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34 嵐の前の・・・

 今日は朝から久々の一人だ。ゆっくり朝食を食べられる。レストランへ向かうとのんびりハムと卵とパンをコーヒーで飲み込む。一人の優雅な朝食だ。

 食後冒険者ギルドへ行くと既にアルが待っていた。しかし、相変わらず朝の冒険者ギルドは煙たい。朝の良い所は酔っぱらった異世界ヒャッハーが少ない事だろう。酔っぱらって無ければ悪い人たちではない。酒が人のタガを外してしまうだけだ。


「アル、早いなぁ。」


「早いなぁ、じゃなくておはようでしょう。あなた遅いわ。私待ちすぎ。時は金なりだわ。」アルぶれないなあ。


「今日はどこ行く?森?俺も少しは強くなったからゴブリンでも大丈夫だぞ。」


「はぁ?あなた何言ってるの。一昨日はオークキング迄やっちゃったのに。」


「あれは別人だよ。今日は弱いんだよ。」


「あ、そう。私も一昨日のガメツイ人とは別人だわ。」


「いや。お前は今日もがめついだろ。さっきは時は金なりとか言ってたし。今日は森の入り口で軽くやるか。試したい魔法があるんだ。」


 ギルドを出て森へ向かう。森へ到着すると森はいつもの如く穏やかで先日のオークの喧騒が嘘のように平穏で柔らかな風が吹き、今日の日差しと相まって心地よい。

 平常(いつも)の様に出てくる魔物は角の生えたウサギで、今日はこれをホテルで料理してもらおうか(など)と考えながら魔法を放つ。


『ファイアーショット』体全体を炎で包み込み燃やす魔法だ。


「さて、今晩の晩飯が取れたぞ。」


「えー、ウサギなんて食べたくないわ。牛にして牛。」タダで牛を食べようと思ってるのがガメツイな。


 ウサギを見ると全体的に焦げているが大丈夫だろう。しかし、持ち上げると全てが灰になって風で飛んで行った。まるで朝日を浴びた吸血鬼の様に。愕然とした。今日の晩御飯が・・・

 でも、この世界に吸血鬼はいるのだろうか。アンデッドと吸血鬼には存在して欲しくないな。ステータスを確認すると15mpしか必要としないファイアーショットに50mpを使用してしまっていた。どうやら気張り過ぎて魔素を込め過ぎたようだ。50mp使用した時は魔力も50使っているのだろう。きちんと魔力を制御しなければ今晩の晩飯がまた牛になってしまう。


 気を取り直して、暫く歩くとまたホーンラビットが見つかった。こちらに未だ気付いていないので後ろから集中して魔法を放つ。


『ファイアーショット』


 炎が飛び出しウサギを急襲する。周りがこんがり焼けている状態だ。使用した魔素は最低ラインの15mp。持ち上げると香ばしい匂いがする。身はしっかり残っていた。


「これで今日の晩御飯は確保できたな。」


「えー、ワタシは牛がいいわ。」未だ言ってるし。  ドンッ!!!


 突然の破裂音と共にブラックホーンドボアという角の生えたい黒い猪がこちらへ向かって突進している。


「これぞまさに猪突猛進だぞ。」叫んでしまった。


「なにそれ?意味が分からないわ。でもあれ美味しいのよ。」


 さすがアルだ。タダで美味しいのが食べられる事には目が無いのだろう。がめついな、やっぱり。

 流石にバカな事を考えている間に近くまで来たので魔法を放つ。


『ファイアーブリット』炎を圧縮し高温にして弾丸の様に飛ばす魔法だ。詠唱時間が必要ないから便利だ。

 甲高い衝撃音と共に命が削り取られた猪は四肢の力を無くしながらも慣性によって前へと押し出され転がされている。恐る恐る猪が死んでいることを確認すると眉間が焦げ数センチほどの穴が開いていた。もっと魔力を込めれば更に大きな穴が開くのだろう。焼けているので一切血が出ていない。ただ少々焦げ臭い。

「まるでレーザーだな。でも光魔法で光を圧縮して高熱にしても同様の効果が得られるかもな。」


「なによ、れーざーって。それに光魔法使えるわけ無いでしょ。」


「ほんとに?」


「当然よ、子供でも知ってるわ。あなたが今使った魔法は火属性の魔法でしょ?だったらあなたが使ええる魔法は火属性の魔法でそれ以外が使えるわけないでしょ。そんなのは勇者様くらいよ。」


「あー、なるほど。普通はそうなのか。」


「そうよ。だからあなたに光魔法は使えないの。」決めつけてるし。


 そう言われたから、火属性の魔法だけを使って魔物を倒した。気付いた時には日は傾き始めていた。魔素は半分は残っていたし、時間的にはまだ早かったが、初めて多くの魔法を使った為か精神的に疲れたので帰宅することにした。


 城壁の東門まで来るといつものエドさんがいた。


「お帰りなさいませ。ターニャ様。」


「ただいま。エドさん。毎日大変ですね。」


「ど、どうかされましたか。あ、また村娘のふりですね。」


「やだなぁ、もう村娘は卒業しましたよ。」


「本当に大丈夫ですかぁ?」


 其の侭東門からまっすぐ王城に向かって歩くと冒険者ギルドがあるので立ち寄る。素材の納品の為だ。今日はいつもの嫌味な受付嬢が沈黙して目を合わさない。ターニャが王女だったことを知ったからだろうが、何時(いつ)もの嫌味が無いと調子が狂う。納品後は何事も無くホテルへ帰り部屋で寛いでいた。


 そんな時だった。事件が起こったのは・・・


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