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10不敬にも神を徴兵する悪魔達

 俺は相手方の動きが見易い様、櫓の上で待ち構える。

 

 もう少し、もう少し近づいたら纏めてありったけの魔力を込めて広範囲に灼き尽くしてやる。先手必勝だ。

 

 そう待ち構えていると、隊列に変化があった。

 先頭の戦車を除きその進行をピタリと止めた。

 

 (不味い、バラけてしまうのは!!)

 一網打尽を頭に描いていた俺は焦る。

 

 (今攻撃してしまった方が良いか!?)

 魔物しか相手にいなかった俺は、こういった状況での最適な手段が確信を持って選べない。

 すると戦車も少し進んだ所で動きを止め全隊が停止した。

 

 (何だ!?何か仕掛けてくるのか!?)

 ゴクリと唾を飲む。村人達も暗澹たる面持ちで身構える。

 村人は防壁の内側に居るので状況が見えない分、不安が大きいだろう。

 

 俺を含む見張り櫓の面々は静止した戦車を凝視する。

 突如、戦車の上部の扉が開き、中から二人の人間が出てきた。大小の二人は戦車を降り、緩やかな足取りで此方へ向かってくる。

 

 すぐさま俺は単眼鏡でその姿を確認する。

 

 「あれはっ!?」

 

 確認した俺は村の方へ振り返り大声で伝える。

 「皆、攻撃はしないでくれ!!あれは俺の知り合いだ!!」

 

 俺が見知った顔などそんなに居ない。

 嬉々として櫓から防壁の外側へ飛び降り、向かってくる二人の下へ駆けつける。

 

 「ジョロッチー!!巫女っちー!!」

 

 「ダイシさまー!!」

 俺に気が付いたジョロッチも此方へ駆け出す。

 今日は黒い戦装束姿で長い銀髪を後ろで結わえている。

 

 そして再会の熱い抱擁。相変わらずでかいぜ!!

 

 「ダイシ様。よくご無事で」

 目に涙を浮かべ喜ぶジョロッチ。

 

 「ジョロッチよく此処が分かったね」

 俺も目頭が熱くなる。

 

 手を握りながらお互いを見つめて話す。 

 「もう、あの日からありとあらゆる手を使って探しました。お元気そうで良かったです。」

 

 「うん、偶然ユーチェア…あそこのエルフの村人に助けて貰えてね」

 

 「ダイシ様、だいぶお痩せになりましたか?」

 

 「そうだね、毎日狩りに出てたから」

 

 「見違えました。凛々しくなられて」

 

 ジョロッチと再会を喜んでいると、憮然とした表情の巫女っちがやってきた。

 「巫女っちも来てくれたんだ。ありが…」

 ドガッ

 「グエッ!!」

 いきなり見事なトーラスキックをお見舞いされた。

 痛くはない。

 

 「ほんま何しとんじゃーお主はー!!」

 

 「うっせー俺だって大変だったんだぞー!! すっげー不安だったし!! でも何とかなったのは巫女っちのおかげだ、ありがとー!!」

 

 「何が言いたいんじゃ一体? まあ無事で何よりじゃ。では、帝国へ帰るぞ」

 当たり前の様に言う巫女っち。いや当たり前なんだが。

 

 「嫌だー!! 俺はココで生きるんだー!!」

 

 「はぁ? そんなの駄目に決まっとるじゃろ」

 

 「嫌だ。だって俺まだユーチェアとやってないだもん!!」

 涙目で訴える。

 

 「そんなん知らんわ。もうすぐにでもマクドゥル共和国と開戦するのじゃ。縛ってでも連れて帰るぞ」

 

 「出来るもんなら、やってみろー」

 言うや否や巫女っちの手のひらが俺に向けられ、瞬間的に白く透明なロープで身体を拘束された。どれだけ力を込めてもロープは千切れない。

 

 「なにすんだー!! やめろー離せー!!」

 ミノムシの様になった俺はグネグネ身じろぐ。

 

 「お主がやってみろと言うたじゃろーが。じゃがしかし、無理矢理連れて帰った所で大した働きは出来そうにないからのう。どうじゃ? 此度の戦で戦果を上げれば褒美として此方の村へ戻って来ても良いぞ」

 

 「うん、わかった。そうする。」

 

 「なんじゃ? やけにあっさり納得するんじゃな」

 

