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赤い指輪の決議

ご覧いただきありがとうございます。

評価、ブックマークしていただきありがとうございます。


しばらく立て込んでおりまして更新が滞っております。申し訳ありません。

ガイア帝国国境沿い、緩衝宙域――。


無数の光が飛び交う漆黒の宇宙(そら)に、また一つ明るい閃光が走った。


「フゥゥー! 敵機撃破ッ!」


周囲を漂う無数の残骸の間を縫うように進む人形から、若い男の声が通信越しに弾ける。その浮ついた声を諫めるように、低く落ち着いた声が続いた。


「最初からあまり飛ばしすぎるなよ。途中で干からびる(魔力切れ)ぞ。」


「はははっ! 大丈夫ですよ! その前にこの戦いは終わりますから!」


「それもそうだな。 次に行く! 遅れるなよ! 相棒(バディ)!。」


軽口を交わし合ったガイア帝国宇宙軍所属の人形使いの二人は、二本の軌跡を描きながら、閃光の飛び交う戦場へと迷いなく身を投じていった。


戦いはすぐに終わる――そう信じていたのは、この若い人形使いだけではない。この戦場に赴いた帝国軍兵士の誰もが、同じように考えていたのだ。


しかし――。


「くそっ! バディ(僚機)がやられた!」

「避けられな…! うわぁぁぁぁぁぁぁ!」

「ガイア帝国に! 栄光あれー!!」


ガイア帝国とテルース王国、両軍は一進一退の攻防を繰り広げた。両軍ともに多大な犠牲を払い、やがて戦争はいつ終わるとも知れない膠着状態へと突入していったのである。



帝都惑星ガイア。


古代神話に登場する女神の名を冠するこの星は、豊富な地下資源と、緑豊かな大地を有する美しい惑星である。


その一角には、魔法と科学の粋を集めて築かれた美しい都市が広がっていた。

宇宙(そら)に届かんばかりの超高層ビルがいくつも聳え立つメガシティ――帝都マグナ・マーテル。


その帝都の中心、一際高く突き出た美しい尖塔の一室では、上質な衣服を身に纏った老齢の男たちが円卓に座し、厳しい視線を一点へと注いでいた。


彼らは今まさに、強大な帝国の運命を決定づけようとしていたのである。


円卓の中央。そこだけ強い光に照らされたブロンドの若い男へ、老齢の男たちの鋭い視線が一斉に注がれる。その圧に包まれながらも、若い男は静かに口を開き、落ち着いた声を議場へと響かせた。


「さて、諸兄方。お揃いになりましたので、そろそろ始めましょう。

会の冒頭に際しまして、皆様には、改めて我が国の現状をご報告申し上げます。


ご承知のとおり、我が国は現在、隣国テルース王国と交戦中であります。開戦から早いものでもう二年。

これが、我々の成した戦果であります。——こちらをご覧ください。」


薄暗い議場に若い男のフィンガースナップが響くと、頭上に戦況図がふわりと浮かび上がった。


「敵宙域へ進軍した我が軍は、各地において目覚ましい戦果を挙げ、快進撃。

王都テラ・マーテル(テルース王国王都)の占領は目前、もはやテルース王国は虫の息である。」


若い男は、大げさに肩をすくめて見せた。


「……と、申し述べたいところではありますが、しかし実際のところは王都には程遠く、この二年で我らが手にしたのは、ほとんど価値もない(クズ)のような星系を占領下に置いているにすぎません。


当初、この戦いは三ヶ月で終結すると言われていました。もちろん、我が国――ガイア帝国の完全な勝利によって、であります。


しかし、どうでしょう。 いまだに雌雄は決せず、両軍は境界線を挟んでにらみ合うばかり。御覧の図が示すように、戦況はまぎれもなく膠着状態と言えるでしょう。


この影響は帝国国内にも及んでいます。 戦線の拡大と長期化により戦費は右肩上がりとなり、その結果として物価上昇と戦時規制が進み、国内の不満はすでに破裂寸前に達しております。


