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■第89話 海賊激闘編 ヒャッハー!海は最高や!

戦いの後、海は牙を隠していなかった。

マグロが飛び、タコが燃え、クジラが笑った。

それでも船は、前へ進んだ。


■ 新たなる航海の始まり

朝露が残る港に、希望の光が差し込んでいた。

「また出発やな」

さくやが潮風に髪をなびかせながら言った。

「うん。今度は戦いやなくて、冒険や」

リアンが舵を握りながら答える。その顔に、緊張はない。ただ純粋な期待だけがある。

「拙者、今度こそ切腹せずに済むでござろうか」

「海の冒険に切腹は関係ないと思うで」

「……そうでござるな。では安心でござる」

現場監視システムから爆音社長の声が届いた。

「ええか!今回の船は前回より武装改良済みやで!適当にボタン押したら全滅やから気ぃつけや!あと面白そうな連中おったら拉致して連れてこい!」

「……また始まった」

さくやが苦笑いする。

リアンが新しい武装システムの説明書を開き、首を傾けた。

「なあ、このボタン……前の赤いボタンと似てるけど」

「触らんといて!!」

さくやとジュウベェの声が重なった。

師匠の穏やかな声が続いた。

「どこへ向かうかより、何に出会うかの方が大切なこともあります。海を信じて進んでください」

「……師匠らしいな」

さくやが微笑んだ。

リアンが静かに舵を握り直した。

「行こか」

船は力強く波を切り裂き、大海原へと向かっていった。


■ 1日目:ロケットマグロ艦隊、来襲

航海が始まって最初の夜が明けた頃、見張りが叫んだ。

「なんか……来てるで!!」

水平線の向こうから、無数の黒い点が迫ってくる。最初は鳥かと思った。しかし違った。

「……マグロや」

リアンが目を細めた。次の瞬間、その目が輝いた。

「しかも……ロケットマグロや」

「ロケットマグロ!?そんなんおるの!?」

どどどどどどどどどど!!!!

マグロの大群がロケットのように船に突撃してきた。一匹一匹が恐るべき速度で、船体に激突する。

しかし——

ガキン!ガキン!ガキン!!

爆音社長が作り上げた特殊装甲が、マグロを次々と弾き飛ばした。左へ飛び、右へ飛び、後方へ吹き飛んでいく。船体には傷一つつかない。

甲板の全員が息をのんだ。

「……社長の船、ほんまにすごいな」

さくやが震える声で言った。

「ああ。びくともせえへん」

リアンが満足そうに船体を撫でた。

「ヒャッハー!!!」

全員が振り返った。

操縦席でリアンが拳を振り上げていた。目がキラキラと輝いている。

「ロケットマグロ、初めて見た!!最高や!!ヒャッハー!!!」

「最高ちゃうやろ!!当たってるんやけど!?」

「でも弾いてるやろ!!社長の船、最強や!!ヒャッハー!!!」

さくやが頭を抱える。

ジュウベェが厳かな顔で言った。

「……リアン殿、もう少し落ち着きを——」

どごん!!特大のマグロが船首に激突し、甲板が大きく揺れた。

ジュウベェが盛大にすっ転んだ。

「……無念……切腹……」

「切腹は関係ないやろ!!」

マグロの群れが去った後、甲板には静寂が戻った。リアンだけが「最高やったな……」と余韻に浸っていた。


■ 2日目:巨大タコと火炎放射器

二日目の夜明け前、船が突然大きく揺れた。

甲板に飛び出すと、船体に巨大な触手が巻きついていた。海面から現れた巨大タコが、船をゆっくりと締め上げようとしている。触手の一本だけで、船の幅ほどもある。

「で、でかい……!!」

リアンが青ざめた。

ジュウベェが刀を抜いた。

「拙者が!!」

触手に斬りかかるが、弾かれてしまう。

「かたい!!」

「深海のタコは皮膚が硬いんや……」

リアンが冷静に言いながら船内の装備を漁り始めた。そして奥から何かを引っ張り出してきた。

「……なあ、これなんやろ」

「火炎放射器や」

さくやが叫んだ。目が爛々と輝いている。

「なんで知っとるの!?」

「爆音社長が積んどいたんやろ。たぶん」

「貸して」

「え?」

さくやが火炎放射器をひったくった。

「貸してって……さくや、使えるの?」

「知らん」

「知らんて!!」

さくやが火炎放射器を構えた。巨大タコの触手が迫ってくる。

「ヒャッハー!!!」

ボッ——!!

