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Level.158 仲良し夫婦の後夜祭


 セレナ:わ! ダリちゃんだ!

 マンダリナ:おお、セレナか。珍しい時間にいるな

 セレナ:ダリちゃんログインしてないかなーって思って

 マンダリナ:旅人ウォーカーの方で言ってくれたらログインするのに

 セレナ:しなくてもログインしてくれたから、大丈夫w

 マンダリナ:確かにw


 そして、示し合わせたわけでもない二人は楽園の庭で久方ぶりに再会した。


 聖桜祭の準備期間からずっと多忙を極めていたせいで、碌に会う時間を確保できなかった夫婦は相も変わらず以心伝心。


 約束などしなくても心で通じ合っているのか、ログインした時間には一分も誤差がない。


 聖桜祭の時とは逆で、セレナが赤いドレス、マンダリナが黒のスーツを着て。


 楽園の庭の最近の二人のお気に入りである、イズニフ・アブキアの空中庭園での二次会が始まった。


 マンダリナ:お疲れ様、セレナ。聖桜祭は楽しかったか?

 セレナ:お疲れ様、ダリちゃん! 凄く楽しかったよ! ダリちゃんは?

 マンダリナ:もちろん楽しかったよ

 セレナ:良いお祭りだったね! 

 マンダリナ:ああ、そうだな!


 睡眠欲に襲われながらも夫婦の会話は別腹のようで、どちらからともなく聖桜祭の感想を話すだけのチャットがしばらく続いた所で、一度チャットが途切れる。


 そして、途切れたチャットを再開したのはマンダリナ。


 マンダリナ:でも、ごめんな

 セレナ:ごめんって、何が?

 マンダリナ:絶対に勝とうって約束したのに、結局あっさり負けちゃったから。なんだかセレナに申し訳なかったなって。折角応援して貰ったのに、不甲斐ないと言うか


 運だけの勝負に持ち込めば勝てる。


 この身に宿る天運は決して誰にも負けはしない。


「(そう思い、選んだ競技だったのですが。驕っていたのでしょう。視野の広さも、覚悟も実力も、天運でさえ……。私は……まだ、何一つとして、あの男に届かないのですね。どうして勝てないのですか、どうして、どうして──)」


 久しく会っていなかったセレナの優しさに触れたせいか。近衛に敗北した直後からずっと堪えていた悔しさが身体の内から溢れ出した事で、鹿謳院の視界がジワリと滲んでしまう。


 セレナ:そんな事ないよ、ダリちゃん。勝てなかったら勝てるまで頑張ろうよ! それに私もダリちゃんに絶対勝とうとか言っておいてあっさり負けちゃったから、一緒だよ一緒。ね?

 マンダリナ:そっかー。セレナも負けちゃったのか

 セレナ:うん。負けちゃった。勝てると思ったんだけどなあ


 保角時恵こと近衛一鉄には、聖桜生徒連合が総出で勝負を仕掛けていた。


 そう仕向ける事で、多少なりとも消耗させた相手であれば勝てる。


「(そう思っていたのだがな。結局、兄上を倒す事は出来なかった。最後に橘が勝利を収めてくれなければ、統苑会も敗北していた。全くもって情けない話だ。だが──)」


 セレナ:だから、次は絶対に勝とうね、ダリちゃん!

 マンダリナ:そうだな。次に戦う時は勝てるように頑張ろうな


 一度や二度の敗北で近衛鋼鉄が折れるはずもなく。


 セレナの言葉で自分を奮起させれば、それを見たマンダリナの中の人もまた、瞳に浮かぶ悔しさをハンカチでそっとふき取って力強い笑みを浮かべた。


 鹿謳院氷美佳と言う器を動かす強力な燃料は身体の内より絶えず湧き上がるので、悔しがるのはここでおしまい。


 セレナ:あ、0時過ぎた!

 マンダリナ:うわ、マジだ。こんなに遅くまでログインしてる初めてだわw

 セレナ:私もそうかもw でも、すごいね! 0時なると空中庭園の噴水がライトアップされて、音楽まで流れるんだね

 マンダリナ:あー、一応現実時間で五回だっけ? 0時、7時、12時、15時、21時にこんな風になるらしいな

 セレナ:21時かー。私もうその時間だいたい落ちちゃってるから知らなかったw

 マンダリナ:逆に15時とかってなると何処かダンジョン潜ってたりするしなw

 セレナ:うんうんw


 翌日が休みだからか、或いは別の理由があるのか。


 いつもよりもずっと遅くまでログインしている二人がチャットを継続していれば、空中庭園のあちらこちらで、ダンスを始める天使がチラホラと現れ始めた。


 人気のデートスポットでもあって、スクリーンショット映えもすると言う事で、ライトアップされた空中庭園の噴水周辺ではカップル天使がよくダンスをしている。


 それを知っていたから、セレナとマンダリナは遅くまでログインしていたのかもしれない。


 セレナ:私達もダンスしよっか!

 マンダリナ:俺らもダンスするかー!

 セレナ:あ、同じこと考えてたみたいだねw

 マンダリナ:みたいだな、通りでお互い遅くまで残ってたわけだw


 そして、後夜祭でダンスが始まった時に鹿謳院と近衛が言えなかった言葉を、セレナとマンダリナが代わりに口にすれば、二人仲良くベンチから立ち上がると噴水前に移動した。


 セレナ:改めて、聖桜祭お疲れさまでした、ダリちゃん

 マンダリナ:お疲れさま、セレナ

 セレナ:明日はお休みだから、しっかり休むんだよ

 マンダリナ:セレナの方こそな? 朝からログインしようとか考えてるんじゃないのか?

 セレナ:バレてた!

 マンダリナ:バレバレだってのw


 くるりくるりと回る、セレナとマンダリの可愛らしいダンスを見た鹿謳院と近衛は、ゲーム画面に流れる日常風景を目の当たりにした所で、ようやく聖桜祭が終わったのだと実感。


 柔らかな笑みを浮かべながら、会えなかった時間を取り戻す様に取り留めのないチャットを重ねた。

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