その証拠に、開戦当初は肯定的であった多くの国民のみならず、今では一部の貴族ですら、この戦争の意義について疑念を抱き始めているのです。」


若い男は、にやりと口角を吊り上げながら議員たちを見渡した。


「……あえて申し上げましょう。もはや()()に残された時間は、一刻たりともありません。

以上の状況から、()()早急に劇的な効果をもたらす施策が必要であると考えております。」


若い男は、大ぶりな仕草で胸に手を当てた。


「しかしながら、私はこの場に名を連ねてから日の浅い若輩者であります。 ()()()策を供する前に、まずは諸兄方のお考えを頂戴したく、頭を垂れるところであります。」


深々と頭を下げた若い男に、しゃがれ声ながらも軽快な声が飛んだ。


「ほっほっ!……まずは一言、よろしいかな?」


「ご意見、頂戴いたします。」


若い男は頭を下げたまま、静かに答えた。


「ほっ! 実に愉快。味気のない戦報(戦況報告)も、こうあれば少しは聞く気にもなろうというもの。 見事な茶番。 ほっほっ! ……皆もそうは思わんかね?」


「……そうだな、我々は暇ではない。分かりきった前置きはこれくらいにして、早速本題に入ろうではないか。」


「それがよろしいですなッ。それではッ、私からッ。とっておきの策を供しましょう。 こちらから仕掛けるのです。境界の全駐留部隊を敵陣に突撃させましょう。そうすれば――!」


「はっ! 馬鹿を言うな! 突っ込むなど言語道断だ。ただでさえ我が軍は決定打に掛ける状況なのだ。下手に攻め込んで、初戦のようになったらどうするつもりだ! 軍務院は断固! そのような愚策は拒否する!」


「財務院としてもそれはどうかと…。 このところ補償だの、何だのと、お金がかさんでいますからねぇ。これ以上の()()な出費は……避けたいところですねぇ。」


「ふむ。…ではッ、こういうのはどうでしょうかッ。 ありったけの反応兵器をテラ・マーテル(王都)にぶつけるというのはッ。 頭をつぶせば、テルースも大人しくなるでしょう? フフフ……。」


