話しかけてきた!?」


会話内容は聞こえないが、ラリアンが一方的に怒っているように聞こえる。

少し面白いので私はそのまま観察を続ける。

暫くするとラリアンの声が止まった。


どうやら和解したようだ。

ラリアンが歩みだす。角に着くと決まって、一度止まり、曲がる。

会話はない様だ。


同じ作業が何度も続いた。

殆ど景色は草の壁と、変化がなかったのだが、この時一瞬、ラリアンの動きが今までと別の理由で止まった。


「ここは……」


ラリアンが歓声を上げる。

どうやら無事にゴールへとたどり着いたようだ。

ただ、私はその景色を見ることができなかった。

何故なら、彼女があっけにとられたままで魔法を解いてくれないからだ。


「おーい、ラリー。魔法解いてー」


「……ああ、すまん」


そう言うと、ラリアンは雑に私達を下ろす。

私はどてっと地面に落っこち、軽く体を打った。

打った箇所がヒリヒリして動けない。

ルイは、と彼女の方を見ると驚くことに、地面の草や蔓たちが彼女を優しく包んで地面へ降ろした。


そこに目をとられながらも私は起き上がり、ルイの方へ駆け寄る。

ルイは眠ったままだ。その事に安心して、私は膝を下ろす。

羽のように軽いルイの体を抱き上げてラリアンのもとへ向かう。


「どうしたの、何があった……」


の。私はその言葉を言い終えることが出来なかった。

何故なら、その先の、ラリアンの見ていた光景が、あまりにも現実からかけ離れていたからだ。


周りを覆う蔦のせいで見えなかった景色が、そこにはあった。

光が当たらずとも赤く輝く宝石。

その宝石を支える蔦や草花。


何よりも1番目を引くのは、巨大な、ダイヤモンドに似た宝石。

自立している宝石を支えているのは無機質なガラスの台座。

その台座は、植物だらけのこの空間にはあまりそぐわない様に見えた。


無意識に私の足が動き出し、その空間に吸い込まれる。

中に入ると、今までの疲労が全回復したような感覚がした。

ヒーリング空間。そう名付けずには得られない空間だった。


「あれが、最後の欠片」


ルイを降ろし、宝石に近づく。

ここにある赤い宝石は、今までの宝石のどれよりも大きい。

それを手に取り、マントの裏ポケットに閉まってあった残りの欠片を取り出す。

宝石達は震えだし、互いに近づきあった。


一瞬、激しい光を放つと宝石達は1つになった。

奪われた宝石と同じサイズの宝石が出来る。


「これを、どうすればいいんだっけ?」


惚けているラリアンに話しかける。

ラリアンは数回瞬きし、答えた。


「あとは、持って帰るだけだ。彼の場所に」


「そ、そうだったね」


私はこの光り輝く宝石を、手放したくないと思ってしまった。

だが、彼を裏切るわけにもいかない。

そう思い直し、宝石から目を離してポケットにしまう。


「じゃあ、帰ろうか」


帰ったら、直人も宿屋に戻っているかもしれない。

何て、何だかんだ嫌いな奴の事を気にかけている私にラリアンが言った。


「どうやって帰るんだ?あいつは何か急用とかでどっかに行ってしまったぞ?」


「ええっ、そうなの?」


全く、無責任な奴だ。

帰り道が分からなければ帰れないではないか。


「ラリー、どうやってきたか覚えてないの?」


「ああ、もちろん。ここに来るまで相当な回数を曲がったからな」


「そうだよね」


確かに、あれだけ曲がると私でも記憶に自信がなくなる。


「それにしてもこの空間、不思議な感じがするよね」


「そうだな。一体何の為にこんなこった仕掛けをあいつは……」


「あれ、ラリアンなんか知ってるの?」


ラリアンは、苦笑しながらも答える。


「私の昔の仲間が作ったんだ。多分。大方、《自然の魔女》であるリンの仕業だろうがな」


「へえ、ラリアンの他にも魔女っているんだ」


「まあな。知られているのは私だけ、という悲しい事情もあるのだがな」


ラリアンは悲しそうに言う。

何故今は仲間として存在していないのかとか、気になる所は沢山ある。だが、そういう事を今、特段に知りたい訳では無いので、思い出したらいつでも聞けるように脳内メモ帳にメモしておく。


