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英雄にとっての「糸」

ご覧いただきありがとうございます。

評価、ブックマークしていただきありがとうございます。


しばらく立て込んでおりまして更新が滞っております。申し訳ありません。

(逃げ出したい――おねがい、助けて――)


心の底に沈めていた感情を意識した瞬間、それは堰を切ったように一気に押し寄せた。


「……ッ」


感情の波に呑まれまいと、マーリンは思わず目をきつく閉じ、指先に力を込めた。

それでも、震える指先が、心の限界を物語っていた。


そのとき。


「――それは、少々違うのではありませんか?」


落ち着いた声が、目の前から静かに響いた。

決して大きな声ではなかった。けれど、静まり返った会場には、驚くほどはっきりと届いた。


マーリンがゆっくりと目を開けると、そこには――、庇うように立つ、大きな背中があった。

柔らかな声音。顔を見ずとも、それが誰なのか、マーリンにはすぐに分かった。


(ミーシャ……)


その名を、心の中でそっと呼んだ瞬間、マーリンの胸に、かすかな温もりが灯った。

胸の奥にしまい込んでいた記憶が、ふと蘇る。


それは、まだ幼かった頃のこと。

あの頃、ミハイルはいつも、マーリンの後ろをついてきた。

お転婆なマーリンが無茶をして叱られるたび、少し困ったように眉をひそめながらも、それでも、そっと手を差し伸べてくれた。

小さな背中で、黙って寄り添ってくれた。


けれど、いつの間にか、立場は逆になっていた。

気づけば、マーリンの方が、ミハイルの背中を追いかけていた。

その歩幅に追いつきたくて、その視線の先に、自分もいたくて。


それは、離れ離れになってからも、そして、学園で再会してからも――あのときから、何ひとつ変わっていない。


その背中を見つめるだけで、胸の奥に、あたたかくて、少しだけ痛いものが灯る。

それが何かを、マーリンはもう知っている。


「無礼をお許しください、アンネリーゼ嬢。ですが、今は皆が楽しむ時間なのでしょう?」


その声とともに、背中がわずかに動いた。


「ならば、マーリンにも――この場を楽しむ権利があるはずではないでしょうか?」


そして。


「それに、マーリンはこれまで、誰よりも真摯にその務めを果たしてきました。

あなたの言葉は――はっきり申し上げて、ただ彼女を貶めるためのものにしか聞こえません」


その言葉で会場の主導権が、静かに移った。

張りつめていた空気がわずかに揺らぎ、かすかなざわめきが広がっていく。


マーリンは、思わず小さくその名を呼んだ。


「……ミーシャ……」


その声に応えるように、ミハイルがふと振り返る。

そして、ほんのわずかに頷いた。


その柔らかな眼差しは、言葉よりも確かに、マーリンに伝えていた。


(よく耐えた。あとは、まかせろ。)


その瞬間、胸に押し寄せていた感情の波が、ふっとほどけて引いていった。

けれど、すぐにマーリンは息を呑んだ。


ミハイルのルフトハンザ家は男爵家。

末席とはいえ公爵家であるフェアチャイルド家と比べれば、その力は到底及ばない。そして、相手はアンネリーゼである。


それでも――、マーリンの目の前に立つその背中は、微塵も怯むことがなかった。

その背中は、今のマーリンには、ひどく遠く、そして、どうしようもなく頼もしく見えた。



ミハイルは、マーリンにとっての()()()()()()だったのだ。



ミハイルの指摘に、アンネリーゼは一瞬だけ眉を動かしたが、すぐに余裕の笑みを浮かべた。


「貶める、ですって? まあ……そのように仰るとは。……ミハイル様は、私が()()()()()()をしているとでも?」


ミハイルは、静かに首を横に振った。


「弱い者いじめ? それは違います、アンネリーゼ嬢。……マーリンは、決して()()のではありません」


ミハイルの声は静かだったが、その響きには揺るぎがなかった。


「それに、報道の内容はすべて帝国最高評議会から正式に発されたものです。

それを()()()()()と断じるなど、あなたのような立場の方が口にしてよい言葉でしょうか?

