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私、人生迷ったら世界最強魔導士になりました。  作者: 工藤 零
第一章 『自分探しの旅』
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18『再生を目指して』

「だって私達、始まりの街を出てからずっと、持ってきた食料でやってきたじゃない。そろそろ無くなっちゃうんじゃないの?」


今まで、食料は3人で分けてリュックに背負って持っていた。

しかし、補給したことは今まで一度もない為、あの老人から頂いた以外、3度の飯はこのリュックの中に入っているものだけでやりくりしてきた。

それも遂に、私のは今朝切れてしまった。


おそらく2人のも同じ様に無くなっているはずだ。


「そう言えばそうだな。確かに、私のももう無い」


と、ラリアンが危機感のない声で言った。

残るはルイのものだけだ。


「ルイのは、少しだけ、余ってるの」


「え!?」


ルイがリュックの中身を開いて見せるので覗くが、残っているのはルイの言う通り、本当に少しだけだった。


「これだけか……」


「ルイ、ごめん。分けてくれる?」


「もちろん、なの」


ルイのリュックの中に入っていた、フランスパンより小さいがそれに似た物を3人で分けて食べるが、小さかったのであっという間に無くなってしまった。


「ひもじい!」


叫び声と同時にお腹が呼応してきゅる、と鳴いた。

足りないと感じているのは私だけでないらしく、ラリアンもルイも口を尖らせてお腹に手を当てている。


「もうちょっと計画的に食べておけばよかったなあ。ラリアン、魔法でご飯って作れないの?」


「無茶を言うなよ。私の魔法も万能じゃないんだ」


今にも鳴りそうなお腹を押さえ、ベッドの上を転がる。

このままお腹が空いたことだけ考えても埒が明かない。

何か別のことをして気を紛らわせなくては。


「風呂にでも入ってきたらどうだ?」


「んん?」


「そこの扉を開けたら浴室があるぞ。気分転換にはいいんじゃないか」


何か、ときめく様なことを聞いた気がする。

風呂?浴室?


「最高じゃん!」


始まりの街で入った以来だ。

ラリアンに何か言われる前にダッシュでその浴室に向かう。

引き戸式の扉を開くと、脱衣所らしき場があり、その横にドアがある。

ドアの向こうはきっと、浴槽のある風呂に違いない。


扉を閉めるのも忘れ、服を脱ぎ、ドアを開ける。

入ると、足を伸ばせそうな浴槽があり、何故かその中にはたっぷりとお湯が貯まっていた。

その魅力的な光景に、危ないのも承知で思わずジャンプして浴槽の中に入ろうとすると、


「ナツメ!体を洗わずに入るなよ!」


と声が飛んできたので、何とか踏みとどまる。

今はとにかく体を洗おう。そして、ゆっくり浸かろう。

その思いだけを胸に体を洗った。






「はぁ、すっきりした」


「ナツメ、遅いぞ」


「ごめん。考え事してて」


見れば、ルイがもう寝てしまっているではないか。

慌てて、ラリアンに事情を聞く。


「ナツメが遅いもんだから寝てしまったよ。疲れていた様だから、起こさないでやろう」


「そうだね」


髪を拭きながら、ラリアンの隣に座る。

ベッドの反動を受けながら、彼女を見た。


「ラリアンは、どう思う?」


「何をだ?」


「あの老人のこと」


老人とは、音楽の街にいたあの人のことだ。

それはラリアンにも通じたらしく、頷いた。


「そうだな。ナツメが何を考えているのかは、読み取らなくてもわかるよ。……あの人が、どういう存在だったのかが気になるのだろう?」


「さすがラリアンだね。まるっとお見通しみたい。……ねえ、この世界に幽霊っているの?」


あの人は、光となって消えてしまった。

それは、本当の人間であるとするのなら、有り得ないはずだ。


「いる、のかもしれない。はっきりとは言い切れないんだ。ただ、あの老人は、あの街の生んだ思念の形だと思っている」


「どういうこと?」


「今となっては誰も知り得ないが、あの街に住んでいた人達の思念が溜まっていたのだとすると……」


その思念があの老人の形を生み出した。

私がその先を理解したことに気づいたのか、ラリアンは途中で口を閉ざした。


「私はね、あの人は、何年も前に死んじゃってたんだと思う。きっと、街に何もなくなった時に。そのまま、思念だけが残ってて、それが成長して、消える直前に、元の姿に戻った。……私ね、あの人はずっと孤独だったんだと思う。そして、私達に出会い、最終的には消えてしまったけれど、私達の心の中に残った。あの街と、あの人を、私は忘れない。私は、あの街を昔のように復活させてみせるから」


その想いに、ラリアンは何も言うことはなかった。

でも、ラリアンの思いを私はもうすでに分かっている。

今はただ、あの人と、あの街を想って窓の外の空に祈った。






マグリは、息を吐いた。

日々の重労働には疲れを感じずにはいられないが、好きでやっている事なのでやりがいもある。自分は本当にこの仕事に向いているのだと、毎日確かめさせられる。

毛を刈った後の羊の肌をさすりながら、マグリはそんなことを考えていた。


もっとも、こういう風に何かを考えている時間はほんの一時しかないし、考えてもいられない。

またすぐにその場を離れ、牛舎へ向かう。

向かう道中、何匹かの羊とぶつかってしまい、通じない言葉で謝りながら歩いた。


「次は、餌やりだ」


ふっ、と息を入れ直し、マグリは牛舎の扉を開いた。


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