「はははっ、それは滑稽。テルースの王都惑星は木っ端微塵ですな。」

「ほっ! 木っ端微塵とは。」

「ばっ…馬鹿を言うな! 冗談ではない!」


「ククク……。」


若い男の肩が、わずかに震える。

だが、好き勝手に騒ぎ立てる議員たちは誰ひとりとして、それを気にも留めない。


「少しは真面目に考えんか……。 やはり、最初の三ヶ月で五つの星系を奪われたことが、最大の原因ではないか?」


「何を言うか! それを言うならば、その後の三ヶ月の方が問題だ! 自領を取り戻さんと、「躍起になった挙句、いたずらに兵力を浪費したのは、どう考えても不味い!」


「そうですねぇ、モノだけの問題であれば、造れば済みますからねぇ。……お金はかかりますが。」


「いつまでも過ぎたことを言っても仕方なかろう。我々が抱える問題は――。」



この円卓を囲むのは帝国最高評議会の議員たちである。帝国内でも指折りの上級貴族である彼らは、この戦争を主導する好戦派の面々であった。


開戦当初、帝国の誰もが「戦争はすぐに終わる」と信じて疑わなかった。

しかし、その期待はあっけなく裏切られる。開戦からわずか三ヶ月で、帝国は五つの星系を王国に奪われるという大敗を喫したのである。


予想外の敗北に焦った帝国軍は、失った星系を奪還すべく大規模な部隊を急派した。

その結果、星系の奪還には成功したものの、引き換えに主力部隊の大半を失うこととなった。優秀な人形使いたちが宇宙(そら)に散ったのである。


失った兵器は作ればよい。だが兵士は違う。その後の帝国軍は深刻な人材不足に陥り、その影響はいまだに続いていた。

初戦で大きく躓いた帝国は、以降今に至るまで攻めあぐねているのである。



「ク、ククッ……!」


若い男の肩が、目に見えて震えていた。その異様な震えに、ようやく一人の議員が気づき、声を張った。


「なんだ! 先ほどから! 一体、何がおかしい!」


その瞬間。


「くぷぷっ……あはははは!!!!」


向けられた怒号をかき消すように、若い男の笑い声が議場に響き渡った。


「……ほっ!」


腹を抱えた若い男は、なだめるように息を整えながら、議員たちに潤んだ視線を向けた。


「くふふ……ふーっ。……おっと、失礼しました。 なにせ、諸兄方のやり取りがあまりに滑稽だったもので、つい。……ぷっ。」


「!!!」

「なんだその態度は!ぽっと出の若輩者ごときが! どの口でほざくか!身の程を知れ!」

「そうだ! 愚弄するとは、我々を誰だと思っている!いったい何様のつもりだ!」


次々に非難の声を浴びせかける議員たち。だが若い男はそれを意に介した様子もなく、むしろ楽しげに手をひらひらと振った。


「……はい、はい。なるほど、なるほど、よくわかりました。 これでは、勝てる戦いにも勝てません。どうりでこの程度のことに二年もかかっているわけですね。これでは、皇帝陛下のご不興を買っても仕方がないでしょう。」


「言わせておけば!!! 貴様ぁ! そこに直れ! 今すぐ刀の錆にしてくれるわ!」


「……やめろ、鞘に納めるのだ。ここをどこだと思っている。神聖な評議の場だ。腹立たしい気持ちはわかるが、慎め。でなければ落ちる首は、この男のものではなく、貴殿のものになるぞ。」


「……ぐぬぬ……。 ふんっ!!」


「話を元に戻す。問題は分かりきっている。兵士だ。いくら兵器を増産して戦力の回復を行おうがそれを運用する兵士が居なくては意味がない。」


「ほっ! 左様。我々は優秀な兵を多く失った。特に戦力の要である人形部隊の損害が大きい。優秀な人形使いの確保が急務だよ。」


ハンカチで目元を拭った若い男の口が動く。


「そのとおりです。我々は開戦から半年で、大半の戦力を失いました。 動ける兵をかき集めたとしても、現状を打開するのは難しい状況です。


人形、大小さまざまな戦闘艦、その他の装備は、すでに開戦時の水準まで回復しています。 しかし問題は、それらを運用する兵士が、いまだ満足に確保できていないことです。」


「新兵の育成は進んでいるのだろう? 訓練生の中にも優秀な者が居るはずだ。訓練期間を繰り上げ、早々に戦線へ投入してはどうかね?」


「ダメだ! 読み書きや計算とは違うのだ。 これだから、事務方の人間は困る。優秀だからと、短絡的に考えすぎなのだ。


兵士に必要なのは技術的な点だけではない。強靭な肉体、素早い判断力、そして敵を前にした際の精神力。そういった内面を鍛える時間こそが、訓練の本質なのだ。」


「いくら優秀と言ってもッ、所詮は一握りでしょう? 投入したところで焼け石に水ではッ?」


「頭数だけ合わせたいのならば、一般(国民)から徴兵をすればよいだろう。」


若い男は、即座に首を振る。


「それは世論の不満をあおるだけの愚策です。 それに、()()()()()からは、すでに多くの()()()調()()し、投入しています。あとは戦闘に使えない者か子供しか残っていません。」


