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わたしをブルーに染め上げて  作者: かつをどり
第7章 そして、わたし達の音は響き続ける
70/80

そして、わたし達の音は響き続ける 第6話

「響が一番好きな曲って何?」

「わたしの?」

「うん、いつも私が好きな曲のことばっかりだったから、今度は私が響が好きな曲を弾いてみたい」

「い、いいの? 弾いてくれるの?」

「うん」

 

さっきのやりとりのおかげなんだろうけど、今までもうっすらとは「弾いて貰えたらいいな」と考えたことはあった。だけどお父さんとの一件を知っていて、叉音ちゃんは好きなジャンル以外は弾かないじゃないかと思っていて遠慮していたから、こう言ってくれたのは凄く嬉しかった。


 わたしの一番好きな曲、そういうことだとギターを始めるきっかけになったアニメのオープニングソングなんだけど、本当にいいのかな?


「一番って言うと、前に話したアニメのオープニングの曲なんだけど……本当にいいの?」

「たしか響が見てギター始めたのだよね、前に見たね」


 そういえば、知り合ってすぐの頃にオープニングだけ見せたんだったけ。


「うん……えっと、聞く?」

「お願い」


 曲の方はスマホに入れているから再生出来るようにして差し向け、叉音ちゃんが有線イヤホンを刺したので再生する。


 目をつむって聞き入っている叉音ちゃんと、減っていく再生時間を交互に見ながらまさかそんなことはないだろうけど「断られたらどうしよう」と少し不安な気持ちになっていた。


「……ありがとう、多分大丈夫だと思う」


 よかった。


「じゃあ、明日でもいい?」

「えっ、明日?」

「うん、雨降りそうだから大丈夫だと思うし、晴れても休めるようにお願いしてみる」


 刺さっているイヤホン端子をプチッと抜いて天気予報を確認すると降水確率は八十パーセント、ここのところは叉音ちゃんの家に行っても試験勉強ばっかりだったから忘れてたけど雨が降ったら畑仕事は休みなんだった。


「わかった、雨降るといいね」

「そうだね」




 翌、日曜日は予想通りの雨、しかもザーザー降りだったからお母さんに頼んで車を出してもらって叉音ちゃんの家まで送ってもらった。


 試験勉強で叉音ちゃんにも何回かわたしの家に来てもらったおかげでうちの親と顔を合わせる機会があって、丁寧で真面目な性格と見た目なおかげで「かわいくていい子」と認知されて気に入ってくれ、おかげで叉音ちゃんの家に遊びに行くのにほとんど反対されなくなった。


 まあ、そのせいでわたしが何かすると引き合いに出されて小言を言われることが多くなったんだけど……


 叉音ちゃんに「そろそろ着くよ」とメッセージを送ると外にいるから納屋の中で待っているように返信が来たので、持ってきたギターなんかを納屋に運んでから言われた通りソファーに座って一息つくと、雨粒がトタン屋根に当たる音が響き渡っているのに気がついた。

 普段なら単なる雨音としか思わないのだろうけど、早起きして水族館に行った昨日の疲れがまだ残っていて、リズミカルな雨音をソファーに座りながら聞いていたらまどろんでしまっていた。


 寝ていたのか単にボーっとしていたのかはっきりしないけど軽トラが来て、納屋の扉が開く音で意識が戻った。

 開いた扉を閉めると何やらガサゴソとしているので、そっと覗くと長靴を履いた叉音ちゃんが雨合羽を脱いでいる所だった。


「外って畑だったの?」

「ハウス手伝ってた」


 ビニールハウスの事だよね、なるほどそれなら雨でも関係無いか。


「思ったより時間かかっちゃった」


 脱いだ雨合羽を柱に打ち付けられた釘に引っ掛けた叉音ちゃんはこちらに上がって、奥にあらかじめ置いていたギターとアンプを引っ張り出してきたのでそれを手伝った。


 わたしが教えてあげようと思っていたけど、昨日家に帰ってすぐに送った解説動画とスコアの画像で勉強してくれていたおかげでほとんど弾けるようになっていた。

 自分が死ぬほど練習した曲だったから若干の空しさを覚えつつ、あの頃は初心者だったしなにより「叉音ちゃんだからしょうがない」と納得することにして、細かい所をつめていった。

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