そして、わたし達の音は響き続ける 第7話
お昼休憩を挟んで再開したけどすぐに「とりあえず一回やってみようか」ということになって、叉音ちゃんが一人で弾いてわたしは観賞兼撮影をさせてもらう。
「……じゃあ弾くね」
やや不安そうにしながらも始まった演奏は原曲に忠実で、もちろん原曲は何百回も聴いたし色々な人が弾いて投稿している動画も見て、アレンジも聴いたけどわたしにとっては最高の演奏だった。
原曲を押しのけて”最高”と評価してしまうのはどうかとも思うけど、胸を張って悠々と立つ姿がかっこよくて、しかもわたしのためだけに弾いてくれているのがすごくまぶしくて、恋愛的な「惚れた」というのがどういうのかは分からないけど、
もしかしたらこういう感覚なのかもしれない。
「……ど、どうだった?」
演奏が終わったのにわたしが呆然としてスマホで撮影し続けているから不安にさせてしまった。
「いい、凄くいい!今まで聴いた中で最高だった!」
録画を切るのも忘れ拍手を送った。
「褒めすぎだよ」
叉音ちゃんは少し照れていたけど、わたしが気を使って大げさに褒めているんじゃないかと疑っているようだった。
「本当に最高、今まで聴いた中で一番!」
ムキになって必死に主張してしまった。
「ありがとう」
お礼を言いながらわたしをたしなめるかのように柔らかな微笑みを浮かべられ、
そんな顔をされたらムキになっていたのが馬鹿らしく思えてしまった。
「ねぇ、響も一緒に弾こう……あと、歌わない?」
「えっ、歌うの?」
「うん、動画で歌ってたから」
たしかに弾き語りの動画は投稿してたけど───
「えー、マイク無いし恥ずかしいし…」
「私、聞きたい」
「んー……じゃあしょうがないなぁ」
イスに座り直したわたしの目の前に立って、べっ甲めがね越しに深緑色の瞳でまっすぐ見つめられながらそんなことを言われてしまったら、なにより「聞きたい」なんて言われてしまったらやらないわけにはいかない。
叉音ちゃんとの演奏では初めて歌ったからちょっと恥ずかしいし不安だったけど、合間に視線を向けた時に優しくうなずいてくれたので自信が持てて、正直学祭ステージよりも楽しかったかもしれない。
撮影の方はスマホだったから心配だったけどちゃんと撮れていて意外と音質も大丈夫そうで、一緒に確認した叉音ちゃんも真剣な表情で見つめていた。
ただ、学祭の時の動画を送った時は「自分の姿を見るのが恥ずかしい」と言ってあんまりちゃんと見てくれていなかったからなんだか不思議だった。
「響は自分で動画出してて恥ずかしくないの?」
「最初のうちはそういうのもあったけどもう慣れたかな」
まあ、動画といっても首から下しか出してないから、そこまで恥ずかしくないというのもあのかもしれないけど。
「……私も動画撮りたい」
「動画撮りたいの!?」
想像だにしていなかった言葉に驚き、オウム返しした質問に対してコクコクと二回うなずかれた。
「えっ、なんで急に?」
「学祭の時にみんな喜んでくれたからまたやってみたくなった」
あー、そういえば昔動画投稿をしたって言ってたんだった。
「動画投稿もするの?」
「うん、ちゃんと撮れたらそっちもやってみたい」
「いいねいいね撮ろうよ、機材貸すし色々教えてあげるよ」
「ありがとう」
叉音ちゃんが動画投稿に興味を持ってくれたのと、なによりわたしを頼ってくれたのが嬉しい、わたしで出来ることならなんでもやってあげよう。
もう夕方だったので今日は帰ることにしたけど叉音ちゃんには演奏する曲を考えておいてもらって、わたしの方は今日の動画を再生しながら使う機材を選んでいた。
わたしの歌は一発取りだったからややぎこちないような気もするけど、楽しい気持ちが蘇ってきてずっとループで聞いてしまっていた。




