37 じり貧
――― 後藤 ―――
これで魔法が使える。見回すと荘厳な扉があり、ここが王座の間であることを物語っていた。地図で見ると中には10人の人間がいる。鑑定すると公爵、王女と勇者が8名の合計10名だ。
勇者は隠蔽のアイテムを使っているのかステータスがまるで分からない。どうする?
【まず戦うわ。】
中に入るぞ、直ぐには攻撃してこないだろ。
扉を開けるとそこには更に荘厳な空間が広がっていた。床には毛足の長い赤の絨毯が敷かれ、壁を金と赤で装飾し豪華絢爛ではあるが、まるでナポレオンの戴冠式の絵の様な荘厳な雰囲気を醸し出していた。
あの王座に座っているのが王か?
【あれはガラメデオン侯爵ね。隣に立っているのが姉よ。一寸シフトして。】
――― ターニャ ―――
「お姉さま。どうしたの。王座の奪取を試みたのに漁夫の利をガラメデオン侯爵に取られたみたいね。いいようにガラメデオンに利用されたのね。」
「いいえ、違います。ガラメデオン侯爵ではありません。ガラメデオン王です。私は結婚して王女になります。」
「ターニャ姫、お久しぶりですな。もう姫ではないがな。どうだ、ここで我が軍門に下れば儂の愛人として毎晩儂のケツの穴でも舐めさせてやるぞ。」
「なるほど、毎晩高い物ばかり食べていると出て来る糞も美味しいと言う訳ね。だったら私があなたにあなたの糞を食べさせてあげるわよ。」
【あんまり挑発するなよ。不利だぞ。】
「そうか、それじゃ勇者総掛かりでお前を剥いてやるぞ。素っ裸にして全員で犯してやる。もちろん最初は儂だがな。その後は、儂の愛人として儂のが欲しいと自分から言うまで調教してやるぞ、楽しみにしていろ。」
「それは楽しみだわ、王様。ではお返しに、兵士を一列に並べて、王様のケツの穴を全員で甚振って差し上げましょう。」
「おー、そ、それもいいなぁ。って、儂は男色の趣味はない!さぁ、服を剥け、剥いて素っ裸にしろ!」
さぁ、シフトして。
【右端の奴が賢者だ。】
シフトすると『結界』と唱えてまたターニャにシフトした。
――― ターニャ ―――
私は聖剣を抜いて斬撃を飛ばした。前回の勇者二人と今回の勇者三人にダメージあった。今回の勇者は全て行動不能のようだ。次は縮地を使って一瞬で賢者との距離を詰める。その時間さえ長く感じる。その速度をそのまま、聖剣グラムに乗せ右手で左から右へと切り裂いた。
聖剣はその能力で剣速を増すが、剣戟の重さを増大させることなくその分子結合を裂く。賢者は腹から胴体を上下に裂かれ崩れ落ちた。
崩れ落ちた時には斬撃の効いたもう一人の前回の勇者の首へ狙いを定め剣を振るっていた。
刹那、高い金属音が鳴り響いた。
剣が前回の勇者リーダーと思われるやつによって止められていた。
剣が止められた。『絶対切断』のスキルが防がれた。剣の能力『分子結合破壊』も防がれた。
なぜ剣が止められた。
更に追撃するがまた止められた。やはり二つの能力が無効化されている。訳が分からないわ。
すると勇者がにやけた。その瞬間、勇者の剣が振るわれた。
見えない。全く見えない。対処できない。
途轍もなく速度のある剣だ。
しかし、私には『絶対防御』がある。
だけど、『絶対切断』を無効化したのが何らかのスキルなら、『絶対防御』のスキルも無効化されている可能性が高い。だとしたら、攻撃は受けてはいけない。転がってでも避けるしかない。逃げるしかない。既に服はかなり裂けている。どうやら遊ばれている様だ。
「どうした、ターニャ。勇者に攻撃が全く通じないな。おい、遊んでないでそろそろ裸にしろ。小生意気な女にはお仕置きが必要だ。」
「王様もお好きですね。では、その後で爪を剥いで拷問しても宜しいでしょうか。爪を全て剥ぎ終えたら四肢を切り落として豚の様に生かしておくのはどうでしょう。」
女の勇者は性格が西太后のようだ。美人なだけにクールを通り越して液体窒素の様に冷たい性格だ。
「駄目だ。そいつは俺の性奴隷にするんだ。これ程の上玉は他の国にもいないぞ。まぁ、飽きたら考えてやるがな。」
くそ―、遊ばれてる。どっちも屑だ。
「でも、手足が付いてたら危険な女ですよ。」いや、細マッチョ君。手足が付いてないと絶対にダメでしょ。
「大丈夫、俺がいれば全然余裕でしょ。」前回の勇者のリーダーが言う。助かったよ。
【奴らのステータスが全く分からないから対処の仕様がない。逃げるぞ。】
そうね、そろそろ、でも漸く攻撃を免れている状況ではシフトした途端動きが悪くなり殺されるかもしれないわよ。
リーダーが攻撃の手を緩めない。明らかに手を抜いている。攻撃が見える。避けられる。しかしこちらの攻撃は当たらないし、止められる。
