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わたしをブルーに染め上げて  作者: かつをどり
第7章 そして、わたし達の音は響き続ける
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そして、わたし達の音は響き続ける 第4話

 ウミガメのご飯を一通り堪能してから大水槽を後にし、淡水生物や南の海の魚、熱帯魚のフロアを見ながら館内を進んで行き、わたしとしてはクマノミとチンアナゴがかわいかったのに満足していたけど、叉音ちゃんは泳いでいるヒラメやアマゾンの巨大な魚をずっと見ていた。


 一応今日のメインイベントはアザラシとアシカのショーということになっていて、それを見たら館内にあるレストランでご飯を食べてお土産を買って帰ることになっている。

 ただ、ショーまでまだ時間があったからペンギンの水槽を見て時間を潰していた。


「うーん、なんか一匹しか泳いでないね」

「そうだね、何でだろう?」


 水槽の中には何十匹もいるのにみんな陸に上がっていて泳いでいるのはなぜか一匹だけ、しかたがないからこの元気に泳いでいる子の写真をいっぱい撮っておいた。


 色々な種類のペンギンがいるらしいけど陸にいるのは距離が遠くて撮りにくいから待ってれば泳いでくれないかと思い、二人でそばのベンチに座った。だけどそんな気配は全くなく、わたしの興味はペンギンよりも叉音ちゃんの方に傾いていった。


「叉音ちゃん、水族館好きなの?」


 わざわざ誘ってくれたし、わたしの方はペンギンとアザラシアシカを見ていくのが今日の目標なのに対して叉音ちゃんは魚も熱心に見ていたから水族館そのものに興味があるようだった。


「昔おじいちゃんが熱帯魚飼ってて水槽見てるの好きだったから、あと…」


 口ごもられ、言葉が途切れる。


「と、友達ができたら一緒に来たかったから」


 照れながらも一生懸命伝えてくれた姿にジワっと胸の中に暖かい物が広がる感覚がした。


「あ、ありがとう」


 わたしの方も照れてしまって何だか硬い言い方になってしまい、何か言い繕おうを思った瞬間、目の前にザブンと大きな音を立ててペンギンが飛び込んで、驚きながらそっちの方を見てしまった。


「あっ、撮らなきゃ」


 慌てたフリをしながら写真を撮ることで逃げてしまった。




 新たに泳いでくれたペンギンの撮影をしていたらいい時間になったので、アザラシとアシカのフロアに行くとプールの周りは人だかりになっていて、隙間から覗き込むしかなくこんなことならもっと前からここで待っていればよかったと後悔してしまった。


 ただそれはそれとしてプールの周りをぐるぐる泳いだりお腹をペチペチと叩いてくれたアザラシに、意外と素早く走ったりボールを鼻先に乗せるアシカのショーはかわいくて楽しかった。


「叉音ちゃんはアザラシとアシカどっちがよかった?」

「アシカの方が色々やってくれて楽しかったけどアザラシの方がかわいかった」

「だよねー、丸っこくてかわいかったね」


 アシカもよかったけどやっぱりずんぐりむっくりなアザラシの方がよかったな。




 結構しっかり各々の水槽を見て回っていたおかげでメインイベントを見終えたらもうお昼時になっていた。


 お腹も減ったのでレストランに向かうと人でいっぱいで、順番待ちをしながら撮った写真を一緒に見ていたけどなかなか呼ばれず、夏休みにわたしがおじいちゃんの家に遊び行った時の写真を見せていたらやっと自分たちの番になった。


 案内された席は窓際で、曇っているとはいえ海を一望できていい眺めだった。

 わたしはシーフードカレー、叉音ちゃんはアジフライ定食を注文したところでトイレに行き、戻ったらもうカレーと定食が置かれていた。


 カレーはそんなに辛くないけど魚介の具材と旨みのおかげでとても美味しくて満足していたけど、アジフライなんかスーパーのお惣菜売り場のしか食べたことがないから、こういうちゃんとしたところのってどんな味がするんだろうと考えながら見ていたら、アジフライを食べる叉音ちゃんと目が合ってしまった。


「食べる?」

「いいの? じゃあちょっとだけ」


 よほど物欲しそうな目つきをしていたのか「ちょっと」と言ったのに二枚あるアジフライのうちの手をつけていない方を一枚恵んでくれた。

 流石に一匹丸々は申し訳ないけど、断って叉音ちゃんのしょんぼり顔を見るのも嫌だったからありがたくいただき、半分にしてソースをかけて食べた。


 美味しい。


 揚げたてな上にアジが新鮮なおかげなのか脂っこなくて身も締まってる。

 そして残しておいた方をカレーに乗せて食べる。


 ああ、美味しい、やっぱりカレーとも合う。


「よかったね」


 よっぽど幸せそうな顔をしていたらしくて優しく微笑まれてしまった。


 ちょっと恥ずかしい。


「えっと、叉音ちゃんもどう?」


 わたしにあげられるのはこれしかないからカレーをスプーンですくって差し向けたところで、さすがに自分が使ったスプーンで食べさせるのは気持ち悪いんじゃないかということに気がつき、引っ込めた方がいいんかと悩んでいたらやや躊躇されながらもパクッと食べられてしまった。


「美味しいね」

「だよね」


 わたしも恥ずかしいのを誤魔化しながらカレーを食べたけど、このスプーンって……いや考えないでおこう。

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