「では、どうする? 貴公は我々に『劇的な効果をもたらす施策』とやらを供してくれるのだろう?」


議員の挑発めいた問いかけに、若い男は自信に満ちた表情で答えた。


「もちろんです。すでに根回しも終わり、()()()()は、動き出しています。」


「ほっ!ほっ! では、あの計画に絡めて、この問題も解決しようというのだね?」


「はい。近日中には、この場で良い知らせをご報告できるでしょう。 そしてそれとは別に、もう一つ。冒頭にも申しました通り、国内世論への対処も考えねばなりません。」


「うぅむ、世論は王国との和平に傾きつつあると聞いている。そうなると、気になるのは……。鳩連中の動きか……。」


「穏健派の貴族は、この機に乗じてテルース王国の一部貴族と水面下で交渉を開始しております。近々、非公式の席が設けられると聞き及んでおります。」


「やれやれッ、今さらテルースと和平など……これだから鳩の連中はッ。」


「和平締結は、まずいな……。」


「ええ。ですから、世論に働きかけます。」


「ふんっ! 今さら、プロパガンダなどでは世論は動かん!」


「分かっています。今までのような手を使ったところで効果はありません。しかしながら、我々には、そんなものよりもっと強力な()()があるではありませんか。……皆様もお判りでしょう?」


「ついに、使う時が来た……ということだな。」


「ほっほっ! フルール・デスポワール。」


若い男の口元が、にやりと弧を描いた。


「フルール・デスポワール、ロイス公爵家のご令嬢マーリン嬢は、今や様々な層に大変人気があります。それに加えて、知性、魔力。そして人を引き付ける容姿。世論を操作する上でこれ以上に強力な道具は他にありません。」


「人気だ? ふんっ! それは、()()()()()()()()()()()()()からにすぎん!」


「うむ……。もちろんそれもあるだろう。だが、フルール・デスポワール自身の能力の高さや人柄によって、我々の予想を上回る結果となっているのは確かだ。 正直なところを言えば、令嬢として生まれてしまったのが悔やまれるほどだ。」


「現に、先日の海賊の一件以来、フルール・デスポワールの人気は増して右肩上がりですからねぇ……。」


「それも、例の試作機があったからにすぎん! それがなければ、今頃、我々のではなく賊の道具として、いいように使われていただろうがな。 ふんっ!」


「その試作機は、膨大な開発費を投じて作らせた例の計画の代物ですからねぇ。……ただ単に、人形の性能が良かっただけ、ではないのですかねぇ…?」


若い男は、誇らしげに頷いた。


「ええ、もちろん。それはあるでしょう。 おっしゃる通り、あの試作機は従来機とは比較にならない性能です。

しかし、いま目を向けていただきたいのは、そこではありません。


今だから申し上げますが、あの機体は、大きな問題を抱えていました。それは、人形使いに要求される魔力量が通常機の比ではなかったのです。

端的に申し上げると、我が軍にはあの機体を動かせる『兵士』は一人としていなかったのです。


あの試作機は、今後のためのデータ収集を目的として開発したものでしたが、データを収集するどころか、まともに動かすことすらできなかった。計画は手詰まりだったのです。」