 「今の巫女っちの話だと、そのなんとかって国と戦争する為に俺を呼んだってことでしょ?じゃあその戦争に勝ったら俺は自由にして良いんでしょ?」

 

 「まぁそうじゃが。ジョロバケットこやつに説明しとらんかったのか?」

 

 「すみません巫女神様、説明する前に事故が起きてしまったものですから」

 

 「そうじゃったのか。まぁよい、それではダイシはジョロバケットを連れて村へ挨拶をしてこい。わしは車で待っとるからの」

 

 そう言って巫女っちは俺に巻き付けた拘束を解除すると、戦車へと戻っていった。

 

 俺はジョロッチと二人で村へと歩きだす。

 

 「でも、ジョロッチ。あの恐ろしい見た目の軍団は何?」

 

 「その辺りもお話してませんでしたね。アドレニック帝国とその周辺の国々は魔族が治めています。強靭で知能のある魔物や、ネクロマンサーが呼び出したアンデッド等を兵士として使役するのも一般的なのです」

 

 「え? アドレニック帝国って魔族の国だったの? 知らんかった。てっきり魔王か何か倒すと側だとばかり思ってたけど。じゃぁジョロッチも人間じゃないの?」

 

 「いえ、私は人間ですよ。ただ、魔力量が多いおかげで人間離れした知能や寿命を備えてますけど」

 

 「って言うとジョロッチ、何歳?」

 

 「今66歳ですよ」

 

_人人人人人人人_

> おかあさん!!<

 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y ̄

 

 「因みにご結婚などは…?」

 

 「昔に一度だけ…今は独身です」

 

_人人人人人人人_

> バツイチ!! <

 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y ̄

 

 (いや、そもそも戸籍登録制度とバツ付く欄があるのか知らんけど)

 

 当初からジョロッチにバブみを感じた事に少し納得がいった。でもユーチェアがいなかったら中々の衝撃事実だったなぁと思いつつ、村の防壁門をくぐる。

 

 村の中に入ると先程まで戦闘態勢でいた村人達が囲む中、ユーチェアが心配そうな表情で駆けてきた。

 「ダイシ。大丈夫だった?そちらの方は?」

 

 「うん、大丈夫だよ。この人はジョロッチじゃない、ジョロバケットさん。俺をこの世界へ召喚してくれた人だ。」

 そしてジョロッチの方を振り返りユーチェアを紹介する。

 

 「ジョロッチ、こちらユーチェア。森に不時着した俺を助けてくれたんだ」

 お互いに初めましてと挨拶している。

 

 「ユーチェア様。この度はダイシ様を助けて頂き、誠に有り難う御座います」

 

 「いえ…そんな…」

 ジョロッチの言葉にユーチェアが怪訝な顔をして俺を見てくる。何かな?

 

 その後、スレイダ村長の家で事の成り行きを説明する。参加したのは俺とジョロッチ、ユーチェアと村長、村の男衆が数人。皆で机を囲み話をする。

 

 ジョロッチの補足を受けながらざっとあらましを伝えると、ユーチェアが泣きそうな顔をして俺に攻め寄ってきた。

 「戦争なんて危険すぎる。私は行ってほしくない」

 

 「うん、でもその為に喚ばれたようなもんだしさ。大丈夫、すぐに終わらせて戻ってくるよ。ホラ、俺強いしね」

 優しく諭すように伝えるが、納得はいかない様子。

 

 「フム、ダイシ殿はこの村にとっても大事な御仁。無事に戻ってきて頂ける事を祈るしかないですな」

 スレイダ村長も誰に言うでもなく気持ちをまとめる。

 

 「皆、心配しないで。ちゃちゃっとやっつけて帰ってくるよ!!」

 しんみりしたので努めて明るく返す。

 

 「それではダイシ様、巫女神様もお待ちですのでそろそろ参りませんと」

 

 「うん、わかった。それじゃ、ちょっと行ってくるね。村の皆にも宜しく伝えておいて」

 

 村長の家の扉を開け表に出ようとした時

 「ダイシッ」

 ユーチェアが俺に飛びつきキスしてきた。その目には薄っすらと涙があった。

 ちょっ皆の前で!!とも一瞬思ったが優しく抱き支える。


 「気をつけてね…」

 寂しげに呟くその頭をポンポンと撫でる。

 

 「うん、行ってきます」

 

 ジョロッチと二人並び、飛行魔法で巫女っちの待つ戦車へと向かう。

 

 西の空は茜色に染まり始めていた。

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