公爵家のご令嬢であるあなたなら、よくご存じのはずです。……違いますか?」


その瞬間、アンネリーゼの手に握られた扇子が、かすかにミシリと音を立てた。


「それに、マーリンは先ほどから、何度も大丈夫だと申しています。それでも、なお納得いただけないと?」


ミハイルの視線は、まっすぐにアンネリーゼを射抜いていた。


その鋭さに、アンネリーゼはわずかに視線を逸らす。そして、小さく、誰にともなくつぶやいた。


「……ッ、興が削がれましたわ……」


けれど、すぐに顔を上げると、何事もなかったかのように微笑んだ。その笑みには、冷たい艶が滲んでいた。


「ふふ……そうですか。そうですわね。爵位に似合わず、大変に優秀でいらっしゃるミハイル様がそうおっしゃるのなら、きっと、そうなのでしょう。それにしても……マーリン、ね。ふふ……」


アンネリーゼは肩をすくめ、芝居がかった仕草で話題を切り替えた。


「まあ、これくらいにしておきましょう。……そんなことより、今はブライアン様にご用があって参ったのですもの」


くるりと優雅に身を翻すと、今度はブライアンに向かって微笑みかける。


「ブライアン様。最初のダンスは、もうお済ませになったのでしょう? であれば、次の曲は――ぜひ、私と踊ってくださいまし。よろしいかしら?」


静かに成り行きを見守っていたブライアンは、変わらぬ穏やかな笑みを浮かべて応じた。


「ああ、もちろん。喜んで」


その言葉に、アンネリーゼは嬉しそうに表情を綻ばせる。

ブライアンはミハイルに視線を移し、やわらかく告げた。


「ミハイル、すまないが――マーリン嬢を頼む。どうやら、少しばかり会場の空気に当てられてしまったようだからね」


「……わかった」


ミハイルは短くそう返すと、心なしか鋭い視線をブライアンに向けた。そのまなざしには、言葉にしない問いが宿っていた。


しかし、ブライアンは涼しい顔のまま、アンネリーゼに向き直ると、何事もなかったかのように手を差し出した。


アンネリーゼは、優雅な所作でその手を取り、微笑みを浮かべながらブライアンに手を引かれる。

ダンスホールへと向かう途中、アンネリーゼは横目でマーリンを見やると。


「ごめんあそばせ、マーリン様、ミハイル様。……ふふっ」


その声音には、勝者の余韻が滲んでいた。マーリンはただ黙ってそれを見送った。


二人がダンスの輪に加わるのを見届けたミハイルは、すぐに周囲へ向けてよく通る声で告げた。


「皆様、申し訳ありませんが――マーリン嬢も、この会を楽しみたいと願っておられます。皆さまが興奮されるのも理解できますが、どうか、少しだけご配慮を」


その言葉に、生徒たちは次々とダンスの輪へと加わっていった。

場の空気が和らいだのを見届けてから、ミハイルはそっとマーリンの方へと身を寄せ、小さく、けれど確かな声で囁いた。


「大丈夫か? マーリン」


マーリンは、いまだに胸を打つ動揺を悟られぬよう、そっと微笑んでみせた。


「……すまない。大勢の前で、君を呼び捨てにしてしまった」


「いいの。そんなこと、気にしないで。……助けてくれて、ありがとう」


「いや、構わない。……それより、少しここを出よう。いいかい?」


「ええ。私も、もう……あまり、ここには居たくないわ……」


マーリンがそっと頷くのを確認すると、ミハイルは優しくマーリンの手を取り、その身を包み込むように、そっと腰に手を添えた。


その温もりが、少しずつマーリンの心のざわめきを鎮めていく。けれど、胸の奥に残る痛みだけは、まだ消えていなかった。


そして二人は、足早に――、光に満ちあふれる会場を、静かに抜け出していった。



「……あそこに座ろう。少しは気分が楽になる」


