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自己紹介

ご覧いただきありがとうございます。

適性検査の翌日、クラス配属が発表された。


端末に通知が届いた時、私は寝台の端に座ったまま、しばらく画面を見つめていた。


一年C組。


それが、私の所属クラスらしい。


C組。


良いのか悪いのか、よくわからない。


A組ではないので、たぶん目立ちすぎない。


でも、一番下という感じでもない。


つまり、普通。


普通かもしれない。


私は少しだけほっとした。


そのすぐ後に、扉が控えめに叩かれた。


「はい」


扉を開けると、セシリア様が立っていた。


今日も制服をきちんと着ている。


髪も整っていて、朝からちゃんとしている人は朝からちゃんとしているのだな、と思った。


私はまだ少し眠そうだったので、少しだけ申し訳ない。


「おはようございます、プラット様」


「おはようございます、ヒースロー様」


「クラス配属は確認されましたか?」


「あ、はい。一年C組でした」


セシリア様の顔が、ぱっと明るくなった。


「私もです」


「本当ですか?」


思わず声が大きくなった。


慌てて口を押さえる。


廊下で大きな声を出すと目立つ。


でも、嬉しかった。


本当に。


「はい。同じクラスですね」


「よかったです」


言ってから、少し素直すぎたかもしれないと思った。


でもセシリア様は、柔らかく微笑んでくれた。


「私も心強いです」


心強い。


私がいて、セシリア様が心強い。


そんなことがあるのだろうか。


たぶん、社交辞令かもしれない。


でも、嬉しいものは嬉しい。


私は制服の袖を整えながら、なるべく落ち着いてうなずいた。


「今日もよろしくお願いいたします、ヒースロー様」


「こちらこそ、プラット様」


朝から少し良いことがあった。


今日は大丈夫かもしれない。


そう思った。


思ってしまった。


こういう時ほど、油断してはいけないのに。


朝食を終えたあと、私たちは一年C組の講義室へ向かった。


講義室は、昨日説明を受けた棟の二階にあった。


扉の上には、きれいな文字で一年C組と表示されている。


中に入ると、すでに何人かの生徒がいた。


席は決められていないらしい。


私はすぐに、後ろの端の席を見た。


目立たない。


壁に近い。


窓からも遠すぎない。


先生からも見えにくい。


とても良い席だと思った。


できれば、あそこに座りたい。


でもセシリア様は、自然に前方の席へ向かった。


前から二列目。


しかも中央寄り。


かなり強い席だ。


私は一瞬だけ後ろを見た。


目立たない席が、私を呼んでいる気がした。


でもセシリア様は前へ進んでいる。


同じクラスでよかったと思ったのに、最初から離れるのも少し寂しい。


寂しい。


そんなことを思って、自分で少し驚いた。


私はトランクではない。


誰かの後ろについていく荷物でもない。


でも、セシリア様の隣なら少し安心できる。


それは本当だった。


私は小さく息を吸って、セシリア様の隣に座った。


前方の席。


目立つ。


でも、セシリア様の隣。


差し引きで、たぶん大丈夫。


たぶん。


「こちらでよろしかったですか?」


セシリア様が少し心配そうに聞いた。


「はい。大丈夫です」


いつもの言葉が出た。


今回は半分くらい本当だった。


私は席に座り、講義室を見渡した。


まだ全員は揃っていない。


それでも、いろいろな人がいた。


貴族らしい令息令嬢。


緊張している人。


もう仲間同士で話している人。


制服姿なのに、なぜか全員違って見える。


元気そうな男子生徒が、入口近くで誰かに話しかけていた。


背筋は伸びているけれど、きっちりしすぎていない。


