DDS判定
ご覧いただきありがとうございます。
ルビ多めです。
DDSの初期判定は、私が思っていたより早く出た。
けれど、結果はすぐには知らされなかった。
第一小隊の端末に通知が入り、隊長であるシュヴァルベ様が確認した。
その時、シュヴァルベ様の表情が少しだけ変わった。
本当に少しだけ。
眉が動いたとか、唇が開いたとか、そういう大きな変化ではない。
ただ、目の奥が静かになった。
波が引いたみたいに。
私はそれを見て、嫌な予感がした。
こういう時の嫌な予感は、だいたい当たる。
できれば外れてほしい。
本当に。
「ユンカース」
セスナ教官が端末を見ながら言った。
「第一小隊は、再判定対象だ」
教室の空気が止まった。
再判定。
その言葉だけで、周囲の視線が集まる。
シュヴァルベ様は落ち着いた声で返事をした。
「はい、セスナ教官」
「詳細は別室で説明する。第一小隊は指定時刻に訓練棟第三シミュレータ室へ集合」
「承知しました」
私は端末を握る指に力が入った。
再判定。
なぜ。
初期判定に何か問題があったのだろうか。
DDSは、隊員の能力や適性、訓練履歴、戦術傾向を見て、模擬戦の難易度を決める。
そう説明された。
私の適性検査。
王都記念杯。
合同演習。
人形の動き。
白い髪のことは関係ない。
関係ないはず。
でも、私の中には別の怖さがあった。
マーリンの記憶。
人形に触れた時、時々勝手に前へ出てくるもの。
隠しているつもりでも、動きの癖に出るもの。
DDSは、それを見たのだろうか。
システムが、私の中の何かを見つけたのだろうか。
そんなはずはない。
私はただの一年生だ。
プラット男爵家の三女。
目立たず、無難に、安全な後衛補佐でいたい生徒。
そうであるはずなのに。
「ローレ」
ミリアが小さく声をかける。
「顔、また固い」
「固くなっています」
「認めるの早いね」
「再判定ですから」
「まあ、緊張はするよね」
トムも端末を見ながら言った。
「第一小隊だけなのかな」
「他にもあるかもしれません」
セシリアさんが静かに言う。
「ただ、教官がすぐに呼び出しをかけるということは、確認が必要な判定だったのでしょう」
確認が必要な判定。
それは、つまり。
良いのか悪いのかもわからない。
わからないものは、だいたい怖い。
シュヴァルベ様がこちらを見た。
「ローレさん」
「はい、シュヴァルベ様」
「今はまだ、結果を決めつけないでください」
決めつけない。
そう言われて、私は自分がもう悪い方向へ走っていたことに気づいた。
「はい」
「再判定は、隊として受けます。あなた一人の問題とは限りません」
優しい言葉だった。
でも、胸の奥は素直に頷かなかった。
限りません。
つまり、私一人の問題である可能性もある。
そう考えてしまう。
よくない。
とてもよくない。
でも、止まらない。
私は髪の内側に触れそうになって、手を止めた。
白い髪は、まだ少し見えている。
それだけでも落ち着かないのに、DDSの再判定まで重なった。
私の中身は、今とても忙しい。
できれば一つずつ来てほしい。
秘密も、模擬戦も、AIも。
全部まとめて来るのは、やめてほしい。
第三シミュレータ室には、セスナ教官の他に、二人の大人がいた。
一人は王国宇宙軍の技術士官。
濃い灰色の制服に、技術部門の徽章。
もう一人はハインケル社の技術者だった。
白い作業服に、ハインケル社の小さな社章。
その社章を見た時、私は少しだけ息を詰めた。
ハインケル。
ルイーゼ様の家。
もちろん、ハインケル社の技術者が全員ルイーゼ様と直接関係しているわけではない。
そんなことはわかっている。
でも、名前を見るだけで、胸の奥が少し固くなる。
「第一小隊、整列」
セスナ教官の声で、全員が並ぶ。
シュヴァルベ様を先頭に、ダッソーさん、トム、ピラタスさん、ブレゲさん、セシリアさん、ミリア、私。