ミハイルが示したのは、会場から少し離れたジャルダン(庭園)だった。


遠くからかすかに聞こえる音楽と、青白いスポットライトに照らされた噴水が、夜の静けさの中に、幻想的な雰囲気を醸し出している。

響く水音が、マーリンの胸の奥を、そっと撫でていく。


二人は噴水の淵に並んで腰を下ろし、しばらくのあいだ、言葉もなく光を反射する水面を見つめていた。緩やかに波打つその揺らぎに、マーリンの心も少しずつほどけていく。


やがて、ミハイルが静かに口を開いた。


「……落ち着いたか?」


「うん……」


「……あの性悪――いや、アンネリーゼのことはともかく。 いったいどうしたんだ? 急に、萎れた花みたいになってたが」


「……少し、会場の雰囲気に当てられただけよ」


そう言いながら、ミハイルに微笑み返したマーリンは水面にそっと指先をくぐらせた。透き通る水をすくい上げると、指の隙間から、さらさらと零れ落ちていく。

淡い光を受けてきらめいた水は、手のひらからこぼれ落ち、水面に触れた瞬間、静かに溶けて消えていった。


「……ブライアンか。何か、言われたんだろう?」


「……どうして、そう思うの?」


「中盤から、足運びがぎこちなかった。まるで、別人のようだった」


「そう? ……最近、踊る機会がなかったから……少し、なまったのかも」


ミハイルの視線が、ほんの一瞬だけ、マーリンの足元をかすめた。その気配に気づきながらも、マーリンは笑みを崩さなかった。まるで、何もなかったかのように。


「とてもそんなふうには見えなかったな。踊っているというより……踊らされているみたいだったよ」


マーリンは、きらきらと光を反射する水面に目を向けた。


ミハイルは知らない。 マーリンが、人形に乗って賊を撃退したことを。


「……そう」


マーリンの脳裏に、言葉にならないざわめきが広がる。

ミハイルなら、他の誰かに話すようなことはしないだろう。 けれど、もし――もし、万が一にも漏れたとしたら。


そのときは、きっと。ミハイルに、取り返しのつかない迷惑をかけてしまう。

それだけは、避けなければならない。


「……違うのか?」


顔を上げたマーリンの揺れる瞳に映ったのは、真剣な表情のミハイルだった。


言ってしまいたかった。 すべてを、打ち明けてしまいたかった。


けれど、喉元まで出かかった言葉を、マーリンはぐっと飲み込む。

そして、ほんのわずかに目を伏せ、曖昧な笑みを浮かべた。


「……さあ、どうかしら」


「マーリン。君がどんなことをため込んでいるのか……話してほしい。どんな内容だろうと、他言しないと約束しよう」


「……ミーシャ……」


ミハイルの真剣な瞳に覗き込まれたマーリンは迷った末に……そっと視線を逸らした。


「その……そんな、かっこいい話じゃないの。 ギリギリだったの。あのときのことを思い出すたびに、今でも手が震えるくらい」


声が、少しだけかすれた。


「……あのときは、必死だったから。……疑いもしなかった。でも、帰りの船の中で……帰ってから、明かりの消えた部屋で眠るとき……ふとした瞬間に、思い出すの」


マーリンは、膝の上でそっと手を握りしめた。


「私のしたことは、正しかったのかなって。やりすぎたんじゃないかって。もっと冷静に判断できていれば、もっとうまくできたんじゃないかって……」


そして、ぽつりと落とした。


「……誰一人として、死なずに済んだのかなって」


「……死んだ?」


「ええ……そうよ。……誰も死ななかったなんて嘘よ。……頭目の男は、死んだわ……私が……」


噴水の青白い光を映したマーリンの瞳が、かすかに揺らいでいた。その手は、小さく震えている。

ミハイルは、そっとその手を包み込んだ。何も言わず、ただ静かに、その震えを受け止めるように。


