25『レストランにて』
あの後、無事にダンジョンを脱出し、宿屋にたどり着いた。
ギルドでクエスト完了を伝えると、とても感謝された。
これで街の開発が進むとのこと。
報酬もたんまりもらったのでこれでしばらく充分に暮らしていけると思う。
「それにしても、こんなに報酬が出るだなんてな」
「1000万ユアンってそんなにすごいの?」
私の代わりに、ルイが聞いてくれた。
「もちろん!1000万なんて、一年まじめに働いてもなかなかもらえないぞ?」
「へー」
ルイはまだお金の価値がよく分からない子供様だ。
そんなに力説しても分かってはもらえないぞーと念を送る。
「そっか。まだ分からないか」
どうやら、伝わったらしい。
こういう時は便利だと思う。
他でも有効活用できたらいいが。
「それより、今日の夕飯はどうするんだ?」
「んー。いっぱいお金があるんだから、外食してみたいかも」
「いいな、それ。ルイはそれでもいいか?」
「うんなの。お外食初めてなの」
「そうだね。私もだよー」
ルイと初めての喜びを分かち合う。
外食は、向こうで生きていた時もした覚えがないのだ。
でも、あいつと1回だけ、断れずに行った気がする。
それじゃあ、初めてじゃないのか、と思ったがこの世界で初めてなのは変わらないので楽しみにしておく。
「じゃあ、レストランにレッツゴー!」
「美味しいの。初めての料理なの」
「そうだね」
現在、宿屋に一番近かったレストランで夕食をとっている。
私が選んだのはカレーライス、ラリアンはハンバーガーだ。
ルイは何がいいのかわからなさそうだったので私と同じカレーにしておいた。
カレーは、一般的な向こうで食べたカレーと全く同じで、とても美味しかった。
目を閉じていい思い出がある訳ではないが、この味はとっても好きだった。
ルイも気に入ってくれたようなので、今度作ってみようと思った。
そして、ラリアンはハンバーガーにがっついている。
昔から、ハンバーガーが好きだったらしい。
何でも、仲間がよく作ってくれたそうな。
これでまた、ラリアンの仲間転生者説が強くなった。
もう、疑いは止められない、がわざわざ聞きはしない。
聞いて別に得がある訳ではないし、別にどうでもいい。
きっと、このカレーも転生者が作ったんだろうなとか思いながら、故郷を味わう。
全て食べ終わったところで、デザートにプリンがが届いた。
昔からプリンは好きなのだ。
スプーンをプリンに入刀しようとしたその時、嵐は巻き起こった。
チリンチリン
店の扉があわただしく開く音がした。
その時までは全然気にしなかったが、次に店に響いた声で手が止まってしまった。
「あ、明日香!いた!明日香―!」
店に響いた男の声に肩がビクンとはねる。
決して私ではない。私ではない。私ではない。私ではない。私ではない。
「ねえー何でシカトするのー?ね!」
肩を思いっ切り叩かれる。
私ではない。私ではない。私ではない。私ではない。私ではない。私ではない。
「あ、プリン食べてるー。俺にも頂戴?」
突然、男の顔が目の前に現れる。
思わず目をそらし、ラリアンに助けを求める。
ラリアンなら私の思考が読めてて、事情も理解してくれるはずだ……。
そう思っていたのに、ラリアンには目をそらされた。
ルイも困った顔をしている。
誰も助けてくれやしない。
そう分かった瞬間、私は立ち上がる。
「お、明日香。気付いた?俺だよ俺。俺俺」
「うるさい。オレオレ詐欺かよ馬鹿野郎」
「相変わらず口悪いねえ。ま、そこが好きなんだけど」
「ちっ」
最悪だ。
どうしてここでこんな奴に会わなくちゃいけないんだ。
異世界にまで来て何でこいつと。
と、謎のタイミングで空気を読んだラリアンが口を開いた。
「ナツメ、その人は誰なんだ?」
私は答えない。
こいつの素性なんか、ラリアンに言っても意味はない。
お前も、答えたりなんかするんじゃない。
その脅しは苦しくもそいつには届かなかった。
「俺?俺はね、ナツメの……」




