24『可愛くない』
そう言えば、ラリアンのスキルにそんなのあったようなないような……。
「でも、死神って生命じゃなくない?」
アンデットモンスターなら生きた命ではないはずなのだが。
どういう原理なのか。
ラリアンはフッと笑って答える。
「そう思うかもしれないが、実は違うんだ」
「へ?」
「アンデットモンスターと言ってもね、普通にモンスターなんだ。その名前を与えられただけで、そいつはそういうモンスターとして生きている。幽霊とは言っても本当に幽霊ではないんだよ」
意味がよく分からない。
難しい事を言われているような……。そうでもないような……。
相槌を打てないでいると、ラリアンがもっとわかりやすくしてくれた。
「つまり、普通に命を持っているんだよ。アンデットという名前なだけでね」
未だに理解は追いついていないが、何となくわかったような気がした。
アンデットであってアンデットではない。
中身は普通のモンスターとは変わらなくて見た目がアンデット。
私には見た目さえも分からないのではっきりとは言えないが、言い換えるとそんな感じだろう。
でも、本当の幽霊、アンデットはいないのだろうか。
人間の恨みがここに姿を現す。いわゆる本当の幽霊はここにはいないのだろうか。
「いるかもしれないな」
またもラリアンは人の思考を勝手に読んだらしい。
もう流石になれたので気にしていないがやはりいい気分はしない。
今はいいが、出来れば空気を読んで思考を読んで欲しい。
牽制とこの思考も呼んでるよな、という気持ちも込めてラリアンを睨みつける。
ラリアンは目を合わせ、白い歯を見せて微笑む。
本当に大丈夫だといいのだが……。
「いるかもしれないって、誰も見たことないの?」
「そうなんだろうな。何しろ、アンデットとさほど見分けがつかないだろうし」
「あ、そっか」
ラリアンの言葉に流石異世界、と納得する。
どうせ私には見えないし……と思ったが、そうでもなかった。
アンデットモンスターが見えない、ということは本当の幽霊は見えるかもしれないのだ。
もし勘違いして近寄ったら本当に呪われるかも……と寒気を感じる。
でもまあ、誰も見たことないんだしー、と言い訳をして恐怖から思考を切り離す。
「あのね、ルイはね。お化けさん見たことあるよ!」
「え?」
「ひっ」
なんて事言うんだ。この悪魔(天使)は……!
折角その話から別の話に行こうと思っていたのに……。
「あのね、最近ね、夜ね、お散歩してたらね……」
「……っ」
「い、いいんだぞ、ルイ。そんな話しなくてもっ。私達はそんなの望んでな……」
「ギルドの外の壁の横ぐらいでね、ぶつぶつ聞こえたの」
「だからっ」
「……」
どうやら、ラリアンの止めにルイは聞く耳を持つ気がないらしい。
止めて……と言いたくなる口をつぐむ。
怖い話程、聞きたくなるものはない。
ラリアンも諦めたらしい。
青ざめた顔を見せながらも、ルイの話にしっかり耳を傾けている。
「安心しろ安心しろーって。どんなお化けなのかな!」
「それって……」
お化けじゃなくない?
嫌だってそんなセリフ、死んだ人が言わないでしょ。
何に安心しないといけないわけ?
と、しっかり落ちのあった怖い話に心の中で突っ込みを入れる。
別に心の中じゃなくてもいいのだが、ラリアンが何か言いたげなので遠慮しておいた。
口をパクパクしている。
なかなか言い出さないので背中を押してあげる。
「ラリー、遠慮しないで言っちゃいな」
多分、突っ込みか何かだろう。
と思っていたが、実際はそうではなかった。
「その、そのだな……。えっと、えっとな。多分、それは……」
「?」
「私だと思うんだ」
「はっ?」
「んー?」
「いや、私、意外と疑心暗鬼でな。その頃はナツメに嫌われてるんじゃないかと思ってたんだ。だから、自分を落ち着かせるために暗示を……」
「こわっ」
ラリアンがそういうタイプとは思っていなかった。
私にどう思われてるのかそんなに重要なのか。
まあ、その時はいいように思ってはいなかったが。
「やっぱりそうじゃないか!あの暗示はなんだったのか……」
「だ、大丈夫だよ!今はラリーの事、好きだよ?一応……」
ラリアンが泣きまねをするのでこちらも焦った振りをする。
ラリアンに私の考えは分かっているはずだが、ここは空気を読んでくれた。
「本当か!?」
「う、うん」
「そうかー」
いや、こっちの考えは読んでいなかったらしい。
完全に演技ではない。
ラリアンには何がしたいのかよく分からない、というレッテルを張った。
「ねえねえ、ルイはー?」
ルイはいつも突然だ。
馬鹿でかい声に耳が痛くなる。
「好きよー」
この言葉は本心から出たものだ。
ラリアンには悟られてはいけないことだが。
「よかったー。ルイもね、お姉ちゃんのこと好きだよ」
「ふふふ。ありがとー」
ルイが満面の笑みで言うので、思わず頭をなでる。
「えへへ」
「おわっ。ナツメ、酷いぞ!私も撫でてくれ!」
「えー。ラリーは可愛くないもん」
「……」
ラリアンが絶句する。
どうしてこんなに驚く必要があるのか。
ルイとラリアンは確実に違うというのに。
「それに、ラリアンはその帽子が邪魔で撫でられないもん」
「じゃあ、これを外せばいいのか!?」
「いやだ」
「結局!」
もうもう騒がしいったらありゃしない。
これからも大変そうだな。
誰かこの状況を変えてくれる救世主はいないものだろうか。
暫く、ダンジョン内に明るい声が響いた。