シフトできない。このままではじり貧だ。
突如、ドンという破裂音とともにドアが開けられた。見ると雪乃と彩芽とアルだった。
「助けに来たよ」
げー、これから逃げようとしてたのに。
ドアの方を見たその瞬間、体が動かなくなった。『バインド』という拘束する魔法だろう。
「逃げて―‼あなた達じゃかなわない、逃げてぇー。」
「助けに来たの、一緒に逃げよう。」
「雪乃ぉ。」
「あなたはなぜいつも裸にされてるの?趣味なの?」
「アル酷過ぎるわよ。仕方ないでしょ。兎に角早く逃げて…って、もう捕まったの?早くない?ちょっとは期待したのに。」
雪乃たちは既に拘束されていた。
「・・・いったい何しに来たの?」
「ごめん。」アルとは違い雪乃は素直だ。
「全員柱に括り付けろ。」
全員柱に括り付けられた。
「これで私たち全員性奴隷決定だよ。あの豚の。」
「あの豚?(ヾノ・∀・`)ナイナイ‼あの豚だけは勘弁して!だってほぼオークじゃない。オークは森へ帰れ!」彩芽は辛辣だ。
「この失礼な小娘め、余は王なるぞ。だがお前は巨乳だからドSの女勇者に呉れてやるぞ。多分そのデカい乳は切り落とされて城門に飾られることになるだろうな。」
「嫌―、飾らないで。そもそも切り落とさないで。」
「ターニャに自分の立場を思い知らせる為に、そこの金髪巨乳女をやっていいぞ。胸が大きいだけで勇者でも何でもないからな。使い道も無いだろ。お前らみんなで回せ。」
アルがターゲットになってしまった。
「了解です。ボス。」
「誰がボスだ、王様といえ。」
「すいません、王様っぽくなかったので。」
正確も口も悪そうな勇者リーダーがアルを拘束を解き前に引き出しニヤニヤしながら殴りつける。しかも、私の聖剣を自分の物のように腰に下げているし。
アルは勇者の強烈な一撃で気を失った。
「ほら、起きろ金髪女!」勇者はアルを無理やり覚醒させ服を脱がし始めた。
何の躊躇もなく憐れむ感情も無い。ただにやけた顔で殴りながら服を脱がし続ける。元の世界でも女を強姦していたのだろう。それともこの世界で力を得て変貌したのだろうか。
悲鳴を上げれば殴り、暴れれば殴り、気絶しては殴って覚醒させる。
そして、ついに一糸まとわぬ姿にされてしまった。
「ほら、早くやってしまえ。いいぞぉ、ワハハハハ・・」王様、王喜び、いや、大喜びだ。
王ともあろう者が囃し立てる、盗賊の親玉の様に。品の欠片も無い。勇者は剣を置きパンツを脱いで犯そうとしている。
このままではアルが犯されてしまう。
ロープで柱に括り付けられている状況では如何ともし難い。焦りだけが表出する。ここで『転移』魔法を使い勇者の後ろに転移すれば助けられるかもしれない。しかしもう転移は使えなくなる。
【ターニャ、考えがある、シフトするぞ。】いいわよ。
――― 後藤 ―――
シフトして小声で奥之院さんに話しかけた。
「魔法でこのロープ外せないか。」
「無理、やったけど強力なアンチ魔法が掛かってる。」
「だったら転移魔法が使えないか。」
「高度な魔法はまだ覚えてないよ、まだ使えない。多分魔力が足りないよ。」
「だったら『魔素供与』で俺に魔素を与えることは出来ないか。」
「それも無理。」
「ん、そうだ。思い出した。俺が出来るぞ。俺のスキルで魔素を吸収できるぞ。今までは魔素を吸収しても保有可能魔素量が少なくてほとんどの魔法は使えなかったから、すっかり失念していた。後で魔素を貰うぞ、良いか?」
「いいよ350mpくらいは大丈夫だよ。それで大丈夫?」
「350mpなら魔法を行使できるよ。」
リーダー勇者の前に転移発動後即シフトするぞ。
【了解。】
『転移』と念じシフトした。
――― ターニャ ―――
視界がブレてアルを犯そうとしている勇者の後ろに転移していた。瞬時に勇者に取られた剣を拾って目の前の強姦魔勇者の首を横薙ぎにする。
首までが遠い。
後少し。
遂に・・首を切断した・・
しかし何らの抵抗も無かった。
すでに首は下方へ移動している。
避けられた・・・
剣が慣性で動き続けてその動きを止める前には既に強姦魔勇者は剣をこちらへ向けて繰り出していた。
それに気づき後方へ飛び退く。
しかし、その剣は私の左腕を切り落とした。
左腕は左後方へと転がって行った。
血が噴き出る。止まらない。
勝てない。転移に続く後方の認識外からの攻撃をも防がれた。
しかも『絶対防御』を掻い潜り左腕を切断された。どうする事も出来ない。勝つ道筋が見えない。このままシフトすればあっという間に切り刻まれるだろう。
シフトする事も出来ない。魔法が使えず転移で逃げる事も出来ない。
じり貧だ。




