摸擬戦の配属先
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「いいえ、ローレッタさん、それは間違っていると思うわ。」
「シュヴァルベ様・・・」
声の主はシュヴァルベ=ユンカースだった。
私を見下ろすシュヴァルベ様は腕を組み仁王立ち。そして心なしか私を睨んでいるような・・・。
ちょっと怖い。だから、すぐに起立しよう!私はすぐに立ち上がって軽く頭を下げる。
「ローレッタさんは先ほど軍に入らないとおっしゃられました。私はそれが間違っていない、とは思いません。その考えは間違っています。」
シュヴァルベ様は裁判所で被告人尋問をする検察官のように一人起立した私の前を行ったり来たりしながら話す。ドラマでよく見るあれ。
「なぜなら、この学園のすべては貴重な血税で賄われています。その血税を使っておきながら、国に、納税者である民に奉仕しない、軍に入らない。適当に卒業すればいいとは。王国の貴族として、その言葉は聞き捨てなりません。」
タイミングよく、そうよ。そうよ。とシュヴァルベ様の親衛隊が騒ぎ立てる。
(ううぅ..耳に痛いです。ごめんなさい。ごめんなさい。家がまともに税金払ってなくてごめんなさい。お父様が授業料がタダなことに飛びついて入学してごめんさい。)
「聞くところによるとあなたはまだ、どこの隊にも所属していないそうね。」
(はいぃ...そうです。どこにも所属しておりません。」
(あー、この展開...嫌な予感がします...)
「ちょうどいいわ、その間違った認識をたたき直してあげます。ローレッタさん。今度の摸擬戦では私の隊に入りなさい。これはクラス委員、いいえ、ユンカース隊の隊長として決定事項とします。」
「えぇ...」(げんなり↓)
シュヴァルベ様の率いるユンカース隊は優勝筆頭候補である。
それもそのはず、シュヴァルベ様以下、15名、内5名はいずれも高位貴族の子息子女、しかも彼らは自分たちの専用機を学園に持ち込んでいるのだ。
調整された専用機と練習機の性能差は段違いだ。その差は話にならないほど。
学園の授業で持ち込みがOKなのかって?はい。OKです。
それに、他の10名も成績上位者ばかりである。
5名の専用機持ちと10名のエリートで構成されているのだから、当然、ユンカース隊の優勝は間違いないだろう。
わー、そんな隊に入れるなんてー、すてきー。成績安泰だわー。(棒)
だからといって成績が保障されるかというとそういうわけでもない。
問題は摸擬戦の内容が人形の性能や個人の能力によって変えられるということである。
要するに、何が言いたいかというとユンカース隊に課せられる摸擬戦の内容が激ムズってことだ。
そういうことだから、私はギリギリまで粘って、難易度がそこまで高くない、適当な隊に入ろうと考えていたのだが。その作戦は見事に失敗した。さっさとどこかに入っておけばよかったのだ。
一番入りたくないと思っていたところに入ることになってしまった。
「それでは、来週から放課後に練習を行いますから、そのつもりで。」
シュヴァルベ様は一方的に宣言すると親衛隊を引き連れて去っていった。
まるで竜巻のように。
「やったじゃん!ローレ!ユンカース隊は一番人気だよ!今回の摸擬戦の優勝筆頭候補なんだから!」
ミリアが自分のことのように喜んでくれる。でもね。
「えっ、うん...そうだね。ありがとう...ミリア。」(げんなり↓)
ここまでお読みいただき有り難うございました。
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