若い男の声が、熱を帯びる。


「しかし、偶然とはいえマーリン嬢はそれを動かし、さらには戦闘まで行った。……これは大きな光明、まさにエスポワール(希望)と言ってもいいでしょう。」


「フルール・デスポワールはまだ若い。今からでも身体を令息に作り変えてしまうか。 ロイス公もそのほうがお喜びになるだろう。」


「いやいや……それはどうかと。あの姿が見られなくなるのは私としては非常に残念です。」


「ほっほっ! 同感、同感。」


「なにを呑気な! 兵士が足りないのならば、すぐにロイスの小娘を前線送りにするのだ! 今すぐ屋敷に徴兵官を送り、小娘を引きずり出してこい!」


「ふぅ……筆頭公爵家のご令嬢を小娘呼ばわりとはッ……。」


「うるさい! ロイスはもはや筆頭などではない!! 議席を持ちながら、ろくな貢献もしておらん! もはや、ただの死に体の老いぼれだ!」


「ほっ!……死に体においぼれ。」


「まぁ……確かにしばらくロイス公の姿を見ていませんねぇ……。」


「では、国への貢献の証として、フルール・デスポワールを前線送りにするようにロイス公に迫るか?」


「それはつまりッ? 我々の今までの手間を無に帰すとッ?」


若い男は、すかさず口を挟む。


「お待ちください。前線に送れとの議員のお考え……一理あります。

しかしながら、ただ単に前線送り、消費してしまうだけでは、今までの苦労が無駄になるだけではなく、今後の計画に大きな影響が出ます。」


「そうですねぇ……()()()()を作り上げるために、我々が投じた資金は水の泡になりますねぇ……。」


「今やマーリン嬢の動向には誰もが注目しています。

そして、今は()()戦争には消極的です。このような状態で手荒に扱って機嫌を損ね、反戦などに傾けば、我々は今以上に不利な立場に追い込まれるでしょう。」


「フルール・デスポワールがッ、もう少しこちら側に協力的であればッ……助かるのですがねッ。」


「鳩連中に取り込まれるのは避けたいですねぇ……。」


若い男は、畳みかけるように怒り心頭の議員に言った。


「世論は今、テルース王国との和平に向きつつあります。 しかし、世論の目は移ろいやすいものです。一度それを別のものへ向けさせ、そして世論が今一度この戦争の意義に賛同できるよう差し向ける必要があります。

マーリン嬢には、計画通り(人形)を演じてもらうのです。


現在の我が軍には、ヒロイン――英雄がおりません。皆の希望を一身に背負い、世論を先導できるだけの器を持つヒロインが。」


「ほっほっ! それをフルール・デスポワールに担わせる。そのために我々は手を回してきた。」


「いっそのこと、人形に乗りながら歌でも歌っていただきますかッ? どうです? 妙案でしょう?……フフフ。」


「ぬぐぐ……。 勝手にせよ! 儂はどうなっても知らんぞっ!」


腕を組んで、そっぽを向いた議員に若い男はゆっくりと頭を下げる。


「しかしねぇ……器の大きなフルール・デスポワールが、こちらの思惑通りに動いてくれますかねぇ……?」


若い男は、はっきりとした声で否定した。


「それは問題ありません。我々の献身ともって生まれた容姿と能力の高さで国民のみならず貴族からも慕われているマーリン嬢ですが、所詮は令嬢です。その実は、()()()()です。


言ってしまえば、()()

ただ、今のマーリン嬢には、彼女が人形に成り下がることを良しとしない、しっかりとした()があります。 それを、切ってしまえば……。」


「なるほど、そうなれば、ただの()()()()()()()か。」


若い男は、酷く優しげな声で言葉を紡いだ。


「ええ……。そして、そこに我々が新たな()を張って差し上げる。」


「ふむ……新しい糸を張る手立てがあるのだな? こちらに都合のいい人形に仕立て上げる手立てが……。」


底冷えのするような笑みが、若い男の顔に張り付く。


「はい。そのために、マーリン嬢には決定的な()()()()を与えるつもりです。嫌でも戦争に加担せざるをえなくなるような。

可憐な花も、感情的に戦わずにはいられなくなるほどの……ね。」


「……本当に……よいのだな?」


「はい、必ず結果を出してみせます。」


「ほっ! その言葉、この場の全員がしかと聞いた。 我々がこの場でこれまでの貴公の言動を許しているのは、貴公が陛下からの信任――勅命を得ているからだ。くれぐれも、それを忘れてはならんぞ。」


「重々承知しております。」


「ほっ! それでは皆の衆、決を採る。 異論なき者は印章の指輪を掲げよ。」


円卓に座する議員たちが、次々に手をあげる。赤く輝く小さな石が薄暗い議場に不気味に揺らめいた。


その様子を中心で見据えた若い男は、深く頭を垂れた。輝くブロンドの髪の奥で、その表情はにんまりと歪んでいた。


「うむ、よろしい。ほっほっほっ! 全評議員の承認は得られた。

帝国最高評議会は、以降の全権を貴公にゆだねることとする。」


「ほっ! 失敗は許されん、心せよ。これにて散会とする!」


こうして、賽は投げられた。

もう、立ち止まることも、後戻りも許されない。


強大な帝国は、破滅へ向けて転がり始めたのである。

一人の令嬢とともに――。

ここまでお読みいただき有り難うございました。


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