笑顔が明るい。


身分の高さを見せるというより、人との距離を詰めるのが上手そうな人だった。


「昨日の適性検査、あれ絶対むずかったよな。俺、途中で赤と黄色が踊り始めたんだけど」


彼がそう言うと、近くの女子生徒が呆れた顔をした。


少し赤みを帯びた髪の、活発そうな女の子だ。


目が明るくて、よく動く。


「踊ってない。トムが慌てただけでしょ」


「いや、あれは踊ってた。絶対」


「検査用の点が踊るわけないでしょ」


「ミリア、世の中にはな、まだ解明されてないことがたくさんあるんだぞ」


「それを自分の失敗に使わない」


二人の会話はテンポがよかった。


仲が良いのだと思う。


少しうらやましい。


あんなふうに自然に話せる相手がいるのは、きっと心強い。


「グラマン商会のご子息と、サーブさんですね」


セシリア様が小さく教えてくれた。


「グラマン商会……」


「王都でも大きな商会です。彼は選抜生だそうです」


選抜生。


平民で、難しい試験を突破して入学した人たち。


貴族は家の書類で入れる。


私はそうだった。


もちろん、家格の低い貴族には貴族の困りごともある。


でも選抜生は、自分の力でここにいる。


すごい。


私は元気そうな男子生徒をもう一度見た。


トム。


たぶん、トム=グラマン。


その隣の女の子が、ミリア=サーブ。


二人とも、私よりずっとここに馴染んでいるように見えた。


その時、講義室の空気が変わった。


ざわめきが少しだけ小さくなる。


入口の方へ、視線が集まる。


私もつられて見た。


シュヴァルベ様が入ってきた。


その後ろに、優雅な雰囲気の女の子がもう一人。


二人とも、ただ歩いているだけなのに、講義室の中が整えられていくみたいだった。


シュヴァルベ様は、今日も背筋がまっすぐだった。


淡い金色の髪。


穏やかな表情。


でも、その奥に揺れない芯がある。


昨日の壇上で見た姿と同じ。


いや、近くで見ると、もっとすごい。


人は本当に、こんなにきれいに立てるのだろうか。


私は思わず見てしまった。


その瞬間。


目が合った。


気がした。


本当に合ったかは、わからない。


一瞬だった。


シュヴァルベ様の視線が、こちらを通っただけかもしれない。


でも、胸がきゅっとなった。


私は慌てて視線を落とした。


机の木目を見る。


きれいな木目。


床も抜けない。


机も壊れていない。


大丈夫。


私は今、何もしていない。


見られる理由もない。


そう言い聞かせた。


でも、昨日の背中に残った視線の感触を、少し思い出した。


あれは誰だったのだろう。


気のせい。


きっと気のせい。


そう思うことにした。


一緒に入ってきた女の子はシュヴァルベ様の少し後ろに立ち、教室を見渡した。


その目は優雅だったけれど、鋭かった。


私の方を見たかどうかは、わからない。


見ていないと思いたい。


二人は前方の席へ向かった。


当然のように、一番よく見える場所に座る。


そこが似合う人たちだった。


鐘の音が鳴り、少しして指導教官が入ってきた。


背の高い男性だった。


黒に近い灰色の教官服を着ている。


髪は短く、目つきは鋭い。


けれど、怒っているわけではなさそうだった。


ただ、見逃さない人の目だ。


教卓に立つと、講義室はすぐに静かになった。


「一年C組を担当する、アルトゥール=セスナだ」


セスナ教官。


名前を聞いて、私は端末に急いで記録した。


「まず最初に言っておく。この学園では、身分によって訓練内容を変えることはない。侯爵家であろうと、男爵家であろうと、平民選抜生であろうと、同じ基準で評価する」


講義室の空気が、少しだけ硬くなった。


「家の名が役に立つ場面はある。だが、訓練機の中で家名は操縦桿を握らない。魔力切れの時に爵位は呼吸を助けない。判断を誤った時、血筋は味方機を救わない」


