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緊急事態1 戦え

ご覧いただきありがとうございます。

前に立つトゥーフロック(宇宙軍軍服)を着た上級将校は私たちに、戦えと命令した。

その言葉にユンカース隊の一人が肩をすくめながら立ち上がる。


「冗談じゃありませんよ。僕たちは学生ですよ。それに貴族だ。そんなことは軍で対処してください。」


学生、貴族であることを鼻にかけた物言いにも関わらず上級将校は冷静だった、眉一つ動かさない。


「原因となったシステム(DDS)は先ほど停止させた。しかし、影響を受けたシステムの復旧には時間がかかる。それまで王都防衛隊も軍も動けない。防空システムも使えない。動ける人形使いは君たちだけだ。」


「状況が理解できたか。理解したなら座りたまえ。」


隊員は静かに座る。それを確認した上級将校は話を進めた。


「君たちの敵は戦略反応ミサイル(SRM)だ。数は20機。王都着弾予想時刻は3時間後。全弾着弾した場合の被害は言うまでもない。」


上級将校は帽子をかぶり直す。


「確かに君たちはまだ学生だ。しかし、君たちは王立宇宙軍士官学園の生徒なのだ。将来の義務を、今、果たせ。以上だ。少佐!あとは任せる。」


将校に代わり「はっ!」と短い返事をした女性が前に立つと告げる。


「現刻をもってユンカース隊は解散とします。副隊長、以降の指揮を取れ。」


少佐と呼ばれた女性はシュヴァルベ様に視線を向ける。


「ユンカース侯爵令嬢は私と来ていただきます。どうぞこちらへ。」


シュヴァルベ様に視線が集中する。私の隣に座るシュヴァルベ様は静かに席を立った。

そして・・・。


「お断りいたします。」


見上げた私はドキリとした。信念に満ち溢れた美しい顔に。力強く前向き言い放つ。


宇宙(そら)に上がるシャトルには乗りません。私は絶対に逃げない。シュヴァルベ=ユンカースは、隊長として、いいえ。|テルース王国の貴族として《ノブレス》最後まで戦います(オブリージュ)。」



宇宙軍の軍人は軽く敬礼して部屋を出て行った。シュヴァルベ様は立ったままでその姿を見送る。


その直後。


「私たちは一年生だ!打ち落とせる訳がない!」

「私の人形は動かないわ!」

「軍の復旧を待とう!」

「早く地下シェルターに避難よ!」

「シャトル打ち上げ場の確保はできたか?!」

「すぐに家に連絡しないと!」

「いや!死にたくない!お父様!お母様!助けて!」

「もう、おわりだ...」


私は唖然足した。


(えぇ…この人たち、さっきの聞いてたよね?同じ貴族だよね?)


そんな。ある者は逃げる算段、ある者は悲嘆に暮れ、混沌とした中。我らが隊長は落ち着いていた。


「ローレ、()()()人形の数は?」


「えっと、シュヴァルベ様と私と…全部で12機です。うきゅ!」


後ろから机に押さえつけられた。ぐ、ぐるじい…


「ちょっと!待って!無理です。僕は、隊から外して下さい。」

「私も!私も無理だわ!私の人形は動かない!宇宙(そら)上がらないと(避難)!」


僕も、私もと仲間たちは次々に部屋を飛び出してゆく。ひと気の無くなった部屋でシュヴァルベ様は私に向き直った。


「ローレ、どうやら、将校の言った通り、ユンカース隊は今日で解散ね。それで、あなたは、どうする?」


私はその瞳にうつる(覚悟)に、息飲む。その色はまったく霞んでいない。この状況でもこの方は…。


「シュヴァルベ様は…どうされるんですか?」


「...変わらない。隊がなくなっても。ユンカースとして王国を守る責任があるもの。私は戦う。」


最後の一言は私の目を見ながらだ。私は。


「お一人で…ですか?」


シュヴァルベ様はその問いに答えることなく背を向けた。静かに部屋の出口に向かう。


私は、(ローレッタ)は。戦いは嫌い。戦いは怖い。でも…


「待って!待ってください!私…私も行きます!一緒に行かせてください!」


私はシュヴァルベ様の後を追った。

ここまでお読みいただき有り難うございました。


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