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6調子にのりましたスミマセン

 『こんな異世界転生は嫌だ!!』

 

 第五位 転生先が下等生物

 第四位 とても不遇な境遇

 第三位 チート能力がない

 第二位 ラブイチャがない

 第一位 見知らぬ世界でひとりぼっち

 

 異論は認める。今、俺が適当に作ったから。

 

 んで、気絶から目を覚ました俺はいま、見知らぬ世界でひとりぼっちなのだ。

 暗く鬱蒼とした森の中、聞こえるのはギャーギャーと鳴く鳥の声。肌寒くジメジメしてるし。

 どうしたら良いものか…焦燥感にかられ、今にも泣いてしまいそうだ。いや、既に泣いている。

 

 飛行魔法の暴走によって、かなり遠くへ飛んできてしまったみたいだ。

 暴走飛行によって成層圏に入り、綺麗な星の輝く宇宙が見えた瞬間、Gやら酸素濃度やらで気を失ったらしい。

 

 そのまま、この森に不時着したのだろうが、何で生きてんすかね?俺。

 上を見れば俺がぶつかり折れた木々があり、地面を見れば俺が墜落した時に出来たクレーターがある。

 少し身体が痛い気もするが、なんて事はない。不死身になっちゃたのかね?

 

 いたん落ち着いて、上空から周辺を確認しよう。うん、そうしよう。

 

 俺はイメージして、飛行魔法を発動する。

 「あ?あれ?」

 

 宙にフワフワと浮かぶ。

 (おっかしーなー、もう一度やり直してみよう)

 

 一度地面に降りて、再トライする。

 二段階に分けてやる事も意識して。

 

 また、フワフワと浮かぶ。

 と、飛べない!?マジか!?ヤバイ!?

 

 鼓動は高まり、顔は青ざめ、脂汗が流れてくる。

 

 事故ったせいで飛行がトラウマになり、本能的にブレーキをかけてるのか?理由はわからんが、一縷の望みも断たれた。

 

 「ママーッ!!ジョロッチママー!!」

 涙目に叫んでみても、鳥がギャーギャー言ってるだけで何の反応もない。

 

 どん底の失意のなか、仕方がないので歩きだす。

 もしかしたら森の中に村とかあるかも知れないし。

 

 暗い森の中で方角もわからずトボトボ歩く事、数分。

 俺は第一森人もりびとと遭遇した。

 

 熊だった。いや熊じゃない。何故なら体長が3メートルぐらいあるし、丸太のような太い腕は4本あるし、牙は顎の下まで長く生えてるし、瞳は赤く濁ってるから熊じゃないね。

 

 俺を見下ろしヨダレをたらし、ガフガフ言ってる。

 その距離10メートル。俺を捕食やる気満々なご様子。

 

 こっええー!!超怖いんですけど!!

 恐怖に足がガクガク震え、漏らした。

 

 漏らしたよ俺。33にもなって漏らしましたよ。

 少し前まで憧れの異世界生活にキャッキャウフフ言ってたのが嘘みたいだ。こえーよ、異世界こえーよ。

 

 「ガアアアアアッ」

 「きゃあああああ」

 熊(仮)の咆哮に叫ぶ俺。

 

 恐怖のため、闘うなどという選択肢は脳裏をよぎる事なく、必死になって近くの木に登って逃げる。 

 

 熊(仮)の届かない高さまでスルスルと登り、太い枝の上に立って幹にしがみつく。力を宿す前なら絶対出来んかった。巫女っちありがとう。

 

 諦めない熊(仮)は、その4本の太い腕で木を揺すり俺を落とそうとする。ゆっさゆっさ揺れる木にしっかりとしがみつく。

 

 「やめてー!!揺らさないでー!!」

 

 揺れは更に激しくなる。

 俺の頼みを聞いてくれない熊(仮)に立腹する。

 

 「クッソーなんて意地悪なやつだ!!これでも喰らえ」

 俺は自然の力をイメージして魔法を発動する。

 

 「えいっ!!」

 ズガン!!

 鋭い電光が熊(仮)に命中する。

 

 「やぁ!!」

 ゴオォッ!!

 激しい炎が熊(仮)を包み込む。

 

 「とおっ!!」

 ズアァァァ!!

 硬く鋭利な氷刃が熊(仮)を切り裂く。

 

 「もういっちょ!!」

 ビュオォォォ!!

