■第232話 ジャングルの光編 火矢の夜、三つ巴!
着陸地点が見つからない。光鉱石の反応もない。
だが夜、火矢が拠点を襲った。
このジャングルには、三つの勢力が睨み合っていた。
■ 探索——やっぱり見つからない
翌日、さくやとユーリが飛行船で探索へ向かった。前回は川沿いを重点的に探したが、着陸地点は見つからなかった。今度はジャングルの奥を中心に探してみることにした。
飛行船がゆっくりと高度を上げ、川から離れてジャングルの内部へと進んでいく。眼下には相変わらず緑の海が広がっている。時折、桜や梅のような花が咲くエリアが見えるが、着陸できるような広場はない。
「川沿いは無理やったけど、ジャングルの奥なら開けた場所があるかもしれへんな」さくやが呟いた。「……やっぱり無いな」ユーリが目を細めて遠くを見据えた。ジャングルは果てしなく続いている。木々は途切れる気配がない。
帰りの燃料も踏まえて限界まで探索したが、着陸できそうな広場は発見できなかった。「また明日や」さくやが溜息をついた。飛行船は拠点へと戻った。
■ 作戦会議——歩くしかない
拠点に戻ると、皆で作戦会議となった。焚き火を囲み、地図を広げる。しかし、どこを見ても答えは出ない。
「歩くしかないな」ラーシュが腕を組みながら言った。「でも、このジャングルとんでもなく広いぞ」ユーリが不安そうに言う。「まあ、意外と近くにあるかもしれへんで」「そんなわけないだろ」二人のやり取りに、さくやが割って入った。「無線が繋がるかを確認しながら、川沿いを進もうや」「今夜は、地図をもっと検証してみます」エレナが地図を覗き込んだ。「チアゴの村はどうしますか?」レイナが尋ねた。「明日にしよう」
さくやが答えた、その時だった。
ヒュン——
鋭い音が響いた。拠点の建物から、火が上がった。「何や!?」さくやが振り返ると、さらに火矢が撃ち込まれてくる。ヒュン、ヒュン、ヒュン。矢は火を纏い、次々と建物に突き刺さった。
■ 火矢の夜
「ラーシュ!」「任せろ!」ラーシュが盾を構え、飛来する火矢を次々と弾いた。キンキンキン——金属音が連続する。腕がじんじんと痺れる。それでも盾を下ろさない。
さくやたちは拠点の建物の消火にあたった。水をかけ、燃えた部分を叩き消す。幸い荷物は無事だったが、建物の一部が焼け焦げてしまった。「あいつら!」ラーシュが敵に向かって走り出そうとした、その時だった。
ジャングルの反対側から、別の人影が飛び出してきた。チアゴだ。「タウリ!ここは私たちの縄張りだ!出てけ!」チアゴの声が響く。「なんだこいつらは!ジャングルを飛び回っているぞ!出て行かせろ!」タウリと呼ばれた者たちが、チアゴに向かって叫び返した。
チアゴは太い槍を構え、タウリはごつい剣を振りかざした。ガキン、ガキン、と金属音が響く。槍と剣が火花を散らした。「ガハハ!まだまだ!」チアゴが槍を一閃させると、タウリが後ろに飛び退いた。しばらく抗戦した後、タウリはジャングルに消えた。「待てコラ!」チアゴが追いかけようとしたが、すでに姿はない。
■ 三つ巴の構図
チアゴが息を切らしながら戻ってきた。「ガハハ!やっちまったな、タウリの野郎!」豪快に笑いながら槍を肩に担ぐ。「すまんな!お前たちの建物、焼かれちまった!」「ええねん。まだ修理できるし、怪我人も出てへんし」さくやが笑って答えた。
チアゴが説明を始めた。「ここは川の左岸側でな、三つの部族が縄張りを持ってる。チアゴ、タウリ、ヤラモだ!」「三つ?」「私たちがこの最下流!中流がタウリ、上流がヤラモだ!ヤラモの村から上流は、村はない!」
さくやが地図を見ながら尋ねた。「人はいないのか?」「いやー、わからねぇな。行ったことがない。川に流れてくるもん見ると、何かいそうな気はするけどな!」
「右岸側にもまた別の部族がいそうだが、この大河を渡れる部族がいねぇんだ」さくやが川を見た。「川の流れは速くなさそうだけど」「中央の深いところには、巨大なピラニアが生息してんだよ!木の船は底を食い破られる!川に落ちたら終わりだ!ガハハ!」
「……はよ知りたかったな」さくやが苦笑した。もし飛行船が川の上で墜落していたら、と考えるとゾッとする。
「なんで戦ってるん?」「ジャングルを守るためだな!ヤラモとタウリは、部外者が来ることを拒否してる。ガチガチの連中だ!」「一対二ってことか?」「いんや!タウリもヤラモも、自分たちがジャングルの統治者だって言ってんだ!三つ巴ってことだ!」「私たちは、外から来る者を拒まねぇ!でも、タウリとヤラモは違う!あいつらはジャングルを閉ざそうとしてやがる!だから、私たちは戦う!ガハハ!」
チアゴの目に、強い意志が宿っていた。そして、急に表情を変えて言った。「そういえば、あの白い食べ物!またくれねぇか?あれ美味かったんだよ!」
さくやがボソッと突っ込んだ。「……ホンマに好きなんやな」「当たり前だ!あんな美味いもん初めて食った!ガハハ!」「今度村に来たら、もっとたくさん作ってさしあげますね。ウフフ」レイナが微笑みながら言った。「おお!約束だぞ!村のみんなも楽しみにしてるんだ!」チアゴは嬉しそうに槍を振り回した。
■ 焼け焦げた壁と、三つ巴と
夜が更けてきた。チアゴは村に戻り、さくやたちは焚き火を囲んだ。
「拠点が一部焼けたのは痛いけど、修理すれば大丈夫やな」「飛行船が無事でよかったです」エレナが安堵したように言った。「問題は、タウリとヤラモやな」さくやが地図を見つめた。「上流に光鉱石があるとしたら、彼らの縄張りを通らなあかん」
「チアゴが味方でよかったな」ラーシュが言った。「ほんまやな。もしチアゴも敵対してたら、どうなってたか」さくやが苦笑した。「あと、シチュー外交が効いてるな」「食の力は偉大ですね」エレナが真顔で言った。「チュールといい、シチューといい……」「うちら、食べ物で世界を制覇しとるな」さくやが笑った。
焚き火の火が、静かに燃えている。遠くから太鼓の音が聞こえてきた。チアゴの村からだろうか。それとも、タウリやヤラモの村からだろうか。
ジャングルの探索は、予想以上に困難なものになりそうだった。
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