「……ミーシャ?」


「少しだけ。 冷え切った君の手が、温まるまで」


マーリンは、そっとその手を握り返した。それだけで、胸の奥に張りついていた氷が、少しずつ溶けていくのがわかった。


どうして、こんなにも安心するのだろう。

どうして、こんなにも、涙が出そうになるのだろう。


……ねえ、ミーシャ。

私、いつから、あなたのことを——


その想いが言葉になる前に、夜風がそっと頬を撫でた。マーリンの表情に、ほんのりと色が差す。


マーリンは目を伏せたまま、そっと息を吐いた。それは、ずっと胸の奥に溜めていたものを、少しだけ手放すような吐息だった。


「……ねえ、ミーシャ」


「ん?」


「もし、私が……もう少し強かったら、あのとき、違う選択ができたのかな」


ミハイルは、しばらく黙っていた。夜風に揺れる噴水の音だけが、ふたりの間を満たしていた。

やがて、ミハイルは静かに口を開いた。


「……それでも、君は選んだ。誰かを守るために、前に出た。それなら、自信を持てばいい」


「……それが、間違っていたら?」


「そのときは、素直にそれを認めればいいだけさ。ただ認めて、次の糧にすればいい。同じことを、二度と繰り返さないようにね」


その言葉は、責めるでもなく、慰めるでもなく、ただまっすぐに、マーリンの心に届いた。


「たとえ、真実が嘘で塗り固められていたとしても、変わらないことがある。」


「それは?」


「君の行動で、多くの人が救われた。それは、誰にでもできることじゃない。 だから――胸を張って、誇ってもいいことじゃないかな」


握った手の温もりが、じんわりと胸の奥にまで染み込んでいく。ミハイルの瞳が、まっすぐにマーリンを見つめていた。


ミーシャの手は、あの頃と変わらない。

けれど、私の心は……あの頃より、ずっと、ずっと……


ふたりの手のあいだに、確かな温もりが宿る。


夜風がそっと吹き抜け、噴水の水面がわずかに揺れた。そのさざ波に、青白い光がきらめいて踊る。


マーリンは、そっと目を閉じた。胸の奥に張りついていた冷たいものが、少しずつほどけていくのを感じながら。


この手を、離したくない――


そんな想いが、心をかすめた。


でも、いつまでもその優しさに甘えているわけにはいかない。放したくないけど、離さなくてはならない。


マーリンは、そっと息を吸い込んだ。胸のつかえが、すっと楽になった気がして——、ミハイルの手をそっと放した。


「聞いてくれて、ありがとう。完全に忘れることなんてできないけど……少し、気持ちが楽になったわ」


ミハイルは、宙に浮いた自分の手をしばらく見つめ、それから静かに、握りしめた。


マーリンは、自分の手にそっと手を重ね、胸元で大切なものを包み込むように抱きしめると、嬉しそうに微笑んだ。


「それに、手も温まったわ。……ふふっ」


夜風がそっと吹き抜け、噴水の水音が、ふたりの沈黙をやさしく包み込む。


「戻りましょう」


立ち上がったマーリンに、ミハイルは声をかけた。


「……待って」


その声に、マーリンが足を止める。

マーリンを見上げるミハイルは、蒼白い光を受けながら、いつになく真剣な表情を向けていた。その瞳には、何かを決意したような、静かな光が宿っていた。

ゆっくりと立ち上がったミハイルは名前を呼んだ。


「……マーリン嬢」


マーリンの瞳が、そのまなざしをまっすぐに映し返す。


「……ミーシャ?」


冗談の余韻が消え、胸の奥に、静かなざわめきが広がっていく。マーリンは、思わず息を呑んだ。


「マーリン嬢。私と――最初の一曲ファーストダンスを踊っていただけますか?」


その言葉に、マーリンはきゅっと手を結んだ。胸の奥に、あたたかな火が灯るのを感じながら。