私は息を呑んだ。


訓練機。


魔力切れ。


味方機。


言葉が重い。


「この場では全員を生徒として扱う。呼び方も苗字で統一する。ユンカース、ハインケル、ヒースロー、プラット、グラマン、サーブ。例外はない」


自分の名前が出て、背筋が勝手に伸びた。


プラット。


教官は私をそう呼ぶ。


様でもなく、さんでもない。


苗字だけ。


少し変な感じだった。


でも、嫌ではなかった。


「では、まず自己紹介だ。名前、出身、簡単な抱負。長く話す必要はない。順に立て」


自己紹介。


来た。


ついに来てしまった。


私は手を膝の上で握った。


何を言えばいいのだろう。


名前。


出身。


抱負。


簡単。


簡単とは。


普通に話せばいい。


でも普通がわからない。


目立たず、短く。


でも短すぎると失礼かもしれない。


領地のこと。


家のこと。


プラット星系は資源が少なくて貧しいです、はだめ。


お姉さまたちのスペアでした、絶対だめ。


戦いは嫌いです。


戦争は嫌いです。


軍人にはなりたくありません。


これもだめ。


マーリン=ロイスの記憶があります。


これは、だめどころではない。


言ったら終わる。


何が終わるのかはわからないけれど、たぶん私の平穏が終わる。


私は他の人を参考にすることにした。


最初に立ったのは、トムだった。


「トム=グラマンです。王都のグラマン商会から来ました。選抜生として入ったからには、貴族の皆様に負けないよう頑張ります。よろしくお願いします」


明るい声だった。


少し軽い。


でも、不思議と嫌な感じはしない。


むしろ、空気が少し柔らかくなった。


「グラマン。次」


セスナ教官が淡々と言う。


次に立ったのは、ミリアだった。


「ミリア=サーブです。王都出身です。選抜生として、学べるものは全部学んでいきたいと思っています。よろしくお願いします」


はきはきした声。


元気だけれど、雑ではない。


トムが小さく親指を立てて、ミリアに肘で小突かれていた。


仲が良い。


やっぱりうらやましい。


次に、シュヴァルベ様と一緒に来た女の子が立った。


「ルイーゼ=ハインケルです。ハインケル侯爵家の者として、この学園でも恥じぬ成果を残したいと思っております。皆様、よろしくお願いいたします」


声も姿勢も綺麗だった。


自信があって、華やか。


私は少し背中が縮む。


ハインケル侯爵家。


名前だけで強い。


続いて、シュヴァルベ様が立った。


講義室の空気が、また少し変わった。


「シュヴァルベ=ユンカースです。ユンカースの名を背負う者として、また王国に仕える者を目指す一人として、皆さんと共に学び、成長していきたいと思います。よろしくお願いいたします」


短い。


でも、重さがあった。


押しつける重さではない。


支える重さ。


さすが、と誰かが小さく呟いた。


私もそう思った。


思ったけれど、同時に少しだけ苦しくなった。


あんなふうに正しく立つのは、どんな気持ちなのだろう。


私には、たぶん無理だ。


その後も、何人かの自己紹介が続いた。


伯爵家。


子爵家。


男爵家。


選抜生。


領地の産業を話す人。


家の軍歴を話す人。


人形使いを目指すと堂々と言う人。


王国の役に立ちたいと言う人。


みんな、それぞれ立派だった。


立派な自己紹介が続くほど、私の番が近づいてくる。


逃げたい。


でも逃げたら目立つ。


逃げなくても目立つかもしれない。


どうしよう。


セシリア様が立った。


「セシリア=ヒースローです。ヒースロー伯爵家より参りました。まだ至らぬ点も多いですが、皆様と共に学び、少しずつ成長できればと思っております。よろしくお願いいたします」


