↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私、人生迷ったら世界最強魔導士になりました。  作者: 工藤 零
第一章 『自分探しの旅』
PR
29/102

29『罪悪感』

「ナツメ!」

「お姉ちゃん!?」

「明日香っ」


その場から脱出した途端、皆の驚く声が聞こえた。

――2人を、裏切ってしまった。そんな罪悪感が、私の心を蝕む。


俯いていた頭を軽く上げたが、目に見えたものは、先程とは全く違うものだった。

見えたとも言えない。実際には何も見えないのだ。


誰もいなくて静かな場所に、とは願ったがまさかこんな場所になってしまうとは。

お陰でしばらくはラリアン達も私を追っては来られないだろう。

暫くの安寧を得て安心し、一気に力が抜けてしまった。


「はぁ……」


よろよろと膝をつき、足を抱える。

――駄目だな……。

どうして逃げてしまったのか、自分にもはっきりとは分からない。


でも、本能のままに動いたことは確かだ。

自分がどこか、逃げたいという気持ちを持っていて、それに逆らうことができなかった。

それだけだ。


ただ、罪悪感が私という存在を奪っていく。

心に巣くって離してくれない。

抱えた膝と胸との間に顔を入れ込み、私は静かに泣いた。





「ナツメ!」


ナツメが、どこかへ行ってしまった。

それを予測し、止めることができなかった自分が不甲斐ない。

早く探し出さなければ。

すぐに追跡魔法を唱えようとしたが、ナオトに止められてしまった。


「待って」


「何故だ。お前はナツメが心配じゃないのか」


「心配だよ。すごく。でも、明日香が逃げてしまったのには何か訳があるんだと思う。本人も分かっていないだろうけど」


「じゃあ、何故それをお前が知りえるというのか」


「俺は明日香より明日香を理解しているつもりだ。それ以上に、……いや、何でもない。とにかく、明日香を魔法で追うことはしないで欲しい」


「そうか。お前が言うなら……」


この男は、ナツメの古くからの友人だというから、ナツメも信用しているのだと思う。

だから、ラリアンはそんな男の言葉を疑いもしなかった。


「それより、お前はナツメの行方に心当たりがあるのか?」


「いや、無いけど……」


「それなら、居場所だけでも突き止めるべきじゃないのか」


「そうだと思うけど……何かが、違う気がする。明日香はそんなものを求めていないと思うんだ」


「じゃあ、どうすればいいというのだ」


確かに、ナツメはラリアン達に救い出してもらうことを求めてはいないだろう。

でも、そのままにはしておけない。

ラリアン達に何ができるのか、今は全く分からない状況だ。


「俺が、自力で探してくるよ」


「できるのか」


「もちろん。元々は俺が招いた結果なんだ。失敗は自分で成功に招くさ」


「頼むぞ」


「頼まれた」


そうしてラリアンとルイはナツメの心の行方を陰から見守ることとなった。






「さて、どうしようっかな……」


あんなにはっきりと出来ると宣言した直人であったが、正直どうすればいいのか分からなかった。

ナツメはきっと、人が簡単に目撃できるような場所には行かないだろう。

静かで、何の影響も受けない場所に行くことが、前世のナツメの習性だった。

それを直人もよく理解しているつもりだ。

そこを手あたり次第探せばいいと思っているのだが、そう簡単にはいかないだろう。


それに、直人はこの街の事も、この世界の事もよく知らない。

それでどうやって探せるというのか。

直人は自分がどうして探し切れると断言できたのか自分でもよく分からなかった。


「とにかく、やってみないと進まないよな……」


取り敢えず、手あたり次第ナツメの行方を追うことにした。








「ひっく……ひっく……」


私は虚無の空間でただ一人泣いていた。

何故かは分からないが、涙があふれて仕方なかった。

――何も、後ろめたい事は無いのに。


こんなはずじゃなかった。

さりげなく、あんな奴なんかと縁を切ってまた平穏な暮らしに戻りたかった。

あいつに振り回されてばっかりだ。


こんな弱い自分、大っ嫌いなのに、振り切ることは出来ない。

離れられない。

――自分の弱さからは。






「ここでも無いしなあ……」


あれから3日間、明日香の手掛かりは毛ほども見つからなかった。

聞き込みをしても勿論見た人なんて全くいないし、隠れられる場所も多すぎて捜査は難航していた。


「何かを、間違えてる気がする」


捜査をしている中、何か違う感じを感じていた。

その原因、理由は分からないのだが、自分が大幅に間違えているような気がしてならないのだ。

それは、捜査が難航していることに無関係ではないだろう。


でも、そのことを証明するには決定的な根拠がない。

そんな感じがするだけ。

間違えていない方向へ進むにもその方法も分からないのであれば直感も意味がない。


直人は悩みながらいた場所を去った。







その後、直人は宿に戻り部屋の隅でうずくまって考え事をしていた。

その考え事とは勿論、先程の何か違う感じについてだ。


明日香は、この世界にいて、この世界にいない。

そんな矛盾する考えが、直人の頭を廻っていた。

明日香は近くにいていない、そんな感じ。


原因はいまだ分からない。

でも、もしかしたら明日香はこの街をいくら探しても見つからないのかもしれない。

その考えにはたどり着いていた。


じゃあどうすればいい。

1人では解決できなさそうだから、もう1人で考えるのはやめよう。

その時直人は決心した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。