火炎放射器が炸裂した。触手が炎に包まれ、タコが驚いて海中へ引っ込んでいく。さくやが追いかけるように炎を放ち続けた。

「ヒャッハー!!もっとや!!もっと燃やしたる!!」

「さくや……怖い……」

リアンが引いていた。

「落ち着くでございます!!」

ジュウベェが全力でさくやを止めに入る。

やがて巨大タコは完全に姿を消した。海面に静寂が戻る。

しばらくして、甲板にふわりと甘い匂いが漂ってきた。

「……なんか、ええ匂いしてきた」

リアンがぽつりと言った。

「タコ焼きの匂いや」

「……焼けたんかな」

「焼けたんかな、て!!」

ジュウベェが遠い目をしながら言った。

「……もったいないでござるな」

「食べようとするな!!」

さくやだけが火炎放射器を抱えたまま、まだ興奮冷めやらぬ様子だった。

「……もう一回やりたいな」

「絶対あかん!!」


■ 3日目:クジラの背中

三日目の朝、海は穏やかだった。

昨日の騒ぎが嘘のように静かで、水面がきらきらと光っている。

「今日は何もないといいな……」

さくやがそう呟いた瞬間——

ゆっくりと、船が持ち上がった。

「……え?」

船体の下から、巨大な何かが浮上してきた。黒く滑らかな背中が、海面を割って現れる。

クジラだった。

体長は船の何倍もある。しかし動きは驚くほど穏やかで、まるで船を壊さないよう気を遣っているようだった。

「……乗った」

さくやが呆然と言った。

「クジラに……乗った」

リアンが静かに頷いた。

「大丈夫や。ゆっくりしてたら下ろしてくれる」

「なんでわかるの?」

「乗ったことあるから」

「いつ!?」

「昔」

「昔て!!」

その時——

「ヒャッハー!!!」

全員が振り返った。

ジュウベェが船首で両手を広げ、クジラの背中に仁王立ちしていた。

「クジラの背中でござる!!武士の生涯でこのような経験は二度とないでござる!!ヒャッハー!!!」

「ジュウベェが崩れた!!」

「ヒャッハー!!海よ!!大自然よ!!!」

「どうしたんジュウベェ!!」

リアンが穏やかに言った。

「武士も、たまに崩れる」

「たまにでいいんかい!!」

クジラはゆっくりと海面を漂いながら、やがて静かに潜り始めた。船体がそっと海面に戻される。まるで大きな手に乗せられ、丁寧に下ろされたようだった。

ジュウベェが名残惜しそうに海を見つめた。

「……もう一度乗りたいでござる」

「さくやの火炎放射器といい……みんなどうかしてるわ」

リアンだけが静かに笑っていた。


■ リアンの島、到着

さらに数日後——

「見えてきたで」

リアンの声に、いつもと違う温かみがあった。

水平線の向こうに、深い緑の島影が現れた。深い緑の山々、白い砂浜、透き通った青い海。甘い花の香りが風に乗って漂ってくる。色鮮やかな鳥たちの鳴き声が、遠くから聞こえてきた。

「……きれいやな」

さくやが呟いた。

「うん」

リアンの目が、懐かしそうに細くなった。

「リアン……ここ、知ってる島?」

「うちの島や」

「え?」

「故郷や」

さくやとジュウベェが顔を見合わせた。

「……師匠が海を信じて進めって言うてたけど、故郷に着くとは思わんかったな」

「海が連れてきてくれた」

リアンが静かに笑った。その笑顔が、夕陽に照らされて温かく光っていた。


■ 990人のリアン、お出迎え

港に近づくにつれ、岸壁に人影が増えていった。

全員リアンだった。

990人のリアンが、静かに船を待っていた。

「おかえり」

「おかえり」

「おかえり」

990人が、同じトーンで同じ言葉を言った。

さくやがリアンに聞いた。

「……仲間?」

「うん、みんなリアンや」

「そっか」

それだけだった。さくやもジュウベェも、特に驚かなかった。小さきものとはそういうものだ。1個体1000人——それが当たり前の世界だった。

990人のリアンが、一斉に奪ってきた船を見た。

「ええ船やな」

「ええ船やな」

「ええ船やな」

「……全員同じこと言うてるな」

さくやがぽつりと言った。

「リアンやから」

「まあ……そうやな」

ジュウベェが静かに頷いた。

「……これがリアン殿の故郷でござるか」

「うん」

リアンがあっけらかんと笑った。

「ゆっくりしていき」

990人のリアンが、同時に頷いた。

夕陽が島を金色に染めていく。甘い花の香りと潮の匂いが混ざり合い、どこか懐かしいような温かさが漂っていた。

さくやは島を見渡しながら、ふと思った。

リアンがあっけらかんとしている理由が、少しだけわかった気がした。こんな島で育てば、そうなるかもしれない。

「……ええ島やな」

「うん」

リアンが、静かに笑った。




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#リアンヒャッハー最高や

#さくやヒャッハー火炎放射器

#タコ焼きの匂いがした件

#ジュウベェヒャッハー大自然よ

#クジラに乗ったことある昔

#990人のリアンがお出迎え

#ええ島やな




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