穏やかで、丁寧。


セシリア様らしい自己紹介だった。


周りの空気も柔らかい。


私は心の中で拍手した。


次。


私だ。


「プラット」


セスナ教官の声がした。


私は立ち上がった。


椅子が少し鳴った。


大丈夫。


変な音ではない。


普通の椅子の音。


私は前を向いた。


視線が集まる。


たくさんの目。


胸がきゅっとなる。


息を吸う。


名前。


出身。


抱負。


短く。


普通に。


「ローレッタ=プラットです」


声は出た。


少し小さいけれど、聞こえるはず。


「プラット星系から参りました。えっと……プラットは、王都から少し離れた静かな星系です」


少し離れた。


かなり離れている。


静かな。


資源がない、とも言える。


でも嘘ではない。


「この学園で、皆様のご迷惑にならないよう、しっかり学びたいと思います。よろしくお願いいたします」


私は頭を下げた。


言えた。


たぶん。


短い。


普通。


無難。


そう思った瞬間、どこかから小さな囁きが聞こえた。


「プラット? どこ?」


胸が、少しだけ冷えた。


やっぱり。


知られていない。


そりゃそうだ。


資源もない。


交易路からも外れている。


聞いたことがなくても当然だ。


気にしない。


気にしない。


私は顔を上げた。


その時、少し離れた席のシュヴァルベ様と目が合った。


今度は、たぶん本当に。


シュヴァルベ様は、まっすぐこちらを見ていた。


責めるような目ではない。


笑っているわけでもない。


でも、何かを探しているような目だった。


私は慌てて視線を外した。


心臓が変な音を立てる。


何か失敗しただろうか。


プラット星系の説明が変だった?


ご迷惑にならないよう、は低すぎた?


身の程を弁えすぎた?


いや、身の程は弁えなければならない。


私は頭が少し混乱したまま、席に戻った。


椅子に座る。


膝の上で手を握る。


ちゃんとできただろうか。


無難だっただろうか。


少なくとも、戦争が嫌いですとは言わなかった。


軍人になりたくありませんとも言わなかった。


スペアですとも、マーリンの記憶がありますとも言っていない。


なら大丈夫。


無事に終わった。


私はそう思うことにした。



自己紹介は、そこで全員分が終わった。


自己紹介の後、セスナ教官は今後の予定を説明した。


通常授業。


基礎体力訓練。


魔力制御。


戦術基礎。


宇宙軍史。


人形構造学。


安全講習。


そして、段階的な人形操縦訓練。


私は端末に予定を記録しながら、できるだけ顔に出さないようにした。


人形操縦訓練。


やっぱりある。


当然だ。


ここは宇宙軍士官学校なのだから。


でも、文字で見ても、声で聞いても、胸の奥が少し冷える。


「最初の実技は体力測定だ」


セスナ教官が言った。


「魔力があっても、身体がついてこなければ意味がない。宇宙空間での機動、重力下での訓練、耐G負荷。すべて基礎体力が前提になる。今日の午後は、訓練服に着替えて集合すること」