八人。
第一小隊。
私は一番後ろに近い位置に立っていた。
後衛補佐らしい場所だと思った。
こういうことまで役割に見えてくるのは、少し重症かもしれない。
「初期判定で、第一小隊の模擬戦難易度に異常値が出た」
セスナ教官が言った。
異常値。
その言葉が、胸に刺さる。
「通常、一年生の学内模擬戦で設定される難易度は第一段階から第三段階までだ。高くても第四段階相当の補正に留まる」
投影盤に、難易度表が表示される。
第一段階。
第二段階。
第三段階。
第四段階。
その上に、第五、第六、第七。
第七段階には、実戦準拠の赤い注記がついていた。
「第一小隊の初期判定は、第七段階相当。学内模擬戦では通常設定しない数値だ」
誰かが息を飲んだ。
私かもしれない。
第七段階。
実戦準拠。
学生の模擬戦ではない。
私の頭の中で、赤い警告表示が勝手に点滅する。
実戦。
黒い宇宙。
白い機体。
ソードの閃き。
撃墜。
だめ。
今は違う。
ここは学園のシミュレータ室だ。
「そのため、DDSの接続システムによる再判定を行う」
宇宙軍の技術士官が一歩前に出た。
「再判定は、学内シミュレータにDDSを直接接続した状態で行います。検査内容は適性検査に近いですが、難易度はやや高めです」
やや高め。
第七段階のあとに聞くと、あまり安心できない言葉だった。
ハインケル社の技術者が端末を操作する。
「検査は一名ずつ。内容は外部には表示されません。判定に影響が出るため、他の隊員は内部映像を見られません」
外から見えない。
それは少し安心した。
でも、同時に怖い。
中で何が起きても、外からは見えない。
私が変な動きをしても。
マーリンの記憶に飲まれても。
誰にも。
「身体への負荷は制御される。実機ではなくシミュレータだ。だが、気分不良、リンク酔い、過呼吸があれば即申告しろ」
セスナ教官の視線が私に向いた。
「特にプラット」
「はい、セスナ教官」
また特に。
最近、特にが多い。
仕方ない。
仕方ないけれど、目立つ。
私は小さく息を吐いた。
一人ずつ、検査が始まった。
最初はシュヴァルベ様。
シミュレータの扉が閉じる。
外からは何も見えない。
投影盤には、心拍、魔力反応、リンク安定度だけが簡易表示される。
シュヴァルベ様の数値は、とても整っていた。
青い線が静かに動く。
安定している。
やっぱり、すごい。
しばらくして扉が開き、シュヴァルベ様が出てくる。
顔色は変わらない。
けれど、少しだけ目が鋭くなっていた。
「問題ありません」
そう言って戻ってきた。
次にダッソーさん。
その次にトム。
トムは出てきた時、少し汗をかいていた。
「思ったよりきつい」
「前に出すぎた?」
ミリアが小声で聞く。
「シミュレータ内でも言われるのか、それ」
「言われるよ」
トムは少し悔しそうだった。
ピラタスさん、ブレゲさん、セシリアさん、ミリア。
順番に入って、出てくる。
皆、それぞれ少し疲れていた。
でも、大きな異常はない。
外部表示の数値も、範囲内。
宇宙軍の技術士官とハインケル社の技術者は、端末を確認しながら短く頷いていた。
そして、私の番になった。
「プラット」
セスナ教官が呼ぶ。
「はい、セスナ教官」
「無理をするな。異常があれば申告しろ」
「はい」
シュヴァルベ様がこちらを見る。
「ローレさん」
「はい、シュヴァルベ様」
「戻ることを優先してください」
戻ること。
八番機。
退路確保。
その言葉が、胸に少しだけ残る。
「はい。戻ります」
そう答えて、私はシミュレータへ入った。
シミュレータの内部は、実機のコクピットに似ていた。
球状の内壁。
全周囲モニター。
手にはめるインタフェース。
実機より少し簡易的だけれど、感覚は近い。
私は座席に身体を固定した。
深呼吸。
手を入れる。
リンク開始。
