33『作戦会議』
部屋に着くと、ラリアンとルイが快く迎えてくれた。
結局あの後、担ぎ上げられたまま宿屋の中に入らされ、管理人のおじさんにガン見されてしまった。
恥ずかしいったらありゃしない。
後でぶん殴ってやるとか思いながら、私は備え付けの椅子に座った。
「それで?作戦会議って何するの?」
元凶の直人に問いかけるが、直人は口を尖らせ、肩を竦めて答えた。
もしや……。
「何も考えてない」
「やっぱりー」
「ありま、ばれてた」
直人の事だから絶対そうだと思っていたのだ。
直人が何も考えてないのはいつもの事だ。
もう気にしていない。
「……フジヤ君は、私達についてこれる自信があるか?」
「え……」
ラリアンはあの事を言っているのだろう。
私自身も最近忘れかけていたが、私達にも一応目標があるのだ。
この世界を変えてやる、という。
「そうだ、言い忘れてた。直人にはまだ言ってなかったね」
「ん?」
出来るだけ手短に、内容を伝える。
「私達は、この世界を変えるために旅をしてるの。まあ、私達が世界を征服してやろうって話ね」
「そうだったか……?」
ラリアンが私の言葉に違和感を覚えたようだ。
仕方ない。私なりの解釈だし、ラリアンの考えていることとは少し違うことなんて、別に大したことではない。
まあ、相手は直人だし、大体のことを理解出来れば問題ないだろう。
「そうなんだ。俺でよければ協力するよ。明日香が望む未来だもん。嫌とは言わないさ」
という直人のきざなセリフをスルーし、言葉を続ける。
「でも、私は気軽に楽しく異世界を満喫したいと思ってる。直人もそれでいいよね?」
「ああ。もちろん」
そうして、私達の旅は再び始まった。
有能かどうかは微妙な騎士を1人携えて。
「そう言えば明日香、明日香達は、その服どこで買ったの?」
と、言うことで次の日は直人の服を買いに行くことになった。
どうやら直人は、ろくな初期装備も持っていないそう。
あの時ボスを倒せたのはパンチ一発だったの事。
てっきり、剣ぐらいは持っていると思っていたが、そうではなかった様だ。
これでは仲間にしてもぜんぜん使えないので、服に加え、武器も買うことになった。
「どれがいいかなー」
と、言ったのはルイだ。
ルイは関係ないはずなのだが、ついてきたいと言ったので仕方なく連れてきた。
あるのは男ものばかりなのでルイの好きそうなものはないが、何かを興味津々に見ている。
「何見てるの?」
「んー?魔道具なの。沢山あって面白いの」
よく見ると、キラキラした色んなものがたくさん置いてあった。
どれも初めて見るものばかりだ。
ボトルに入っているものだったり、色んな色をした石だったり、いかにも魔法の世界の道具だった。
「何に使うの?」
「えっとね、例えばこの緑のは体力が回復するやつなの。で、この石は火魔法が使えない人でも火魔法が使えるようになるの」
「へー」
と、ルイが指したのはガラス瓶に入った緑色の液体と赤い石。
他にも、青の液体は魔力の自動回復を早くしたり、緑の石は風魔法を使えるようにしたりするそう。
「面白いね」
「うん。でもね、すーっごく高いから使う人はあんまいないの」
「あー、本当だ」
液体類は5千円、石類はなんと1万円もする。
綺麗だから1つ買ってこうと思ったけどさすがに無理だ。
「ルイは、何か買うの?」
「これじゃ、ないの。下に置いてある靴を買おうかなって思ってるの」
「ん?」
ルイが買おうとしているのは、底の平らなブーツ。
踵には翼の刺繍が施されている。
ルイに合う、白と青が基調の可愛らしい靴だ。
「いいんじゃない?」
買えばいいのに、ルイは何か迷っているようだ。
靴の前で難しそうな顔をしている。
「でも、お金が足りないの……」
「え?うえっ高っ」
その値段、なんと5万円。
こんなことがあっていいのだろうか。
正確に言うと、この世界のお金の単位は日本とは違うから、正確に言えば5万リアンだ。
お金の価値も違うので、どれほど高いのかは分からないが、石よりよりも値段が張るのだから、高いのは確かだろう。
ちなみに、私が持っているお金は3万リアンだから、全然足りない。
恐らく、ルイは私より持っていないだろう。
皆で合わせれば買えるだろうが、それでは一気に一文無しだ。
そんな訳で、ルイの魔道具を買うために今度は2人でクエストに行くことになった。
ラリアンと直人は買い出しが終わっていないためお留守番だ。
「あそこにいたの!」
「よーしっ。せいやっ」
私達が受けたのは捕獲系クエストだ。
捕まえるのは魚。
地上に流れている川にまれに出現する幻の魚を捕まえてこいとのこと。
これを選んだ理由はただ1つ。
火力が足りないからだ。
重要な戦力となるラリアンは置いてきたし、頼れる騎士──?──直人もいない。
私はまだまともに戦えないし、ルイに至っては攻撃系がまだできない。
そんな訳で、この状況に適切だと思われるクエストが、採集や捕獲系。
採集系が楽なのだが、人気でボードに無かった為、捕獲クエストになった。
この幻の魚、≪虹魚≫は相当レアなモンスターで、とても美味しいという。
その上攻撃もしてこないため、初心者のクエストには持って来いなのだが、この魚がなかなか出現しないため報酬が高くても人気が低いらしい。
そんな訳で、時間が有り余っているうえにお金が欲しい私達にとっては、ピッタリ条件に合ったクエストなのである。
そして、1時間やってやっと今1匹目を見つけたところだ。
「やったー!」
「やったなの!これで2万なの」
「捕りやすくてよかったぁ」
魚を捕獲籠に入れ、一息つく。
どうやら、この魚は見つけにくくて捕まえにくい、というセオリーには従っていないようだ。
あっという間に捕まった魚は、籠の中で元気にピチピチと跳ねている。
≪虹魚≫はその名前なだけあって、鱗が七色に光り輝いていた。
その美しさは、思わず宝石かと思ってしまうほどだが、食べれるのだとも思うと、ヨダレが垂れてきてしまった。
見つけやすい上に捕まえやすくて美味しくて売れるとか、好条件すぎる魚だ。
出現しにくい事を除いては。
今こそこうして喜んではいるが、今までが大変だった。
始めはウキウキした気分で始める。
30分も経つと不安になってくる。
それを過ぎると暇、という思いが強くなるので捕まえなくてもいい魚も捕まえるようになる。
そして今だ。
虹魚が入っていない方の籠は、捉えられた魚達がぎゅうぎゅうに押しあっている。
──暫くは魚料理ばかりかな。
と、私はため息をついた。
「お姉ちゃーん?」
「?」
「せっかく捕まえたのにため息ついちゃダメなの。元気出していこーなの」
「ふふっ。そうだね」
ルイの純粋さにはいつも背中を押される。
思考をマイナスからプラスに変え意気込む。
「≪虹魚≫、沢山捕まえてやるぞー!」
「おー!なの」
私達は一日中、川の中で駆けずり回っていた。




