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わたしをブルーに染め上げて  作者: かつをどり
第7章 そして、わたし達の音は響き続ける
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そして、わたし達の音は響き続ける 第9話

 納屋に入ると入り口前が片付けられていて広いスペースになっていて、毛布が開けられた防音室内でヤカンが乗った石油ストーブがつけられていた。


「あったかー」


 外で盗み聞きしていたとは言え大した時間でもないのにしゃがみ込んで両手をかざしてしまうのは冬にストーブを前にした人間の性なのかもしれない。


「……暗いね」


 納屋に入るなり一直線にストーブに向かったせいで最初に気がつかなかったけど、室内は薄暗くて、よく見ると窓が段ボールで目張りされていた。


「外、見えない方がいいかと思って」


 叉音ちゃんがそう言いながら奥から大型の三脚付きのLED投光器を引っ張り出してきたのでそれを手伝い、叉音ちゃんはエレキギターの、わたしは撮影と録音の準備をした。




 そうこうしていると叉音ちゃんの方は準備完了、こっちも一通り終わったのでとりあえず一回やってみることにした。


 三脚に載せたスマホのカメラが叉音ちゃん首から下を撮しているのを確認して親指を立てると叉音ちゃんは左足で二回目地面を叩き、軽快でパワフルな旋律がギターから奏でられる。


 Fire On the StringsはFire on the Mountainというフィドル曲をジョー・メイフィスがエレキギターでアレンジした曲で、今回はギターとフィドルで交互にパートを入れ替えて弾くことにして、最初はフィドルでの演奏を始めた。

 曲のテンポが最初ゆっくりだったのが入れ替えるたびにどんどんと速くなり、最後には倍かそれ以上の速さになっていたのでわたしはただただ圧倒されながら録画していたのだけど───


 ギターで弾けるの、これ?


 ギターとフィドル、つまりバイオリンではフィレットが無く右手で弓を真っ直ぐ当てつつ左手で弦を動かすバイオリンの方が弾くのが難しいと言われていて、前にわたしが叉音のフィドルをちょっと弾かせてもらったら全然音が出なかった。

 ただ、フィドルの曲をギターで弾くとなると弓で弾くバイオリンと違ってギターは音が伸びないので、そこを何かしらで繋いで弾く必要がある。


 ジョー・メイフィス本人はここを超高速で弾いていたけど、果たして叉音ちゃんでもできるのだろうか?


 そんな疑問が頭に浮かんで、スマホの画面を見たまま固まっていた。


「大丈夫?」


 スマホの画面いっぱいに降られる手が映って初めて演奏が終わって叉音ちゃんが目の前にいるのに気がついた。


「ごめんごめん、ちょっとボーっとしてた」


 録れた物を確認してから叉音ちゃんのスマホに転送し、それを聴きながらギターの録音録画に取りかかったのだけど、さっきの心配は全くの杞憂だった。

 叉音ちゃんは演奏は原曲かと聴き間違えるほどの出来で、何回か録り直してから納屋を片付け、編集は叉音ちゃんの部屋で半分程度やって残りは自分の家で終わらせることにした。



 明日も休みなんだし、別に急いでやらなきゃいけないわけじゃなかったけれど、わたし自身が早く見たかったから二時近くまで編集をしてしまい、おかげで無事完成できた。


 演奏はギターもフィドルもわたしが録ったけど別々で聴くのとちゃんと編集したのではまったく別物になっていて、改めて叉音ちゃんの演奏に驚き、感動した。

 さっそく本人にも見せたかったけど、さすがにこの時間はもう寝てるし明日…いや正確に言えば今日は朝から畑の手伝いをしなきゃいけないそうなので起きてから送ろう。


 編集している間は集中していたせいなのか気にならなかったけど、朝から撮影の準備をして本番、片付けに編集まで一気にやってしまったからパソコンの電源を落とすと同時に猛烈な眠気に襲われ、ヨロヨロと布団に潜り込んで電気を消し、目を閉じるか閉じないかの間に意識が途切れてしまった。

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