指先から、細い糸が伸びるような感覚。
実機ではない。
でも、魔力の糸は確かに反応する。
モニターに起動表示が出る。
DDS再判定開始。
標準反応検査。
目標追従。
回避軌道。
姿勢制御。
最初は適性検査に似ていた。
光点を追う。
障害物を避ける。
急な進路変更に対応する。
少し速い。
でも、できないほどではない。
私は出力を抑えた。
普通に。
中位くらいに。
目立たないように。
できるだけ、いつものように。
でも、DDSはすぐに難易度を上げてきた。
警告音。
赤い予測線。
複数の敵影。
回避不能に近い進路。
「え」
声が出た。
モニターに表示される軌道は、学生向けではなかった。
いや、私は学生向けをよく知らない。
でも、記憶が知っている。
これは、戦場の軌道だ。
牽制ではない。
落としに来る線。
機体の退路を塞ぎ、推進器を狙い、回避先に二手目を置く。
私は指先を動かす。
逃げる。
避ける。
当たらないように。
白い糸が、シミュレータ上の機体に広がる感覚。
その瞬間、モニターの敵影が変わった。
まるで、こちらの癖を知っているように。
左下から入る斬撃。
上方へ逃げれば、二機目が待つ。
後退すれば、通信妨害領域。
前へ出れば、相打ち。
知っている。
この形を、私は知っている。
いや、私ではない。
マーリンが知っている。
胸の奥で、記憶が揺れた。
黒い宇宙。
赤い警告。
敵の推力光。
白い機体の指先。
左ではない。
右でもない。
一度落として、下から抜ける。
「だめ」
私は小さく言った。
だめ。
その動きは、私の動きではない。
でも、次の瞬間には手が動いていた。
指を引く。
糸を細くする。
機体をわずかに沈める。
敵の予測線の外側を、紙一枚分で抜ける。
ソードの射程に入らず、背後へ回る。
マーリンの動き。
あの人の癖。
私の中にある記憶。
DDSの表示が、一瞬乱れた。
評価中。
再評価中。
戦術パターン照合。
照合。
何と。
誰と。
モニターに次の課題が表示される。
高機動回避パターン、白系出力適性確認。
白系。
私は息を止めた。
髪ではない。
魔力スラスターの色。
マーリンと同じ。
ローレッタと同じ。
DDSは知っているかのようだった。
まるで、私がマーリンの生まれ変わりだと知っているみたいに。
「違う」
声が震える。
私はローレッタ。
マーリンではない。
そう言いたい。
でも、システムは聞いていない。
モニターの中で敵機が動く。
次の軌道は、もっと嫌だった。
知っている。
知りたくない。
回避して、誘い込んで、相手の足を止める。
撃墜するための形。
私の中の記憶が、当たり前のように答えを出す。
ここで落とす。
次を先に潰す。
三機目は囮。
本命は後ろ。
「違う、違います」
私は操縦桿ではなく、指先の糸を握るようにした。
落とさない。
撃たない。
斬らない。
戻る。
シュヴァルベ様が言った。
戻ることを優先してください。
私は八番機。
退路確保。
落とす役ではない。
戻る役。
戻す役。
糸を広げる。
敵を斬るためではなく、逃げ道を探すために。
モニターの端。
通信妨害領域の薄い隙間。
仮想地形の影。
そこに線が見える気がした。
見える、というより、触れる。
糸の先が、空間の構造に触れる。
この道なら戻れる。
この角度なら抜けられる。
私は機体をそちらへ逃がした。
攻撃しない。
撃墜しない。
ただ、生きて戻る線を選ぶ。
警告音が強くなる。
DDSの表示が乱れる。
予測外行動。
再計算。
戦術分類不能。
分類不能。
その文字が、赤く点滅した。
胸が苦しい。
呼吸が浅い。
手が冷たい。
でも、動きは止まらない。
マーリンの記憶が、もっと速い答えを出す。
落とせる。
勝てる。
そこを斬れば終わる。
でも、私は指を開いた。
「いやです」
小さな声だった。
「私は、落としたくない」