「その子がなんか言ってなかった?この空間について」


「いいや、何も。この世界に来てからあまりあいつらとは顔を合わせていないんだ」


「そっか、残念」


脱出方法は自分で探し出すしかあるまい。

早速、この空間をぐるりと一周してみることにした。

そんなに広くは無い。

大体、12畳程の広さだ。


壁は全て植物で作られていて、光は一切入ってこない。

辛うじて、私達が暗闇にのまれずにこの空間に立つことができているのは、自ら光り輝くダイヤモンドの光が、この空間全体をも明るく照らしているからだ。


そう言えば、このダイヤモンドは何物なのだろうか。

確か、あの依頼人はこのダイヤモンドの存在を言っていなかったし、隠しているような感じもしなかった。


私はダイヤモンドに近づき、その眩い光に目を細める。

やはり、この宝石は自ら光り輝いている。

この世界の宝石は皆、光るのだろうか。


有り得なくは無い話だ。

私は来たばっかりで、この世界については何も知らないに等しい。

せめて学校があって、そこに通うことが出来たらいいのに、と思う。


それにしても、この宝石は引力を持っている。

宝石を見つめている私の目が、一向に他を見ようとしないのだ。

頭の中まで宝石に占拠されているような感じがする。


思わず触れたくなり、ゆっくりと腕を持ち上げ、手を伸ばす。

触れた、と思った瞬間、手は宝石をすり抜けた。

その手が宝石に触れることは無かった。


何が起こったのかわからなくなり、パニックになる。

宝石は確かに見えている。だが、触れることは出来なかった。

幻影……?と、私の中で1つの推測が浮かんだ。


魔法のある世界だ、この触れられない宝石が立体映像でない、という確証はない。

私のいた世界の場合、こういう類のものは全て光によって生み出されている。

光を途中で絶てばこの宝石は見えなくなるはず。


原因と思わじき台座を触る。

満遍なく触ったが、問題の宝石が消えるようなことは無かった。

やはりこれは魔法によるものなのだろうか。

しかし、何の為にここにそんな物が必要なのか。

赤い宝石を守るだけならこの宝石は必要ないはずだ。


「ナツメ、私はその宝石に心当たりがあるよ」


「え?」


突然のラリアンの申し出に驚く。

確かに、先程の言葉と繋げれば、思い至る事はある。


「この宝石はきっと、《自然の魔女》が施したものだ。私は少し聞いただけなのだが、こんな話を聞いた覚えがある。

彼女は、この世界から離れる少し前に、1つの巨大な宝石を創った。

それは、7色に光り輝く、とても美しい宝石だったという。

彼女はその宝石を砕き、困っていた人々にそれを渡した。

それらの砕かれた宝石には様々な色があり、特性があった。

それは、"願いを叶える”。

その宝石を渡された人は、その特性を使い成功したといわれている。

彼女から直接聞いた訳では無いから事実は確かではないのだが、そんな噂がある。ただ、この噂自体も今は風化して、知らない人が多い。魔女自体、私の事しか知らない人も多いしな」


