表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/36

撃墜女王

ご覧いただきありがとうございます。

気がついた時、私の身体は包帯でぐるぐる巻きにされていて身体中が痣だらけだった。骨も何本か折れていた。


私は屋敷の階段を壊してしまったから処分(身売り)されないか心配だったけれど、両親からは一度だけ冷たい目で見られただけで済んだ。


そんなことよりも。


私の前世。マーリン=ロイスはかつて、テルース王国を恐怖のどん底に叩き込んだ隣国、ガイア帝国の貴族令嬢だった人だ。

彼女については歴史の本で読んだことがある。


帝国の公爵家に生まれた彼女は、そのたぐいまれなる人形使い(パペットマスター)としてのセンスを発揮して、初戦から戦果を挙げた。

本当に挙げまくったって歴史の本に書いてあった。


とにかく、当時、帝国と戦争状態だった王国の兵士はみんな彼女の操る人形に恐れをなしたというからとっても怖い戦闘狂(パペットマスター)だったに違いない。私も今までそう思っていた。


その強さから世間は彼女を戦闘狂と評した。でもね、それは違うよ。本当はそうじゃない。


本当の彼女は誰よりも平和を愛するパシフィスタ(平和主義者)だったのだ。

戦いを誰よりも嫌っていた。戦いのない日はずっと祈りを捧げていた。戦争で亡くなった人たちに、自分が殺した人たちに。


戦争なんて、人殺しなんて、本当はしたくないと、ずっと思っていたんだ。


でも、そんな無敗を誇った撃墜女王(平和主義者)も最後の最後はあっけなく死ぬことになる。

死の間際、彼女は激しく燃え盛る人形(パペット)の中で、身体を焼かれながらこんなことを願った。


(もう戦いはうんざり。血に濡れた地位も名誉もいらない。もし、もしも、こんな私でも生まれ変わる事が許されるのなら、願わくは、次はのんびりと平穏な人生を送りたい。もう、戦いは嫌。イヤ。人殺しは…)


(でも、ほんの少し贅沢ができるのお金があれば言うことなし。)


そして、彼女の死をきっかけにして勢いを盛り返した王国はその戦いに勝利、帝国の領地をごっそりと手に入れた。


彼女が撃墜女王と呼ばれるようになったのは、人形使いとして人並外れたセンスがあったことも確か。

でも一番は、人一倍、生に固執したから。



わたし(マーリン)は、………死ぬのが嫌だった。

本当は逃げ出したかった。戦いから。愛する帝国から。

でも、わたしは逃げることも、戦いを拒むこともできなかった。その勇気がなかった。

だから、わたしは()()()戦った。人形使い(戦争の道具)として



それは私も同じ。私は人形(パペット)で戦ったことはないけれど、でも彼女の気持ちが痛いくらいにわかる。


彼女を殺したのは戦争だ。


(ローレッタ)は、人を傷つけるのも、人から傷つけられるのも、嫌い。

平和が一番だと思っているから。


だからね。


大丈夫、安心していいよ。今度は絶対に(あなた)に辛い思いはさせないから。


あ、でも、ごめん。これだけは言っておくね。お金は諦めて。

ここまでお読みいただき有り難うございました。


面白いと思っていただけましたら、評価、ブックマークをお願いいたします。

励みになります!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