その瞬間、シミュレータ内の表示が白く飛んだ。
警告音が途切れる。
次に、低い電子音。
判定終了。
異常値検出。
再検査対象。
私は座席に固定されたまま、しばらく動けなかった。
息だけが、浅く続いている。
戻った。
戻れた。
たぶん。
でも、何かを見られた。
私の中の、見せてはいけないものを。
DDSに。
システムに。
私は手をインタフェースから抜こうとして、少し手間取った。
指が震えている。
大丈夫、と言いかけて、止めた。
大丈夫ではない。
でも、言わなければならない場所ではない。
いや、申告しなければならない。
混乱している。
私は扉が開くまで、ただ座っていた。
外へ出ると、皆の視線が一斉にこちらへ向いた。
たぶん、顔色が悪かったのだと思う。
シュヴァルベ様が一歩近づく。
「ローレさん」
いつもの声。
でも、少し強い。
「呼吸を」
「あ」
私は息を吸った。
深く。
少しむせた。
ミリアがすぐ横に来る。
「ローレ、座ろ」
「はい」
椅子に座らされる。
セシリアさんが水を差し出してくれた。
「ゆっくりで大丈夫です」
「ありがとうございます、セシリアさん」
手が少し震えて、水をこぼしそうになる。
トムが何か言いかけて、ミリアに目で止められていた。
たぶん、軽口を飲み込んでくれた。
ありがたい。
セスナ教官は端末を見ていた。
表情が険しい。
宇宙軍の技術士官とハインケル社の技術者も、画面を覗き込んでいる。
「再判定結果」
技術士官が低く言う。
「第一小隊全体の難易度は変わりません。第七段階相当のままです」
部屋の空気が重くなる。
変わらない。
つまり、再判定しても異常値は消えなかった。
ハインケル社の技術者が眉を寄せる。
「ただし、異常反応は八番機担当、プラットさんに集中しています。隊全体の評価値を押し上げている主因は、プラットさんの判定結果です」
私。
やっぱり。
胸が冷たくなる。
「私、ですか」
声が小さくなる。
セスナ教官がこちらを見た。
「プラット、今は黙って座っていろ」
「はい、セスナ教官」
技術士官が端末を操作する。
「プラットさんのみ、再検査を行います」
シュヴァルベ様の表情が変わった。
「ローレさんの状態が安定していません」
声は静かだった。
でも、はっきりしていた。
「再検査は必要最低限でお願いします」
技術士官は少しだけ頷いた。
「負荷は下げます。異常値の確認のみです」
セスナ教官が私を見る。
「プラット、できるか」
できません。
そう言いたかった。
でも、言えない。
いや、言うべきなのかもしれない。
でも、ここで止めたら、もっと疑われる。
もっと調べられる。
もっと、私の中を見られる。
「できます」
言ってしまった。
シュヴァルベ様の眉が少し下がる。
私はすぐ言い直した。
「無理は、しません。気分が悪くなったら申告します」
セスナ教官は数秒私を見て、それから言った。
「異常があれば即停止だ」
「はい」
再びシミュレータへ入る。
今度は、怖さが最初からそこにあった。
低負荷。
確認のみ。
そう説明された。
けれど、DDSはまた私を見る。
画面の奥から、何かがこちらを覗いているような気がする。
検査開始。
標準反応。
魔力糸応答。
空間把握。
戦術予測。
今度は敵影が少ない。
簡単なはず。
でも、途中でまた表示が乱れた。
戦術パターン照合。
該当候補複数。
該当候補。
誰。
何。
私は指先を止めようとした。
でも、止めると機体が遅れる。
仮想敵の攻撃線が迫る。
記憶が勝手に答えを出す。
私はその答えを半分だけ使った。
落とさない。
逃げる。
戻る。
また、DDSが乱れる。
分類不能。
評価不能。
再計算。
白い表示が重なって、モニターが一瞬だけ眩しくなった。
判定終了。
異常値継続。
私は、今度はすぐに手を離した。
息が震えていた。
