34『家』
結局、日が暮れるまで捕まえることができたのは10匹ほどだった。
大体、1時間に1匹は捕まえられたことになる。
2万×10で、20万。
これだけあればルイの靴を買うことはおろかこの前買うことのできなかったアクセサリーでさえ買えてしまうだろう。
どんなものを買おうか妄想に更けながらも、私ははたと気付く。
また新しく物を買うとお金がすぐに無くなる。
お金は色々な所で必要なのだ。
親がいろいろしてくれたのとは訳が違う。
これからは自分達だけで生活しなくてはならないのだ。
という訳で、私は買いたい欲求は抑えて貯金すると決めた。
このままだとまたいろいろ買いたくなるだろう。
経理はラリアンに任せよう。
私達の中ではラリアンが一番年長だ。
私は、経済関係の扱いは全てラリアンに丸投げすることにした。
「ねえねえお姉ちゃん、そろそろ帰ろ?」
「あ、そうだね」
気付けば、もう暗くなってきている。
戻る頃にはもう真っ暗になるだろう。
もう今でも暗いので安全に帰れるか不安だ。
「うーん……」
「よしっ。いこー!なの」
次の日、朝ご飯は実に和っぽい物だった。
魚の塩焼きに、白ごはん、味噌汁というメニュー。
久しぶりの和食に私は頬を膨らませながらも、ラリアンに問いかけた。
「このご飯、どーしたの?」
この世界に和なものは殆どなかったはずだ。
勿論、白米など無縁だったし、それがないので箸もない。
大食らい気味の私にとっては白米や味噌をどこでゲットしてきたのが知りたい。
それを知ることができれば、懐かし料理の幅も広がる。
出来ればカレーライスなんかも作りたいと野望を企てているところだ。
そこで、ラリアンの返答。
「珍品屋に売ってたのを買ってきたんだ。これらの材料を選んだのはフジヤ君だがな」
「へー。直人が。因みに、これを作ったのは?」
「俺だよ?」
「ふーーーーん」
「やけに間が長いデスネ」
「いや、料理できるんだと思って」
私の怪しい口調に直人が反応する。
正直、この中で真っ当に料理ができるのは自分だけだと自負していたので計算外だ。
素晴らしくおいしいので、そこらへんもプラスされている。
「俺は一応、家庭科もきちんと授業受けてたしね。簡単なものぐらい作れますー」
「ふーん。お米は?炊飯器もないのに」
「そこら辺は、珍品屋の店主に聞きましたー。それ用の魔道具があったので買いましたー」
「何円」
と、うっかり昔の金の単位が出てしまって焦るが、直人は気にせず答える。
「ゼロ円!」
「ええ!?」
そこではっきりと明確に驚く。
理由を聞くべく、身を乗り出す。
ご飯は口の中に入ったままなので米粒が口の中から飛び出した。
しかし、驚きはそれ以上なので無視する。
「何で!?」
「ふふん。聞いて驚け。俺自らが交渉したのだ。ゼロ円にするためにな」
その言葉にラリアンが反応する。
「勘違いするなよ、ナツメ。初めにその魔道具を押し付けられたのだ。売れないし、要らないからといってな。そこで何に使うのか聞いたらこれだった、という訳さ」
「おいー」
直人がしっかり突っ込みを入れるのを聞き届けてからラリアンの後に続く。
「じゃあ、米さえあればいつでも美味しい白米が食べられるんだよね?」
「うん、そうだよ」
直人が軽く答える。
珍品屋に行くことになった経緯も聞きたいところだが、白米が自由に食べれるようになったことが非常に重要だ。
元日本人としては白米がいつでも食べれるようになったことはとても嬉しい。
いずれは箸を使って食べれるようにしたいところだ。
――何かを加工すれば作れるよね。ラリアンなら……。
と、そこまで考えてあることを思い出す。
「そうだラリアン!」
「なんだ?」
「一人ひとりの担当決めない!?」
「ん?」
皆がそろって頭の上にはてなが浮かんだ。
ただ1人、提案の張本人の私を除いては。
その後、私の提案により、私は旅の予定、ラリアンは経理、ナオトは料理、ルイは癒し担当となった。
因みに、ルイは体力的な回復とかそういうものではなく、精神的な癒しだ。
ルイはあまりよく分かっていないようだったが、全会一致で可決した。
ラリアンは意外と金銭面は弱い方らしく、必死で無理だ、と言い張っていたが、他にできる人もいないので無理やり押し付けた。
ノートに書き留めたりもしたいので――自分はしないのだが――今からルイの靴と一緒に買うことになった。
今は宿を出ようとしていて、直人お手製の昼食を美味しくいただいた後だ。
「そう言えば、そろそろ宿じゃなくてちゃんとしたお家が欲しいよねえ」
「え!?」
と言うと、ラリアンに物凄く驚かれた。
何一つ不思議な事は無いじゃないか、と私は思う。
この時、私は前の生活が当たり前すぎて気付いていなかったが、この世界で家を持つ、というのは大変難しい事だった。
特に冒険者なんかは、特定の泊まる場所がないので必要ないのだ。
誰しもが持たないという訳ではないが、持つものは少ない。
「ナツメ、それは冒険者を辞めるのと同等の意味を持つぞ」
「え?そうなの?」
「うむ。冒険者は旅をするからな。特定の家は必要ないんだ。必要とあれば私が家を作れるしな」
「あ、そっか。なんか寂しいね」
自分の家を持つことが私の夢だ。
何故か、と言われれば覚えていないような夢だが、その思いは心の底に深く根付いている。
出来れば、欲しかった。
その夢は諦めるしかないだろう……と、諦めかけた頃、ラリアンが言った。
「ナツメがどうしてもというなら、出来ない事は無いぞ。但し、私からの条件付きだがな」




