27『使えない』
「あーすかっ」
肩を掴まれる。
後ろを振り向くと、そこにいたのは直人だった。
「何?」
「んー?何でも無ーい」
彼の眩しい笑顔に明日香は惑わされそうになれながらも、目をそらす。
もうこれ以上、光にはあたりたくないのだ。
私は一生陰でありたい。
だから、私は直人のような人の隣にいてはいけない。
「右、敵!」
「うん!」
今現在、私達はダンジョンクエストに挑んでいる。
昨日やったから今日は別のクエストでもいいと私は言ったのだが、ラリアン達が許さなかった。
どうやら、前回私があんまり活躍できなかったのが気に入らなかったらしい。
幸い、今回のダンジョンは私にもちゃんと見えるのばかりだった。
コウモリやら、ゴブリンやらが出てくる。
初めてのスライム以外のモンスターなので最初は驚いたが、それを楽しんでもいる。
「フレイム!」
ルイに襲い掛かろうとしていたゴブリンに火を放ち、倒す。
「大丈夫?」
「うん。大丈夫なの。でも、ルイ全然役に立ってないの。役立たずなの」
「うーん。そうねえ」
ルイと手を繋げば魔法を使えるとはいうものの正直、面倒なのだ。
ルイが魔法を使わなくても、私やラリアンでカバーできるからだ。
そのため、なかなかルイに戦わせられていない。
「ごめんね。私もなるべくルイと一緒に戦うようにしようね」
「うん、なの……」
ルイは私の考えていることが分かっているようだ。
なんだか悲しそうな顔をするので私まで悲しくなってしまった。
これからどう展開すればいいのか、対人スキルの低いナツメには分からなかった。
「ナツメ、そろそろボスだぞ」
「あ……」
本当だ。それっぽい部屋の扉がある。前回のダンジョンではこんなものはなかった。
特殊トラップとかが無いといいけれど。
扉を開け、警戒する。
「来るの……!」
「……っ」
中には入らずに待ち構える。耳を澄ますと、微かに足音が聞こえてきた。
そうなると、前のようなモンスターではないことは確かだ。
足音が近づいてくる。
私達が扉を開けたのに気づいたのだろうか。身構え、臨戦態勢をとる。
「ナツメ、念のため防御魔法を使っておいてくれ」
「え?やった事ないけど……」
「ナツメならできるはずだ」
「えー」
できるかなあ。
防御魔法はどういうイメージで唱えればいいんだろう。
身体を強化するのかシールドを張るのか。
「前者でいいぞ」
ラリアンにそう囁かれたのでイメージを強くする。
肌を鋼のように固くするイメージで。
「強化」
あ、しまった。
成功するにはしたが、固くなりすぎて動けない。
ちょっと改善を加えないと。
そう考えているうちに時間が来てしまった。
「来た!ナツメは待機、ルイはトラップだ。私は応戦する!」
「了解!」
「分かったの!トラップ!」
「えっと。解除。一時強化」
ルイが早速呪文を唱えたので私も先程の魔法に修正を加える。
これは、攻撃を受けた時に硬化するようにした。
効くかどうかは分からないが、効かないと困る。
動くようになった腕を振って、戦況を見つめる。
現れたのは虫型のボスだ。
カマキリのような見た目だ。それに加えすごく大きいので凄いきもちわるい。
カマキリが腕をラリアンに向かって振る。
ラリアンはどこからか剣を出現させ、それを抑える。
動きはカマキリの方が速い。
カマキリは素早く腕を上げ下げしてラリアンにダメージを与えようとする。
ラリアンはそれを抑えるが、明らかにこちらが劣勢だ。
どうするか。
ラリアンには動くなと言われたが、動かないわけにもいかない。
取り敢えず、2人にもナツメと同じ防御魔法をかける。
これでしばらくは持つはずだが、最終的には倒さなければならない。
虫に効きそうな火魔法は他にも影響が及びそうなので無理。
他に効きそうなのは風くらいしかないが、これも上手くコントロールできなければ危険。
そうなると、ルイの罠を有効活用するしかない。
ルイが罠を仕掛けたのはカマキリの少し右。
そこまでラリアンが誘導できたらいいのだが……。
「ナツメ!参戦してくれ!」
「了解!」
ラリアンの要請であればどんな魔法でも協力するべきだろう。
罠に引っ掛けるには移動が必要。
ラリアンに動いてもらわないと。
「ラリー!罠踏まない程度で左に動いて!」
「了解した!」
ラリアンが左に動くと同時にカマキリもそれを追う。
1歩2歩と脚を動かす。
──よし、かかった。
3歩目の脚は罠の円の中にしっかりと入る。
それに気づくはずもなくカマキリはそのまま動き完全に罠にかかった。
カマキリの姿が一瞬で見えなくなる。
どうやら、罠は落とし穴だったらしい。
行動不能になったカマキリを追い詰めるには最適だ。
穴から脱出できないカマキリを炎で追い詰める。
「……」
サッカーボール大の炎の塊をラリアンやルイに気を付けながらカマキリに放つ。
炎はカマキリに直撃し、カマキリを燃やす……はずだった。
その予想には反し、炎はカマキリには燃え移らず、消滅してしまった。
「どういうこと!?」
「魔法耐性があるんじゃないのか?」
「なるほどね」
簡単に納得していいものではないが、凄く厄介だ。
耐性があるということはつまり、魔法系極振りの私は全く役に立たない。
「魔法耐性があるんだったら物理は効くよね?」
「そうだな。多分」
「じゃあ、ラリアンお願い」
「……」
リズムよく進んでいた会話がラリアンのせいで止まってしまった。
「どした?」
「その、だな……」
「ん?」
何かを言おうとしてるのだろう。
でも、言えない。
「まさか、剣は出せるけどあんまし攻撃できないとか?」
「そのまさかだ」
「どうして?」
「それがだな……」
ラリアンが言うには、創世魔法で生み出した剣は攻撃力があまり高くないという。
作れば作るほど攻撃力は上がるが、あまり作った事がないため今はほぼ0に近いとのこと。
「ダメじゃん!」
「ああ……」
さて、どうするか。
このパーティに物理攻撃ができる人はいない。そうなると、撤退せざるを得ない。
けれど、撤退なんかしたくない。一度やると決めたらやり切るのが私の性分だ。
どんなに面倒な方法でもやり切らなければならない。
カマキリは今穴にはまって出られない。
それに時間制限があるかは分からない。
見る限り、しばらくは穴にはまったままだと思う。
それはいいのだが、カマキリにはダメージが与えられない。
最近気づいたのだが、よく見ればHPゲージが見えるのだ。
じーっと敵を見つめているとその上に現れる。
いかにもゲームっぽい仕組みだ。
カマキリのゲージは最初に見た時より少し減っている。
穴に落ちたことで少し減ったということなのだろう。
ん?何か引っかかる。
そこに何かあるような……。
穴に落ちたのは剣によるダメージではない。
つまり、物理攻撃は物理によるものであれば何でもいいということだろう。
じゃあ、パンチでもいいんじゃ……。
と、そこに予想だにしていなかった人物が現れた。
「よお!何かお困り?」
「っ!」
藤谷直人だ。
珍しく、鎧に身を包み大剣を背中に差している。
「倒せないんだったら俺がやるけど?」