技術者は、首をかしげていた。
ハインケル社の技術者は端末を何度も確認し、宇宙軍の技術士官と短く話し合っている。
「魔力出力そのものは、異常な高値ではありません」
「反応速度も、測定上は説明可能範囲内です」
「ただ、戦術予測と回避選択が噛み合わない」
「照合先が不安定です」
「記録分類にない動きが混ざっています」
記録分類にない動き。
私は膝の上で手を握った。
混ざっている。
その言葉が嫌だった。
私の中には、混ざっているものがある。
ローレッタとマーリン。
私の怖さと、あの人の記憶。
私の選択と、あの人の癖。
混ざっている。
それを、システムが見てしまったのだろうか。
技術士官は最終的に首を振った。
「これ以上の検査は不要です。学生の検査としては負荷が高すぎます」
ハインケル社の技術者も頷いた。
「DDS側のパラメータを調整します。プラットさんの一部判定値が、隊全体の難易度に過剰反映されています。学内模擬戦用の標準係数へ戻します」
標準係数。
戻す。
つまり、システム側の問題として処理される。
私は少しだけ息を吐いた。
ほっとした。
でも、完全にはほっとできない。
異常値は、消えたわけではない。
見なかったことにされるだけ。
学内模擬戦の難易度を標準にするために、押さえ込まれるだけ。
私の中にあるものは、そのままだ。
「第一小隊の模擬戦難易度は、第三段階上位から第四段階下位で再設定します」
宇宙軍の技術士官が言った。
「学内模擬戦としては高めですが、実施可能範囲です」
セスナ教官が頷く。
「それで進める」
シュヴァルベ様が静かに言った。
「ありがとうございます」
技術者たちは端末を閉じた。
検査は終わった。
終わったはずなのに、胸の奥はまだざわついている。
DDSは何を見たのだろう。
私の中の何を、異常値として拾ったのだろう。
マーリンの記憶。
白系の魔力。
撃墜のための動き。
それとも、落とさず戻る選択。
わからない。
わからないまま、標準的な難易度に設定し直される。
それでいい。
それでいいはずだ。
学内模擬戦なのだから。
危険な難易度になるより、ずっといい。
でも、どこかで思ってしまう。
DDSは、私より先に私の中身を見たのではないか。
見たうえで、分類不能と表示したのではないか。
私はローレッタ。
マーリンではない。
そう言いたかった。
システムにも。
自分にも。
「ローレさん」
シュヴァルベ様が隣に立っていた。
「歩けますか」
「はい。少し、ふわふわします」
「座ってから戻りましょう」
「はい」
大丈夫とは言わなかった。
シュヴァルベ様は、それだけで少しだけ安心したように見えた。
ミリアが水をもう一度渡してくれる。
トムは腕を組んで、難しい顔をしていた。
セシリアさんは私の手元を見て、震えが収まるまで静かに待ってくれている。
私は水を飲んだ。
冷たい。
喉を通る感覚で、少し現実に戻る。
第一小隊の難易度は、標準に戻された。
でも、DDSの判定は私の中に残った。
異常値。
分類不能。
戦術パターン照合。
白系出力適性確認。
言葉が消えない。
私は髪の内側に触れそうになって、また手を止めた。
白い髪。
白い記憶。
全部が、私の中でほどけずに絡まっている。
次の模擬戦は、第三段階上位から第四段階下位。
学内模擬戦としては高め。
でも、実施可能範囲。
そう説明された。
それなのに、私は別のことばかり考えていた。
DDSは、私を何だと判定したのだろう。
ローレッタなのか。
マーリンなのか。
それとも、どちらでもない、分類不能の何かなのか。
答えは出なかった。
ただ、投影盤に残った再設定完了の文字だけが、静かに光っていた。
ここまでお読みいただき有り難うございました。
面白いと思っていただけましたら、評価、ブックマークをお願いいたします。
励みになります!




