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わたしをブルーに染め上げて  作者: かつをどり
第7章 そして、わたし達の音は響き続ける
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そして、わたし達の音は響き続ける 第8話

(*注1)ファイヤー・オン・ザ・ストリングス(Fire On the Strings)叉音が選んだのは速いバージョン

(*注2)ジョー・メイフィス(Joe Maphis)カントリーにおける元祖速弾きギタリストの一人、ギターの他にフィドルにマンドリン、バンジョー等を操り「弦楽器の大様」と呼ばれた

 翌月曜日、もはや冬となったこの季節にいつも一緒にお昼ご飯を食べていた踊り場ではいい加減寒くなってきたし、学祭ステージがあって音楽をやってるのを隠す必要も無いからわたしの机でお昼を食べていると、早速動画撮影で弾く曲を教えて貰えた。


「『ファイヤーオンザストリングス』(*注1)……ってどんな曲だっけ?」


 以前に聴かせてもらったんだろうけど、カントリーミュージックを曲名で覚えていないからどの曲だったのか全然ピンとこない。


「ジョー・メイフィス(*注2)の曲だよ」


 と、ミュージシャンを教えてもらっても全然ピンときていないのが完全に顔に出ていたようで、イヤホンをスポッとわたしの耳にはめられて再生された。


「あー、これね」


 やっぱり聴いたことがあるし動画も見た。


 ギターとフィドルとマンドリンで奏でられる、まさに曲名通りの『弦が燃える』ようなハイテンポでエネルギッシュな曲。


「とりあえずギターとフィドルで弾いて、動画にしてみたい」

「叉音ちゃんひとりでだよね?」

「うん」


 よかった、一瞬わたしがギターを弾くのかと思ったけどこんな速い曲弾ける気がしない。


「そういえば多重録音って、フォギー・マウンテン・ブレイクダウンでやってたよね?」


 たしか夏祭りの時に聴かせてもらったはず。


「うん、スマホでやったけど今度はちゃんとしたのでやってみたい」


 じゃあそれに合わせてわたしも準備をしなきゃか。




 そんなやりとりから約二週間が経った水曜日の朝、カバンをロッカーにしまっていると叉音ちゃんが小走りでやってきて「今度の休みの日に動画を撮りたい」と言ってくれたので早い方がいいと思って土曜日に撮影をすることにし、当日はいつも使ってるノートパソコンやらマイクやらオーディオインターフェースやらの機材を持って叉音ちゃんの家に向かった。


 お母さんに車で門の前まで送ってもらい、機材の入ったカバンを背負いながら呼び鈴を押そうと家に向かっていたら背後の納屋からギターの音色が聞こえてきた。


 叉音ちゃんが練習しているのだろうけど、初めてここに来た時を思い出して懐かしい気分になってしまい、そうしたら急にいたずら心が沸いてカバンを扉の前に置いてこっそりと納屋の裏側に回り込む。


 前回とは違って晴れているし足下は枯れ草が落ちていたけど、幸いなことに叉音ちゃんはずっとギターを弾いているから音で気づかれる心配は無さそうだった。


 防音室の唯一の窓から中を覗くとギターを弾く叉音ちゃんの姿が斜め後ろから見えた。

 顔はよく見えないけどいつもは正面、学祭の時は横から見ていたから、この角度は半年前にちょうどこの窓から見て以来だから余計に懐かしい気分になった。

 汚れたガラス一枚で仕切られているだけなのにまるで叉音ちゃんが別世界にいるようで、それを特等席から見ているような気分で弾き終えるまで聞き入ってしまい、終わった所で窓を叩くとびっくり顔で振り向いてくれたので拍手をした。


 そうすると今度は呆れたような表情をして納屋の正面の扉を指さしたので、急いで回り込んで両方から一緒に開けた。


「何してたの?」

「覗き見、二回目だね」

「そうだね」


 呆れつつも、なんだか嬉しそうに微笑んでくれた。

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