表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
90/162

■第87話 海賊激闘編 百の刃と赤いボタン

静寂は、突然終わった。

刃が月に光り、海が炎に染まった。

それでも小さきものたちは、前へ進んだ。

 

■ 静寂を破る襲撃

夜の海は鏡のように静かで、満月が水面に銀色の道を描いていた。

さくやが甲板の手すりにもたれ、遠くの島影を眺めていた。

「明日には……絶対救い出せる」

そう呟いたその時だった。

水面に、黒い影が浮かんだ。最初は小さな点だった。しかし動きには明確な意図があった。じわりじわりと、しかし確実に近づいてくる。

「……来よった」

さくやの声が低くなった。

影は瞬く間に大きくなり、小型ボートの輪郭がはっきり見えた。赤いバンダナを巻いた者たちが、音もなく近づいてくる。一艘、二艘、三艘……次々と現れる。

「全員、起きて!!」

さくやの声が甲板に響いた瞬間、リトルレッドたちが一斉に乗り込んできた。

その数、ざっと三百人。

錆びた剣、重い斧、鈍く光る武器が甲板を埋め尽くす。どこを向いても赤いバンダナだらけだった。

「おとなしゅうしとけや。痛い目見たくなかったらな」

低く、冷たい声だった。笑いも余裕もない。仕事として来ている、そういう目をしていた。

甲板の空気が凍りつく。

 

■ ジュウベェ、覚醒

船室から、一つの影が静かに現れた。

リトルジュウベェだった。

いつもの軽口も、切腹ネタも、今この瞬間だけは消えていた。目が、違った。

「……仲間に、手を出すな」

静かな声だった。しかしその言葉が甲板に落ちた瞬間、リトルレッドたちの動きが止まった。

抜刀。

月光に照らされた刀身が、銀色の光を放つ。

第一陣が殺到した。しかしジュウベェの動きは流水のように滑らかだった。刀を鞘に収めたまま、体捌きだけで一人目を投げ飛ばす。二人目を躱す。三人目の腕を取り、地面に叩きつける。

「な、なんやこいつ……!」

「ただの武士ちゃうぞ!!」

レッドたちが叫ぶが、ジュウベェの表情は冷静そのものだった。師匠の教えが、体を通して自然に繰り出される。次々と海賊たちが転がり、縄で縛られていく。

さくやが呆然と見つめていた。

「……ジュウベェって……そんなに強かったんや……」

「当然でござる。ただ、普段は出番がないだけでござる」

縄を結びながら、ジュウベェがさらりと言った。


■ 炎上する海

「さて……」

さくやの目が険しく光った。

撤退しようとする小型ボートを見据え、指がスイッチに触れる。

ボンッ——

小型ボートが轟音とともに吹き飛んだ。火花が夜空に舞い、海面に白い水柱が立つ。

「逃がさへんで」

さくやが静かに言った。

ジュウベェが縛り上げた海賊を見下ろし、刀を抜いた。目がギラリと光る。

「拙者……人の皮を剥いだことはないのでござるが……」

「ちょっと待って!!」

さくやが全力で割り込んだ。

「それ、やらんでええから!!絶対やらんでええから!!」

「しかし社長殿が……」

「社長もそんなこと言うてへん!!たぶん!!」

「……たぶん、でござるか」

「……たぶん、や」

二人の間に微妙な沈黙が流れた。縛られたレッドたちが、その会話を聞きながら青ざめていた。

 

■ リアンの決断

その時——沖合から、黒い影が迫ってきた。

リトルレッドの大型船だった。船首には巨大なドクロマーク。武装した海賊が甲板にびっしりと並んでいる。

「増援……!」

さくやが息をのんだ。

操縦席のリアンは、赤いボタンを見ていた。

昨日、島を一つ消したボタン。押してはいけないと、全員がわなわなしながら決めたボタン。

「……まあ、ええか」

リアンがあっさり言った。

「ちょ、待って——」

「ごめんなさいやで~」

にっこり笑いながら、リアンが赤いボタンを押した。

カチッ。

どごぉぉぉおおおん!!!

巨大な水柱が立ち、リトルレッドの大型船が木片と帆布に変わって空中を舞う。衝撃波が海面を駆け、遠くの島々まで届いた。

甲板の全員が吹き飛ばされそうになりながら、手すりにしがみつく。

静寂が戻ってきた。

「…………リアン」

さくやがぼそりと言った。

「なに?」

「『ごめんなさいやで~』って……なんやねん」

「ごめんなさいやで~」

「今言うな!!そして笑うな!!」

「でも、大型船おらんくなったやろ」

「……それはそうやけど!!」

甲板に怒号とため息が重なった。

 

■ 島への上陸

黒い岩の要塞が、目の前に迫っていた。

「……青いボタン、押したら上陸できるかな」

リアンが操縦席でぽつりと言った。

「押さんといて!!」

さくやたちの声が重なった。

「絶対押さんといて!!」

「でも——」

「別の方法で上陸する!!ボタンは触らん!!」

小型ボートを降ろし、岸壁に向かう。崖をよじ登り、要塞の壁を乗り越える。ジュウベェたちが先頭に立ち、残党を次々と制圧していく。

建物の奥へ、奥へ——

そして、牢屋の扉の前に辿り着いた。

 

■ 感動の再会

扉を蹴破った瞬間——

「遅いやないかーい!!」

捕らわれていたさくや100名が、満面の笑顔で立っていた。

疲れた様子もなく、元気いっぱいに手を振っている。

「……めっちゃ元気やん」

救出に来た側のさくやが、思わず脱力した。

「当たり前やん!ここのご飯、意外とおいしかってんで!」

「そっちの話は後で!!」

ジュウベェが目に涙を浮かべながら言った。

「……無事で、よかったでござる……本当に……よかった……」

その言葉に、牢屋の中のさくやたちも、救出に来たさくやたちも、全員の目に涙が光った。

リアンは扉の前で、静かに笑っていた。

「帰ろう。みんなで」


■ 夜の海へ

全員を乗せた船が、夜の海を進んでいく。

「ジュウベェ、麻袋の中で何回切腹したん?」

「……数えておらぬでござる」

「だいたいでええ」

「……七回でござる」

「多!!」

笑い声が波音に混じって広がっていく。

リアンは舵を握りながら、仲間たちの笑顔を見渡した。全員いる。全員無事だ。

「……帰ろ」

その一言が、夜の海に静かに溶けていった。




#小さきもの海賊激闘編

#300人の赤いバンダナ

#ジュウベェ覚醒

#普段は出番がないだけでござる

#人の皮を剥いだことはないのでござるが

#ごめんなさいやで~にっこり

#青いボタンは触らん

#遅いやないかーい

#ご飯意外とおいしかった

#麻袋の中で七回切腹


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