↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私、人生迷ったら世界最強魔導士になりました。  作者: 工藤 零
第一章 『自分探しの旅』
PR
46/102

46『ラリアンさいど』

「馬鹿だなあ。そんなんじゃ僕はやられないよ? 君はさあ、あのおチビちゃんから聞かなかったの?」


ラリアンが突進していく中でも、ワンは余裕を見せる。

受けない自信があるのかそれとも他に何か策があるのか。

取り敢えず、やってみなければ分からない。


懐に潜り刃を突き刺す。

しかし、その刃は腹を突き抜ける事は無く、虚しく空を切るのみだった。

原因は、ワンが突如後ろへ飛びずさった事による。


「お前、余裕だったくせに逃げるんだな」


「……」


ラリアンの挑発に対してワンは何も返さない。笑みを保ったままだ。

何故、彼は当たっても構わないかのような素振りをしていたのに、攻撃を避けたのか。

ラリアンは、予想外の事があったのだと推測する。

なら、もう少し挑発すればぼろを出すかもしれない。

全く喋らない可能性もあるにはあるが。


「お前、攻撃仕掛けないんだな」


「……」


「もしかして、これが怖くて私に近寄れないのか?」


ラリアンは手中のナイフを振り回す。


「……」


ワンの笑みがスッと消える。

返事は返ってこないが、これは当たりだろう。

そう思っていると、意外にも向こうから返事が来た。


「どうやら君は僕と相性が悪い様だ。出来れば逃げたいのだけれど、そういう訳にはいかない。向こうでは彼女が頑張っているからね。何とか勝たしてもらうよ」


「やっと喋ったな。じゃあ、勝負とさせてもらおうか。――≪創世の魔女≫ラリアン・ユークラウス参る」


「――ははっ。君、あの伝説の魔女の1人なんだ。……まあいいや。僕の名前はワン。かの魔女様と対戦できることをうれしく思います。それじゃあ」


ラリアンは、刃渡りが物測り程しかなかった刃を、カタナと呼ばれるラリアンの足の長さ程ある物に変化させる。

カタナは杖の次にラリアンは使っていたことがある。

最近は全然使っていなかったから分からないが、それなりの腕はあるつもりだ。


「せいっ」


カタナをワンの肩口から斜めに振り下ろす。

しかし、彼の動きは素早く、当たらない。

刃の向きを変えそのまま上へ振り上げる。

それも当たらなかったが、ラリアンは諦めずに同じような動きを繋げる。


ワンは避けるだけだ。

攻撃は仕掛けてこない。

焦っているのかと思ったが、そうではないようだ。


「君さあ、他の魔女の行方、知らない?実は僕達、世界創世の魔女のこと探してるんだけどさ、なかなか見つからないんだよ。見つけたのは、君が初めてさ」


ラリアンは引き続き攻撃しているが、ワンは避けながら話しかけてくる。


「もう、危ないなあ。僕が話しかけているっていうのにいつまでも攻撃を続けて、さすがの僕も疲れてしまうよ」


そう言いながらもワンは疲れた表情を全く見せない。

まるで幽霊を相手にしているみたいだ。


「質問に答えてよ。そのままでいいからさ」


「お前に答えることは無い」


「酷いねえ。まあいいさ。答えさせてみせるから」


それ以降、ラリアンのラッシュは途切れた。

ワンが盾でラリアンのカタナを止めたからだ。

いや、少し違うようだ。よく見ると、カタナは盾に吸い込まれている。


盾は闇魔法で作成されているようで、この闇は吸い込む力を持っているらしい。

少し厄介だとラリアンは思ったが、そんなことは無いようだ。

盾はすぐに消えてしまい、ラリアンのカタナは盾から開放される。


刀身は無事。

再び生成する必要はなさそうだ。


「へえ……。僕の闇でも君の闇は消えないんだ。じゃあ、もうちょっと本気出さないといけないのかな?」


「ふっ」


カタナはいきなり解放されたため、盾に向かっていた力がそのまま下に向かっていく。

ライアンは前方に倒れこみそうになったが、何とか踏ん張り刀を返す。

とうとうカタナは命中しワンの洋服を切り裂く。


「くそっ」


ワンはすぐに後ろへ飛び退く。

その胸から腹にかけて、綺麗な直線のカタナ傷が付いている。

どうやらカタナは、上手くワンを仕留められたようだ。


「ひどいなあ、僕の身体に傷をつけるだなんて。もう、僕の一張羅が破れちゃったじゃないか。全く、君は本当にひどい事をする」


ラリアンはカタナを一振りし、少々吸い込んだと思われるワンの血液を振り落とす。

ラリアンは次こそは討つべしとカタナを構えなおした。


「いやあ、君にはかなわないよ。まさか、こんなにも僕と相性の悪い人がいるなんて。しかもそれがかの有名な魔女様とはね。感服したよ。まあ、目的は達成されたようなものだし、僕はそろそろ退散しようかな……、おや?君のその武器、少し小さくなったかい?どうやら僕のコレが少しは効いているみたいだね」


そう言って、ワンは彼の一張羅だという黒いロングコートの前裾を掴む。


「その服になにか仕掛けでもあるのか」


「さあ、それは言えないね」


ワンの言う通り、カタナは少し短くなっている。

見た感じ、全体的に小さくなっているようだ。

どういう事だろうか。


変換されたオドがマナに変わるにしてはまだ早いし、折れた訳でもなさそうだ。

ワンは言えないというが、あの服に何か仕掛けがあるのだろう。


「いやあ、君のオドは本当にすごいよ。何度も言うようだけどね、本当に驚いたんだよ。僕の一張羅がこんな風に傷つけられることはなかったものだから」


「よほどの綺麗好きなんだな」


「まあね。と言うより、この服が汚れたくないって言っていたようなものなんだけどね」


「どういうことかな?」


「君は知らなくてもいい事さ。さ、僕はもう帰るとするよ。さっき帰るって言ったのについ、話を伸ばしてしまった」


そう言いながらワンは地面にワープゲートを展開し、その足はゆっくりとゲートに吸い込まれていく。


「おいっ。お前らは何のためにこの街を破壊したんだっ」


「そのうちわかるさ。君たちならきっとね」


ワンの体は肩上まで吸い込まれ、頭だけが見えるようになる。

ラリアンは彼を追おうと走るが、いかんせん足が遅く間に合いそうにない。


「どうしてっ、どうして、お前らは!」


「全く、君は質問が多いね。僕はもう答えられないよ。帰って、これを直さないとね」


「あっ」


ワンの姿が完全に見えなくなってしまう。

しかし、それでもなお彼の声は聞こえる。


「心配しないでも大丈夫さ。またすぐにでも会えるんだから。君たちが会いに来なくても僕たちが会いに来る。そういう運命なんだ。運命には抗えない。君たちも、僕たちもね」


そう言って、ワンはワープゲートの中に、どっぷりと消えていなくなってしまった。

ラリアンは彼が消えた地面の上に立ち尽くした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。