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■第230話 渓谷の光編 救出作戦

戦争ではなく、隠密で行く。

二百十人の小さきものたちが、夜の海を渡った。

ファリダの救出作戦が、今、始まる。


■ 師匠のオフィス——作戦会議

師匠のオフィスでは、爆音社長と秘書たちが地図を囲んでいた。テーブルの上には、さくや、シュウメイ、シャドウが立っている。30cmの三人が、人間サイズの地図を見上げながら話し合いに加わっていた。

「戦艦だな。既に三隻完成している。戦争だ」爆音社長が腕を組んで言った。

「戦争は推奨しませんよ」師匠が静かに首を横に振る。「サムライたちもばらけていますし、ラーシュもいない状況で正面衝突は難しいと思います」

師匠は地図上の港を指差した。「隠密行動隊で行きましょう。高速船に分散して上陸し、ファリダを救い、王族軍が戦える状況にする。これがベストだと思います」

爆音社長がニヤリと笑った。「超高速船にモデルチェンジするから、一日くれよ」「できるんですか?」「任せとけ。でもよ、隠密行動って誰がやるんだ?」

師匠がシュウメイとシャドウを見た。「この子たちです」

シュウメイが爆音社長を見上げて、にっこりと笑った。「あなた美人だから、あまり怖くないアルよ!」「へー、正直な奴だな」「私、嘘はつかないアルよ!」爆音社長は思わず笑った。

「こいつら信用できるのか?」「竹林の光鉱石発掘現場でサポートしてくれた子たちですよ。秘書たちも太鼓判を押しています」「わかったわかった」爆音社長が手を振った。「しかしまあ、ずっと面白いな」

師匠はシャドウがもともと敵であったことは黙っていた。今は味方だ。それで十分だ。


■ さくやの決意

その夜、帰還した十人のさくやたちも交えて、改めて作戦会議が行われた。

地下水路での逃亡生活、スキンヘッドたちの配置、城の構造——さくやたちは詳細に報告した。同じ顔が十体、同じ声で次々と話す。爆音社長が何度か目を細めていたが、黙って聞いていた。

報告が終わると、さくやの一人が手を挙げた。「私も作戦指揮官として同行します」「さくや、無理しなくていいんですよ」師匠が言ったが、さくやは首を横に振った。「ファリダを助けたいんです。それに、あそこの地理は私たちが一番よく知ってますから」師匠は静かに頷いた。「……分かりました。頼みますよ」


■ 深夜の出航

深夜、超高速船は港を出発した。

四艇の船が、月明かりの下で海面を滑るように進んでいく。爆音社長の改造は、見事に成功していた。波を切る音だけが、静寂の海に響いている。

一艇目の船上で、シュウメイが元気よく叫んだ。「レオンとファリダとかいうドンくさいやつの救出作戦アルね!」隣でシャドウが、ぼそりと呟く。「俺の足を引っ張るなよ」「引っ張るのはシャドウアルね!」

さくやが、二人を見ながら苦笑した。「まさか、あんたらがここに来るとはね」「マケダがな、世界は広いから村を出た方が面白いアルって言うたアルよ」シュウメイが嬉しそうに答えた。「俺は知ってたけど、こいつが心配でな……でも、俺の二百人の同胞は、こいつの村を守っているよ」シャドウが珍しく口を開いた。

「そうなんだ……シュウメイの村での暮らしを聞かせてよ」さくやが言った。

シュウメイは目を輝かせて話し始めた。竹林に囲まれた小さな村のこと。みんなで協力して暮らしていること。マケダが訪れた日のこと——。

やがて、話が途切れた。海風が頬を叩く。月が波に揺れている。シャドウが静かに空を見上げた。「……必ず助け出す」さくやとシュウメイが、静かに頷いた。


■ 上陸——二百十人の潜入

二日後の早朝、超高速船は目的地に到着した。

ファリダの国の北側、人目につきにくい入り江だ。まだ夜明け前で、空が薄紫色に染まり始めている。四艇が静かに接岸した。エンジンの音が消えると、波の音だけが残った。

二百十人が音もなく上陸した。シュウメイ百人、シャドウ百人、さくや十人。全員が30cm。夜明け前の薄暗さの中、砂浜を素早く移動していく。

さくやが地図を広げた。「ここから城までは、下水道を使って進む。マンホールの位置は全部頭に入ってる」「敵の配置は?」シャドウが低く尋ねた。「城の周辺に集中してる。地下牢はここや」さくやが地図上の一点を指差した。「ファリダとリトルレオンは、必ずここにいる」

シャドウが地図を見つめた。スキンヘッドたちの配置——かつての仲間たちだ。その目に、一瞬だけ揺らぎが見えた。だがすぐに、静かな決意に変わった。

さくやがWEBを開いた。画面に師匠の顔が映る。「到着しました。これから潜入します」「分かりました。気をつけて」師匠が静かに言った。

画面が閉じた。

「よし、行くアルよ!」シュウメイが拳を突き上げた。

二百十人の30cmが、静かに街へと潜入していった。夜明け前の砂漠の都市。スキンヘッドたちの巡回が続いている。だがその足元を、誰も気づかないまま、小さな影たちが駆け抜けていく。

ファリダとリトルレオンの救出作戦が、今、始まった。




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