マーリンの表情が、ふわりと花開く。夜の光を受けて、その笑顔はまるで、長い冬を越えて咲いた春の花のように、やさしく、まぶしかった。


マーリンの答えはもちろん。


「喜んで!」



二人を照らすのは、弱々しい月明かりと、蒼白いスポットライトだけ。聞こえる音楽も、かすかに流れる旋律だけだった。

けれど、それだけで十分だった。


向かい合ったふたりは、ゆっくりとステップを踏む。自然と、ふたりの表情に笑みがこぼれていく。


「こうして一緒に踊るの、何年ぶりかしら……ミーシャ、覚えてる?」


「あぁ、ダンスの練習のとき、君はいつも僕の足を踏んで、講師に怒られてたことだろ?ははっ」


「ふふふっ、いいえ、それは違うわ。 脚を踏んでたのは、ミーシャのほうよ。私、何度も睨んだもの」


ミハイルは楽しそうに笑いながらマーリンの手を引いた。


「はははっ、冗談だよ。もちろん覚えてる。 君の睨みは、今でも夢に出てくるくらいだ」


勢い余った二人の足元が、ふいにもつれる。


「きゃっ!」


短く悲鳴を上げたマーリンを、ミハイルがとっさに抱きとめた。マーリンの身体が、ふわりとミハイルの腕の中に収まる。


ふたりの距離が、息づかいの分だけ近づいていた。


しばしの沈黙。聞こえるのは水音だけ。頬を染め、瞳を潤ませたマーリンが、ミハイルを見上げる。

その胸の奥で、何かがあふれ出しそうになっていた。


雰囲気に、心が揺れる。

言葉にすれば、すべてが変わってしまうかもしれない。

それでも、もう隠しきれなかった。


……ねえ、知ってる? ミーシャ。

私、あなたのことを——


「……マーリン」


ミハイルの声が、そっと彼女の言葉を遮った。その響きはやさしくて、けれど、どこか切なげだった。


「ミーシャ、あの、ね……私……ミーシャが――!」


言葉が、喉の奥で震える。

けれど、もう戻れない。この想いは、もう止められない。


マーリンが続く言葉を言いかけた、そのとき。


ドーン――

低く、腹の底に響く音とともに、夜空に色とりどりの花が咲いた。


驚いたふたりの距離が、ふいに離れる。互いに見つめ合ったまま、同時に空を仰いだ。

見上げた空には、鮮やかな光の花が、静かに揺れていた。


「……フー・ダルティフィス(花火)。今どき、珍しいな……」


ミハイルが、ぽつりとつぶやく。


ドーン――


夜空に、またひとつ。光の花が、ミハイルの瞳に映る。

大輪の花が、音とともに咲き、やがて静かに散っていく。 それは、あまりにも美しくて、あまりにも儚かった。


ミハイルは、にっこりと微笑み、手を差し出す。


「さあ、会もクライマックスだ。そろそろ戻ろう。 君があまり席を空けていると、また――探し回る奴が出てくるかもしれないからね」


「……そうね」


差し出されたミハイルの手のひらに、マーリンの手がそっと重なる。 その手は、まだ少しだけ震えていたけれど、温かかった。


ふたりは、色とりどりの光の下を並んで歩き出す。ミハイルを見上げたマーリンが、いたずらっぽい表情を浮かべて言った。


「でも、そうなったら――、今度はミーシャと一緒に、()に登ってやり過ごすことにするわ。ふふっ」


ミハイルが、思わず吹き出す。


「……俺まで一緒に登るのか?」


「もちろん!一緒に登るの、きっと楽しいわよ、ふふふっ!」


ふたりの笑い声が、夜のジャルダンにやさしく響く。

手を取り合ったマーリンとミハイルは、宝石箱のような、きらびやかな世界へと戻っていった。


夜空には、最後の花火が、静かに咲いていた。

ここまでお読みいただき有り難うございました。


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