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わたしをブルーに染め上げて  作者: かつをどり
第7章 そして、わたし達の音は響き続ける
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そして、わたし達の音は響き続ける 第5話

 ご飯を食べ終え、周りを見るとピークが過ぎたのか席はまばらに空いていて、いい機会でもあるし少し歩き疲れていたから気兼ねなく海を眺めていた。


「響」

「んー、なに?」

「ありがとう」


 突然お礼を言われた。


 誘われて、水族館に来たことに対してかと思って「わたしも楽しみにしてたからいいよ」とでも言おうかとしたら───


「学祭でお父さんに頼まれて動画撮ってくれたでしょ」

「えっ、そっち」

「うん」

「あー……黙っててごめん」

「いいよ、お父さんが言わないように言ってたんでしょ」

「知ってたんだ」

「向こうから言ってくれて謝られた。自分の好きな物を押しつけてゴメンって」


 叉音ちゃん、お父さんと仲直りできたんだ。


「そうだったんだ。よかったね」

「うん、よかった」


 嬉しいのをしみじみと噛みしめているようなどこか晴々とした表情で、その「喜び」を分けてもらったわたしも同じような笑みを浮かべてしまっていた。


「…学祭ねぇ」


 でもそんな喜びもつかの間、今まで忘れていたわたしの”胸の内”と来年の学祭の事を思い出してしまった。


 学祭までまだ一年あるけど、この悩みを心の中に引っかけたまま過ごすのは、特に叉音ちゃん相手にはやりたくなかった。


 そういえば前もこんなことがあった。


 たしか海玲ちゃんに叉音ちゃんが小学校で「いじめられていた」と聞いたときで、まあ海玲ちゃんの勘違いだったんだけど、それを知ったわたしはどうしても胸の内に抱えていることが出来なくて本人に聞いちゃったんだった。

 これじゃ今回も一緒だけど、やっぱり叉音ちゃんに隠し事は出来そうもないや。


「あのね、叉音ちゃん?」

「なに?」

「来年の学祭なんだけどさ……わたしが選んだ曲も一緒に弾いてくれない?」

「うん、いいよ」


 拍子抜けするほどあっさりと快諾してくれた。


「えっ、あ……そっか、ありがとう」

「どうしたの?」


 声と態度に出ていたせいで完全に動揺しきっているに気づかれてしまった。

 もうこうなった全部言っちゃおう。


「いやほら、叉音ちゃんが中学の時に先輩のバンドにもこんな風に誘われたって聞いてたから」

「それで断らないか心配してくれたの?」

「うん、まあ」

「でも響は大丈夫でしょ?」

「うん、途中で『やっぱりいいや』とかはしないよ」


 来年の事だけど、叉音ちゃんの事は絶対に裏切りたくないからここは言い切った。


「響、どんな曲やりたいの?」

「動画で投稿して曲とか」

「そっか」


 カントリーミュージックを選ばなかったことに対して負い目があったせいなのか、叉音ちゃんの言葉には「残念」のニュアンスがあるように聞こえてしまった。


 学祭の曲選びと違ってこっちは本当に言う必要なんかない、でももしも叉音ちゃんが勘違いしていて、それが原因ですれ違ってしまうことにはしたくない。


「あのね叉音ちゃん、曲のことなんだけどいいかな?」

「うん、いいよ」

「叉音ちゃんに今までカントリーだったりブルーグラスだったり民謡だったりいろんな曲を教えてもらって、すごく楽しかったんだ。でもね、やっぱりわたしの一番好きな曲ってそういうのじゃないんだ。だからその……ごめん」

「ううん、私の方も響の事考えないで好きな曲ばっかり聞かせてた。ごめん」


 申し訳なさで顔を直接見れず、魚柄のテーブルクロスを凝視しながら謝ったのに、叉音ちゃんにも謝らせてしまった。


「いや、カントリーが嫌いって事じゃないよ、リズムとかフィドルとかバンジョーの音とか凄く好き、叉音ちゃんがどんな曲が好きかとか今まで知らなかった曲を知れたのも凄く良かったよ……でもやっぱりわたしの中だと一番じゃないんだ」

「そっか、でもそれは私も一緒。私はカントリーとかブルーグラスが好き、だけど響が自分の好きな曲を歌って弾いてるのを見るのも好き。一番じゃないけど私も響の曲、好きだよ」

「…へへ、そっか」


 自分の曲が「好き」と、しかも叉音ちゃんに言ってもらえて何だか照れてしまい、それを誤魔化すように残っていたお冷やを飲み干し、すっかり冷え切ったおしぼりで手を拭きながら窓の外の冬の海を眺めてしまったけど、そこへ叉音ちゃんは追撃するように質問をぶつけてきた。

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