 強力な竜巻が熊(仮)の身体を上空高くまで持ち上げ、そのまま地に落とす。

 

 落ちた熊(仮)はピクリとも動かない。

 (やったかな?)

 

 俺は木から降りて、恐る恐る熊(仮)に近づき生死を確認する。原形を留めないくらいにズタボロになった熊(仮)。呼吸をしている様子もない。

 

 「よしよし、死んでくれたね。念のために」

 ズシンッ!!

 硬く巨大な岩塊が熊(仮)を上から押し潰す。

 

 「はぁー怖かった。くそ、ズボンまでグチョグチョじゃねーか」

 ズボンが濡れて気持ち悪いまま、再び歩きだす。

 

 その後、何時間歩いたか分からないぐらい彷徨った。

 行けども行けども景色は変わらず、ずっと森の中。

 道中、色んな森人もりびとと遭遇した。

 

 猪みたいなやつ、狼みたいなやつ、鹿みたいなやつ。

 どいつもこいつも凶悪な牙や爪や角で俺を襲ってきた。

 

 その度に俺は魔法で返り討ちにしたのだが、大体一撃で死ぬ事に途中で気付いた。熊(仮)はやり過ぎだった。悪い事をしたかな。そうでもないか。

 

 そうして歩いていると、森の中に大きな岩があるのが目に入った。近づき確認する。

 

 岩の下から、動物の腕らしきものがはみ出ている。

 特徴的な鋭い爪に見覚えがある。

 

 最初にやっつけた熊(仮)だった。

 岩は俺の魔法だった。

 

 「ふわぁぁ」

 なんて事だ。こんなに時間をかけて歩いたのに、元の場所に戻ってきただけか。

 強烈な絶望感でその場にへたり込む。

 

 「もういいよ。俺は疲れたよ」

 諦念が肩に重くのしかかり、倒れて横になる。

 

 日が暮れて来たのか、辺りは次第に闇が濃くなる。

 

 疲れた身体が地面に吸い付き、俺はそのまま眠りに落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 どれほど眠ったのだろう。夢も見ない程の深い眠りから俺を覚ましたのは人間の声だった。

 

 「ちょっとあんた!!大丈夫なの!?」

 声の主は俺の肩を掴み、揺すり起こそうとする。

 

 「ーんん、ジョロッチ。もう少し優しく起こしてー」

 目を擦りながら身体を起こす。土の上で寝たせいか身体が凝り固まってる。

 目を開くと見知らぬ女が俺を覗き込んでいた。

 

 「え?誰?」

 「ああ、良かった。死んでるかと思ったよ」

 そう言って胸を撫で下ろしたのは、金髪のスレンダー美人さんだった。茶色の瞳は強い眼力を備え、アメリカのグラビアにでも出てきそうなゴージャス感がある。カーキ色の半袖短パンは軍服を思わせ、背中に大小の弓と幾本もの矢を携えている。

 

 特徴的なその耳は、横に長く伸び尖っている。

 

 「エルフっ娘だ!!助かった〜」

 言葉の通じる人に出会えて安心した俺は顔を緩ませる。

 

 「そ、そうだよ。私はエルフのユーチェア。この近くの村に住む狩人だ。あんたは?」

 

 「俺はダイシ。この世界を救うため転生召喚してきた救世主だ。だったよ?だったはずなんだけどなぁ〜」

 そう言えば何をどう救うのかも聞いてなかったな。

 ホント何で呼ばれたんだろ?俺は。

 

 「そんなあんたが何でこんな所いるんだ?」

 訝しげに質問するユーチェア。

 

 「話せば長くなるんだけどね、飛行魔法が暴走して制御できなくなって、こんな遥か彼方まで飛ばされてしまったんだ」長くなかった。

 

 「そうなんだ…ところで、この岩の下のやつあんたがやったの?」

 あまり合点の行かない様子のユーチェアは、岩に下敷きの熊(仮)を指差して言う。

 

 「ん?ああ、そうそう。ドーンてやってバーンってやってズーンって倒したよ」

 

 「よく分からないけど凄いな。コイツはボボガっていう魔物でここら一帯の主だったんだ。村の狩人も何人かコイツに殺られているんだ。礼を言うよ、ありがとう」

 

 「じゃあさ、お礼になんか食べさせて。昨日の昼から何も食べてないんだ」

 

 「ああ、もちろんさ。うちの村まで案内するよ」

 

 俺は九死に一生を得た。

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