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わたしをブルーに染め上げて  作者: かつをどり
第7章 そして、わたし達の音は響き続ける
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そして、わたし達の音は響き続ける 第12話

 三分くらい背中をなで続け、嗚咽と震えがしなくなると叉音ちゃんがムクリと起き上がったので、温かい背中に名残惜しさを感じながら手を離した。


「大丈夫?」

「うん、ごめんね」

「気にしないでよ、いきなりあんなに伸びたらびっくりしちゃうよね」 


 わたしだって「自分の動画の再生数が伸びればいいなー」とは常日頃思ってはいるけど、いきなりいつもの十倍以上再生されて、しかも海外でバズっていたら嬉しいを通り越して怖いと思う、それが最初の投稿ならなおさらだ。


 ここでテレビ台の上にティッシュケースが置かれていたのを思い出し、二枚ほど抜き取って差し出すと叉音ちゃんは目の周りを拭き、遠慮がちに鼻をかんで丁寧に折りたたんでゴミ箱にコロンと転がし捨てた。


 そしてメガネを掛け、少し充血した目をこちらに向けてくれた。


「ありがとう」

「いいよいいよ、ギター教えて貰って学祭にも出てもらってわたしの方がいつも迷惑かけてるんだから」


 それ以外にもお米や野菜やアコギも貰った。それにしょっちゅうお泊まりもしている。

 それに叉音ちゃんの方からなにかやりたいなんて言ってくれることはあまりないから動画撮影と編集程度ならこれからもいくらでも手伝っていいと思っていた。


 だけど叉音ちゃんの「ありがとう」はそれだけの意味でなかった。


「動画投稿だけじゃない、私、響に友達になって貰ってから色々変われた。一緒にギター弾くのもすごく楽しいしお父さんとも仲直りできた、あと山口さんと藤塚さんとも話せるようになった。全部響のおかげ」

「えーそんなことないよ、叉音ちゃんが頑張って、わたしはちょっと手伝っただけだよ」


 本当は自分のチャンネルに一緒に動画を投稿したり、もっと色々なこともやってみたかったけど叉音ちゃんの性格的にあまり無理はさせられないと思って遠慮していたし、学祭は最後は無理矢理参加してもらって動画投稿も叉音ちゃんがやると決めてくれたんだからわたし自身が何かしたとしても少し押し手を引っ張っただけだと思っていた。


 でも叉音ちゃんはそう思っていなかった様子で、ブンブンと勢いよく頭を横に振って否定された。


「違う、全部響のおかげ、響に会えなかったら私ずっと変われなかった、響が変えてくれた」


 声をいつもよりも張り、今まで見たことが無い強く否定の意思表示をされ、少し面食らった。


 わたしは今まで、めんどくさいし責任も持てないからなるべく他人の関係性だったりには深入りしないようにしていて、それまでの「友達」とは表面上仲良く付き合っているように取り繕うようにしていた。


 なので恋愛とか人間関係の相談なんかの”重い”話はなるべく受けないで避けるようにしていて、そのせいで心の底から感謝されたことは無かったと思う。

 だからこんなに感謝されるのはこれが初めて、それも相手が叉音ちゃんだからすごく嬉しかったし達成感が胸に満ちてあふれそうになっていた。


「へへ、そんなに言ってもらえるとちょっと照れちゃうよ」


 本当はちょっとどころではなかったけど、なんだか照れくさくて遠慮してしまった。


 でも、そのせいでまだ感謝が足りないと思わせてしまったようで、さらに感情的になった叉音ちゃんはつたない言葉を続けた。


「わっ…わ、私……響がギター弾けるのも、動画投稿してるのも会う前から知ってた」


 そうだった、そういえば叉音ちゃんと初めてここで話した時はもう動画投稿とかギターの事は知ってたんだった。


「クラスの人が響の事話してて知ってた。動画投稿ができてて友達が多くて大人っぽくて、私もギターが弾けるのに全然違って、それで勝手に……苦手だと思ってた」


 たしか叉音ちゃんは前に「断るのが苦手だから教科書を借りに来たわたしに無愛想な態度を取った」と言っていた。

 その話も嘘では無かったのだろうけど本当は『わたし自身を苦手と思っていた』というのは今言われるとちょっとショックだ。

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