「そっか、そんな話が……」


やはり知らないことも多い。

だが、分からない点もある。


「じゃあ何で、その幻影がここにあるの?」


「さ、さあ?ただ、この宝石はその宝石が関係しているのではないかとは思っている」


「うん、私も同じ意見。少し、本の読みすぎの妄想かもしれないけど、仮説を聞いてくれる?」


「ああ、もちろん」


私は、1つの仮説を立てた。


「各地に散らばったという宝石を集めて、ここの台座に置くの。そうしたら元の宝石に戻って何かが起こるんじゃやいかと思う」


「なるほど。一理あるな。その何かというのはなんなんだ?」


「それはまだ分からない」


「だろうな。でも、宝石の特性からすると、誰もが羨むものの可能性はある。それは……」


「「大願成就」」


声が揃ったという事は、私達は同じ考えのようだ。

この世界は、野望に満ちている。

少なくとも、最近よく現れるやばい奴らはそういう類の奴らだ。


願いを叶える為なら道を選ばない。

そんな風潮が、彼らにはあって、願いはこの世界において大切なものだ。

そして、その願いというのが、


「「新世界の創造ね」

か」


「どう?世界を創った人間から見てその野望は?」


「さあな。私も、世界の創造を目指してひた走ったが、それが良かったのかどうかは、未だに分からん。ただ、その願いは分からなくもないよ。自分の思い通りにいく世界というのが、どんなに人々の心を煌めかせるのか、私はよく知っている。否定はしないさ」


「……」


私には理解出来ない話だ。

理解しようにも、価値観や考え方が余りにも違いが多過ぎる。

そんなに急にファンタジックな世界に入られても、というような感じだ。

簡単に慣れられるようなものじゃない。


「きっと彼らは、野望を叶える手段だと思って、あの赤い宝石を奪っていったのだろうな。きっと、この宝石の存在を知ったらまた、この街が危険にさらされるだろう」


「そうだね」


凶暴な彼らの事だから、そうなる未来は目に見えている。

私の意見としては、別に世界の創造ぐらいは別にいい事だと思う。

ただ、それで他の人を傷つけるのとはまた訳が違う。


それを抑止する為に私はこの世界に引っ張られてきたのではないかと思っている。

ただの勘違いかもしれないし、女神にそんな意図があるとは思えないから、定かではないが。


「それより、帰るのどうすんのよ。結局何も分かんないままじゃん」


そう文句を言った直後、目を疑う事象が起きた。


「わわっ」


体が持ち上げられる。

持ち上げているのは、無数の蔦だ。

ラリアンも同様なようで、驚きながらも身を任せている。


何が起こるのかは全く分からないが、危険そうではないので、私も身を任せる。

見ると、ルイのことも持ち上げてくれているようだ。

蔦はうねうねと動き出し、私達を運び出した。

その後、迷路の外に脱出するまではあっという間だった。






「あれ、直人いないじゃん」


あの後、宿屋に戻ったのだが、直人の部屋には誰もいなかった。

おかしい。

まさかあの直人とはいえ、知らない街をずっとウロウロするなんてことはしないはずだ。


「いや、分からないぞ。この街は今混乱の最中だからな。救助をしていないとも限らない」


「そうだけど……」


もう日は既に落ちている。

暗くなると、ボランティア活動も休止するはずだ。

だから、ラリアンの言う事はあまりないと思われる。


他は……。


「女神。あんたなんか知ってるでしょ」


届くかどうかはわからなかったが、声をかけてみる。


「わあ、はいはい」


どうやら聞こえたらしい。


「ラリーにも聞こえるように出来ないの?」


「ひっ」


私に凄まれて女神は素っ頓狂な声を上げる。


「出来ないとは言わせない」


「ご、ごめんなさい。出来ます……」


「じゃあ早くやって」


「は、はいぃ」


変な調子だ。何をそんなに怯えることがあるのか。

女神の声が聞こえなくなり、しばらくしてまた聞こえるようになった。


「それで、要件は何ですか」


落ち着いた声だ。

元のあいつに戻ったのか。


「直人のこと。あんたなんか知ってるでしょ」


「どうしてですか」


「あいつに一番最後に会ってるのがあんただからに決まってるでしょ」


「心外ですね。私が疑われるだなんて。宝石はちゃんと渡してるじゃないですか」


「疑ってる、なんて一言も言ってないじゃん。そういう態度が怪しいんですけど」


沈黙が続く。

ラリアンはとりあえず、静観しておくようだ。


「分かってるんだよ。あんたが企んでる事なんて。見え見えなんだよ」


「心外。ほんとに心外ですよ。……仕方ないですね。話すとしますか」

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