30 人をゾンビみたいに言わないで!
1時間後、風呂から上がってレストランの席でコーヒーを飲んでいた。
当然客は私達だけ。
何やら神妙な顔をしたイサドの話は内密の話らしくアルに迄聞かせても良い者かと危惧した。しかし、アルは単に金銭に対してがめついだけで信用に値しないと言う訳ではない。はずだ・・・
イサドが食事を持ってきた。
「帰って来られたばかりで空腹かと思い用意いたしました。どうぞ、お召し上がりください。」
「ありがと、イサド。気が利くわ。ところで話とは何?」
「王様とターニャ様の件で話しました。身分を隠している事についてです。ターニャ様は命を狙われていたのではないですか。そして、生きていることが暗殺を企んだ者に知られてはまた命を狙われる、その為に身分を隠されていた。合ってますか。」
「半分はあってるわ。その前に一つ聞きたいのだけど。私は死んだことになっていない?だとすれば誰がその噂を流したの?」
「アリエノール様です。あの日ターニャ様の護衛に着いた第二王女アリエノール様の護衛が魔物に襲われたターニャ様の死亡を確認したと聞きました。死体はオーガキングに奪われたとのことでした。ターニャ様は重い心臓病を患っていたにも拘らず狩りに出向かれたので然もありなんと皆納得いたしました。」
「やはり、お姉さまの仕業だったのだと確信が持てたわ。あの日私を襲ったのは魔物だけではないの。朝飲んだ薬がすり替えられていたのか眩暈で体が普通に動かなくなったところを巨大なオーガに襲われたところを護衛の兵士に周りを囲まれて槍で突かれたわ。そして、心臓が止まった。それを兵士が確認して去って行ったの。神のご加護で死なずに済んだけど。」
「心臓が止まったのですか。それは死んで生き返ったのでは?」
「心臓が止まっただけよ。脳は生きていたわよ。つまり死んでないわよ。人をゾンビみたいに言わないで!失礼ね。」
「そういうものですか。ゾンビではないのですね。アンデッドと言う訳でもないのですか?」
「だから死んでないわよ!」
「ところで、今後どうされるおつもりですか。」
「証拠をつかむわよ。話はそれから。」
「アリエノール様おひとりの計画だと思われますか。私には黒幕がいるように思えて仕方が無いのですが。」
「私もそう思うわ。怪しいのはお姉さまに近づいていた侯爵、ガラメデオン侯爵ね。」
「情報を集めてみます。」
「呉呉も気取られぬ様にね。」
「心得ております。」
部屋へと戻りソファーに座り一日を振り返った。長い一日だった。
ぼーっと辺りを見回す。部屋の中はきちんと掃除され整頓されている。
「何?あなた殺されかけたの?」
「悪い?」
「悪いに決まってるわ。ツケを払わせないといけないわ。」
「さすがアル。当然ね。後悔させてやるわ。」
「ところで、相談なのだけど。あなたと一緒に第二王女を倒したら報酬はあなたから貰えるのかしら。」
「ボランティアに決まってるでしょ!嫌なら手伝わなくてもいいわよ。」
「だったらワタシは第二王女に寝返るかもしれないわよ。」
「さすがアルね。脅迫までしてお金を無心するとは。最早恐喝よ。恐喝。刑法249条よ。でも、寝返る人は寝返るとは言わないかもね。でもアルの事だからもっとお金を出すと言われれば寝返る可能性は否めないわね。」
「どれだけ信用が無いのかしら。」
「日頃の行いよ。金金言ってお金にがめついからでしょ。行動の根拠はお金でしょうし。」
「でも、今の行動の根拠はあなたよ。」
「本当に?(¬_¬) 」ちょっと嬉しかったが訝しげに聞いてみた。
「本当よ。だってあなたを助けたらお城で雇ってもらえてお金持ちになるかもしれないでしょ。」
「やっぱり金じゃねぇーか!もう、さっさと寝るわよ。明朝は早めに冒険者ギルドへ行かないと。」
「明日になったらまた俺とか言ってるんでしょ?」
「かもね。気が合わないかもしれないけど頑張って。」
「気が合わない事はないわ。話しててあまり面白くないと言うだけ。今の方がいいわ。」
「アル、ありがと。」
【悪かったな、面白くなくて、夏休みもあと55日しかないのに。】




