模擬戦2 不気味な空
ご覧いただきありがとうございます。
ルビ多めです。
模擬戦は滞りなく進んでいく。
トムとミリアの隊はとても健闘した。いいところまで行ったのになぁ。
勝手に耳に入った話によれば、今回使用された難易度決定システムはシステムの更新が行われたばかりの最新式だそうだ。
判定難易度がいつもよりかなり高めに設定されてしまっているらしい。
私、大丈夫かな…?
私はすぐにそんな考えをうち消すように頭を振った。ここまで来たら出来ることをするだけだ。集中し魔力を人形に行きわたらせていく。
そして、ついに私たちユンカース隊の順番が回ってきた。通信ウィンドウにシュヴァルベ様の顔が映し出される。
「各機、準備はいいかしら?」
シュヴァルベ様は隊員一人一人に声をかけていく。
「ローレ、あなたに背中を任せるわ。サポート、お願いね。」
「はい!」
私の返事にシュヴァルベ様は少し表情を柔らかくして頷く。すぐに表情を引き締めた。
「……よろしい。もう一度言うわ、摸擬戦だからと気を抜かないように。それでは。」
シュヴァルベ様は力強く発する。
「我に続け!ユンカース隊、出撃!」
「「「了解!」」」
隊長の力強い掛け声とともに私たちは一斉に大空に飛びあがって行く。
私達の長い一日が始まった。
◇
時同じくして、王都から距離にして南東2万5000キロ地点、王国防空隊所属、第21ミサイル基地では警報が鳴り響いた。
「レッドアラート?一体どうした?誰か、状況を報告。」
赤く染まる指令室でオペレータが慌てた様子でコンソールを操作する。
「コマンダー!第7から16サイロが起動!ランチシークエンスが開始されています!」
「はぁ!?HQからの命令は受けていないぞ!今すぐ止めろ!おい!どこからコントロールされている!特定を急げ!それから、ターゲットはどこだ!?」
「コマンド投入開始。ランチ強制停止を試行、リジェクト。エマージェンシーを試行、リジェクト。」
「やむおえん、発射されるよりはマシだ!タワーをシャットダウン、発射前にブースターをアポトーシスさせろ!」
「アポトーシスコマンド試行、リジェクト!ダメです!コマンドリジェクトされました!」
「ぐぅ…ABMだ!空で撃墜しろ。」
「ABMコントロール…オフライン。迎撃できません!」
「コマンダー!コントロール元が判明しました!」
「どこだ!」
「それが、その、王都内、DDSからコントロールされています…攻撃目標は…王都…です。」
「なん、だと…」
そして、ミサイルがすべて発射された。数1000万人が暮らす大都市、王都に向かって。
◇
「ユンカース隊、模擬戦は中止だ。現在調査中だが、ほとんどの人形にリンクダウンシグナルが送られている。なぜか君たちの人形以外は動かなくなった。原因が判明するまで待機してくれ。」
急に人形から降りるように指示されたユンカース隊は、模擬戦会場のグラウンドで責任者の話を聞いていた。
(いったい、何があったのかな?人形が動かないってどういうこと?)
その時、空に不快な音が鳴り響く。もう何十年も鳴らされることがなかった不快な音。
「えっ、これって空襲、警報?」
私は空を仰ぎ見ながら呟く。
「誤報、かな?」
不快な空はどこまでも青く澄み渡っていた。
ここまでお読みいただき有り難うございました。
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