そして、わたし達の音は響き続ける 第1話
学祭が終わり、お祭り気分が抜けきらないできる所へバケツいっぱいの冷や水を頭からかけるように期末試験が襲いかかってきて、まだ居残っていた残暑の気配と共に浮かれ気分は木枯らしに吹き飛ばされてしまった。
何らかの部活に所属している生徒は試験休みに入るけど帰宅部のわたしと叉音ちゃんはここに関しては関係は無い。
ただ、わたしは夏に続いてまた赤点でも取ろうものなら今度はギター禁止令が出るだろうし、実際に中学時代はあまりにも低い点数を取ったせいでなったことがあった。
幸い動画の方は夏休みの暇だった時に撮ってストックしていたのを学祭直後に編集して投稿していた。
なので気兼ねなく勉強をすればいいんだけど、出来れば叉音ちゃんと一緒にしたいと考えて誘ったら目ざとい陽葵に嗅ぎつけられ、ついでに海玲ちゃんも参加することになっていた。
まあ最近の叉音ちゃんは陽葵と海玲ちゃんとも話をする……というか向こうから話しかけられ、本人も別に嫌ではないということなので四人で試験勉強をしていた。
ちなみに成績はわたしが平均点を行ったり来たりで叉音ちゃんと海玲ちゃんはその少し上、そしてなぜか陽葵は学年トップクラス、海玲ちゃんならまだしも陽葵は”キャラ的”に絶対下だと思っていたからなんだか無駄に敗北感を植え付けられた。
しかも成績は上のくせに教えるのが下手で全く役に立たず、実質三人での勉強会になっていた。
「あー……やっと終わったぁ……」
全科目の試験を終えた達成感を噛みしめつつ、多分間違えたであろう所と答えられなかった問題に後悔の念を覚えながら廊下のベンチでうなだれていた。
「おつかれちゃん!」
後ろから両肩を叩く元気な声、振り返らなくてもわかる、陽葵だ。
「この後何人かで遊びに行くけど来る?」
「うーんいいや、最近全然触ってなかったからギター弾きたいんだよね」
試験勉強中は怒られるしそっちに逃げそうだったからギターは意識して触らないようにしていて、そうしたら叉音ちゃんじゃないけどなんだから落ち着かない感じがしてしかたなかった。
だから一刻も早く帰って弾きたくてたまらないでいる。
外は雨、少し億劫だけど試験開けなのでさっさと帰ろうと荷物をまとめ、こういうときのためにロッカーに置いている折りたたみ傘を探していると、ブレザーの裾を引っ張られる感覚がした。
最初は気のせいかと思ったけど、さらに二回引っ張れたので振り向くと叉音ちゃんが裾を掴んだまま立っていた。
「いっしょに帰ろう」
そう言ってくれるのは嬉しいけど、家の方向が逆だから一緒に帰ったとしてもそれは校門までになる。
当然叉音ちゃんも知っているんだから、多分話があるってことなのかな?
「いいよ、帰ろっか」
一年生の教室は三階にあるから階段を降り、昇降口で靴に履き替えたけどその途中校内各所から吹奏楽部だったり運動部の部活をしていて、久しぶりに学校が生き返ったように感じていたらすぐに校門に着いてしまった。
たまに一緒に学校を出るときはここでお別れの挨拶をして分かれるのだけど、今日の叉音ちゃんは無言で立ち止まり、どうしたのかは気になったけど聞くとなんだか急かしてしまいそうだから黙って話してくれるのを待っていた。
「……行かない?」
叉音ちゃんのか細い声は傘に当たる雨音にかき消されてしまって最後の方しか聞き取れなかった。
「えっと……ごめん、なんて言った?」
「水族館…行かない?」
「水族館?」
ってあの魚が見れるあそこだよね?
「デート?」
「ち、ち、違うよ、そういうのじゃ無いよ!」
「あはは、冗談だって。叉音ちゃんが行きたいんでしょ、付き合うよ」
「ありがとう、行く日なんだけど今度の土曜日でもいい?」
「うん、大丈夫」
「ありがとう、じゃあまた明日」
わたしの同意を取り付けた叉音ちゃんは安心した様子で、ちょっと元気に左手を振ると帰って行った。
前は夏祭りに誘ってくれたけど今度は水族館か、行ったことはあるけど小学生の時だからあんまり覚えてないな。




