友達
ご覧いただきありがとうございます。
学園に入学して数週間が過ぎた。
クラス内にはすでにいくつか派閥が出来て、定着しつつある。
私が所属するのは、当然。
「あぁ...!また、負けちゃったよ!」
「ローレは本当にこの手の勝負に弱いなぁ。昼飯ゲットー!いただきます。」
選抜生枠だ。
「負けた...うぅ...私、今、いろいろとピンチなんだけど...」
「あはは、冗談だよ。ローレに奢ってもらおうなんて考えてないからさ。」
選抜制のトム=グラマンは私の肩を優しくぽんっと叩く。
トムは王国でも指折りの豪商の次男坊である。
「トム、お前はほんとにローレに甘いねぇ。なに?ローレの事、好きなの?」
「はぁ!ば、馬鹿なこというなよ!ローレは貴族だぞ!俺みたいなのと、結婚...できるかよ!」
「結婚って俺はそこまで言ってないぞ?」
トムは顔を真っ赤にしてからかわれた男子生徒に噛みついた。
私はトムが言ったことを考えてみた。
「結婚かぁ・・・。」
「そいえばさ、ローレは今度の人形の模擬戦、どの隊に入るの?」
でも、すぐに中断。
「うん?まだ決めてないよ?」
「呆れた!?もう3ヶ月しかないんだよ?早く決めないと、条件のいい隊の枠が埋まっちゃうよ?」
そう言って、肩をすくめたのは、選抜生のミリア=サーブ。
友達思いのいい子。ほんとにいい子。大好き。変な意味じゃないよ
「ローレ、大丈夫なの?そんな適当で、家の人に何か言われない?」
私はチューチュー吸っていた、1個100テルンのパックジュースを飲み下しながら答える。
「んく...はぁ。うまうま。家は大丈夫だよ。この学園に入る前に軍人にはなりたくないって言ってあるし、お父様からはとりあえず卒業すればいいって言われてるから。」
家が貧乏だから学費を払ってもらえなくて、無料で通えるここに入れられたことは黙っておく。
「適当だなぁ。でも、軍に入らないのか?この学園に入学したのに?それじゃ、ローレは卒業したらどうするんだよ?家を継ぐのか?」
「ううん、私は三女だから、家は継げないよ。だから、卒業したらお父様が決めた人と結婚するの。えっと、...生まれた時から...そう決まってるんだよ。そういう約束だから。」
私はすこし端折ったけど、嘘は言っていない。と思う。
そこまで私が言ってから、椅子を鳴らして誰かが立ち上がった。
「なにそれ・・・生まれた時からって、いつの時代だよ。そんなのないよ。ローレ!そんなのだめだよ!間違ってるよ!女の子は、好きな人と一緒にならなきゃ!」
立ち上がったミリアはまるで自分の事のように私に訴えてくれる。その場にいた他の皆もミリアに賛成のようだ。
そこに、トムが立ち上がる。
「おい、やめろ。ローレは貴族だぞ?俺たちがどうこう言っていい身分の人間じゃないんだよ。」
身分の人間...
私はそんなこと生まれてから一度だって思ったことはない。だってみんな友達、でしょ?同じ人間だよね?
私のいったいどこが皆と違うのだろうか。貴族だから?でもすごく貧乏だ。トムよりもずっと。
「ありがとう、みんな、でも違うんだよ。私はそれが間違ってるとは思ってないんだ。...戦争で人を殺すよりは、ずっといいよ...。」
最後のはみんなには聞こえない声量で言った。そこに。
「いいえ、ローレッタさん、それは間違っていると思うわ。」
「えっ?」
喧騒とした教室に凛とした声が響き渡った。
ここまでお読みいただき有り難うございました。
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