緊急事態4 作戦
ご覧いただきありがとうございます。
「よっしゃー!全弾命中!」
「ちょっと!今の見たー!?2機抜きー!」
「やった!シュヴァルベ様!当たりましたよ!」
トムもミリアもシュヴァルベ様もみんなも、行けると思った。私達ならやれるって信じて疑わなかった。
でも。
◇
最初はよかった。
「うそ…私…全部、外しちゃっ、た…」
「おい!今!ミサイルが避けなかったか!?」
「ごめん…ごめん…みんな、ごめんなさい!!」
しかし。高高度を極超音速で飛行する点に簡単に当てられるはずがない。私たちは本当によくやったと思う。本当に。だって。
「…戦術オペレータ、戦況を、報告して。」
「目標、撃墜13機…、最終防衛ライン、7機…突破されました…作戦は…失敗、です。」
(そっか、失敗か。みんな頑張ったのにな、残念だな...)
私はシュヴァルベ機の隣で通信ウィンドウから聞こえてくる、みんなの悲痛な叫びを聞いていた。
それは現実味がなくて、どこか遠いところで起こっているような気さえする。
でも。
ドクンードクンー…
私の心臓が痛いほど打ち鳴らされる。胸が痛い。息が苦しい。身体が勝手に震える。
みんな、ここまでやったのに。
みんな、頑張ってきたのに。
これで終わり。もう、この世界とお別れ。
私に未練はない。
学園に入学して今まで本当に楽しかった。それ以外にも辛いことも、痛いこともあった。
でも、それでも、こんな生き方もあるんだ。初めて知った。誰かのスペアでも、部品でもない。
人としての生き方。それを知ることが出来た。それで十分だったんだ。
誰かが私に語り掛ける。
ーじゃあ、どうしてこんなに悲しいの?ー。
私が求めているのは平穏、戦いのない世界。もうこの世界に、興味はない。とすぐに思ったから。
ー本当かな?ー
だって、ローレッタはもう十分に人生を楽しんだから。
ー本当に?ー
ーじゃあ、どうしてこんなにも胸が苦しいの?。息ができないくらいー。
それは。紛れもない。
死ぬから。トムが。ミリアが。バイト先のおばさんが。王都のみんなが。シュヴァルベ様が。私に生き方を教えてくれたすべての人たちが死んじゃうからだ。
ーそれでいいの?ローレッター。
それでいいかって?そんなの決まってるよ。
そんなの・・・。
そんなのはだめに決まってる。そんなのだめだよ。みんなはもっと生きなきゃ!死んだらだめだ!
ー嫌なんでしょ?ローレッタ。私にはわかるよ、あなたの気持ち。だって私も同じだからー。
その瞬間、私は気づいた。
マーリンは生に固執していた。ずっと死にたくないと思っていた。でも、それは私の勝手な勘違いだと気づいた。
私はマーリンじゃない。記憶は持っているけれど、それはただの知識に過ぎない。
考え方はローレッタだから。だから、ずっと誤解していたんだ。
マーリンは自分が死ぬのが嫌だったんじゃない。みんなが死んでいくのが嫌だったんだ。
私が今まで、戦いたくなくて、押しとどめてきた撃墜女王の記憶、知識。それを…。
ー今、使わなくて、一体、いつ使うの?ローレッタ、言ってごらんよ?いつ?ー
ーあなた、ホントにー。
ーホントにそれでいいの?後悔しない?私のようにー。
ーねぇ、いつまでそうしているつもり!?あんたの本当にしたい事いってごらんよ!?ー
ーローレッタ=プラット!ー
私は目を開く。声を上げる。息苦しさも手も震えも止まった。
決めた!私は、私を、もう隠さない。
何も知らないフリは、もうしない。
「隊長!ローレッタ機、追撃、行きます!」
ここまでお読みいただき有り難うございました。
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