体力測定。


私は少しだけ安心した。


魔力よりはまし。


人形よりはまし。


ただ、怪我の後から少し体力は落ちている。


肋骨は治った。


右腕も左足も動く。


でも、全力で走ったらどうなるだろう。


目立たない程度にできればいい。


低すぎてもだめ。


高すぎてもだめ。


ほどほど。


普通。


また普通だ。


普通は難しい。


「注意事項は端末にも送信する。遅刻、無断欠席、装備不備は評価に響く。以上だ」


セスナ教官は端末を閉じた。


「午後の体力測定まで、各自準備しておけ」


そう言って、教官は講義室を出ていった。


扉が閉まる。


その瞬間、講義室の空気がほんの少し柔らかくなった。


みんな、少しずつ息を吐いたようだった。


私もほっとした。


教官が怖かったわけではない。


でも、見られている感じがして、ずっと背筋が伸びていた。


背筋も疲れる。


人間の背中は、たぶんずっとまっすぐでいるようにはできていない。


私は小さく肩の力を抜いた。


「プラット様、お疲れさまでした」


セシリア様が小さく声をかけてくれた。


「ヒースロー様も。自己紹介、とても素敵でした」


「ありがとうございます。プラット様も、落ち着いていらっしゃいましたよ」


「本当ですか?」


「ええ」


セシリア様がうなずいてくれたので、少しだけ安心した。


無難にできた。


たぶん。


その時、近くから明るい声がした。


「ヒースロー様、プラット様、ちょっといいですか?」


振り向くと、トムが立っていた。


隣にはミリアもいる。


「あ、はい」


私は少し慌てた。


選抜生の二人。


さっき見ていた人たちだ。


実際に近くに来ると、トムはやっぱり明るい雰囲気だった。


ミリアはその横で、少し呆れたように彼を見ている。


「俺、トム=グラマンです。自己紹介でも言ったけど、グラマン商会の次男で、選抜生です。こっちはミリア」


「ミリア=サーブです。よろしくお願いします、ヒースロー様、プラット様」


ミリアは元気だけれど、礼儀はちゃんとしていた。


私は慌てて頭を下げた。


「ローレッタ=プラットです。よろしくお願いいたします、グラマンさん、サーブさん」


「セシリア=ヒースローです。よろしくお願いいたします、グラマンさん、サーブさん」


セシリア様も丁寧に挨拶する。


トムはにっと笑った。


「さっきプラット様、プラット星系から来たって言ってましたよね。俺、商会の帳簿で見たことあります。たしか、古い交易補給線の近くですよね?」


「えっ」


知っている人がいた。


私は思わず顔を上げた。


「はい。今はあまり使われていない航路ですが……たぶん、そこです」


「やっぱり。うちの親父が昔、古い航路図を見ながらぼやいてました。あそこをもう少し整備すれば、小型貨物の中継には使えるのにって」


プラット星系を、そんなふうに言う人を初めて見た。


何もない場所。


貧しい場所。


忘れられた場所。


そう思っていたのに。


使えるかもしれない、という言い方。


胸の奥が、少しだけ温かくなった。


「グラマンさんは、すごいですね。そんなことまで覚えているなんて」


「いや、親父の愚痴が長いだけで」


「トムは商売の話になると、わりと真面目なんです」


ミリアが言った。


「わりとって何だよ、ミリア」


「そのままの意味」


二人のやり取りに、私は少し笑いそうになった。


笑っていいのか迷ったけれど、セシリア様も微笑んでいたので、少しだけ笑った。


こういう会話は、思っていたより怖くない。


そう思った、その時だった。


講義室の空気が、もう一度変わった。


さっきより静かに。


でも、はっきりと。


背中に視線が集まるような感覚。


私はトムたちの向こうを見た。


シュヴァルベ様が立っていた。


その後ろに、ルイーゼ様。


周囲の生徒たちが、少し距離を取る。


大貴族の令嬢。


新入生代表。


ユンカース侯爵家のシュヴァルベ様。


その人が、こちらへ向かって歩いてくる。


え。


こちら?


まさか。


私は一瞬、セシリア様を見た。


セシリア様も少し驚いた顔をしている。


トムは目を丸くして、ミリアはすぐに姿勢を正した。


シュヴァルベ様は私たちの前で足を止めた。


近い。


思っていたより近い。


淡い金色の髪が、講義室の光を受けて柔らかく光っている。


綺麗。


そう思う前に、胸がきゅっとなった。


「プラットさん。少しいいかしら?」


名前を呼ばれた。


私の。


どうして。


何かした?


何かしてしまった?


自己紹介?


昨日の検査?


いや、検査のことは知らないはず。


たぶん。


私は椅子から飛び上がるように立った。


「はい!」


声が大きすぎた。


講義室の何人かがこちらを見る。


目立った。


今、確実に目立った。


私は慌てて頭を下げる。


「は、はい。ユンカース様」


顔を上げると、そこにいたのは、やっぱりシュヴァルベ様だった。


穏やかな表情。


けれど、その目はまっすぐ私を見ている。


逃げ場のないくらい、まっすぐに。


私は自分の手を握った。


指先が、なぜか少し震えていた。

ここまでお読みいただき有り難うございました。


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