■第214話 遥かなる光編 喋る忍者とカイザー様への無限の愛
夕暮れの村に現れた新たな敵——リトルシャドウ軍団。 彼らの特徴は戦闘力よりも、異常なまでの饒舌さとカイザーへの狂信的な愛。 果たして村の戦士たちは、この奇妙すぎる敵に勝利できるのか?
■完璧すぎる忍者 ―プロ意識の暴走―
夕暮れ時。
突然、広場に黒装束の小さきものたちが現れた。
だが——堂々と正面から歩いてくる。
「失礼いたします」
90度の完璧なお辞儀。
「弊社リトルシャドウ、営業部の者です。本日はお忙しい中、貴重なお時間をいただき——」
「営業部って何やねん!」
さくやがツッコむ。
「カイザー様よりご依頼を承り、光鉱石の買取査定に参りました」
名刺を差し出す忍者。
「買取!?」
ラーシュが困惑。
「はい。適正価格での買取をお約束いたします。無理な営業は一切いたしません」
「……なんか普通の会社やん」
■企業説明会地獄 ―止まらないプレゼン―
「それでは弊社概要をご説明いたします」
忍者がプレゼン開始。
「創業50年、従業員1万名、年商——」
「誰も聞いとらん!」
「主力事業は暗殺、諜報、宅配便——」
「宅配便!?」
シュウメイ驚愕。
「はい。『忍者宅急便』として好評をいただいております」
「マジで何でも屋やん」
「福利厚生も充実しており、有給取得率98%——」
「ホワイト企業アピールアル!」
「社員旅行は年2回、カイザー様も一緒に温泉に——」
「温泉!?」
全員ズッコケ。
「カイザー様の入浴姿は神々しくて——」
「セクハラ発言やろそれ!」
■戦闘中実況中継 ―プロの解説付きバトル―
ついに戦闘開始。
忍者が手裏剣を投げる——が、同時に実況が始まる。
「ただいまの技『カイザー流回転投法』、ポイントは手首の角度15度でして——」
ラーシュが盾で防ぎながら。
「実況すんな!」
シュウメイがヌンチャク攻撃。
「おお、見事なフォームですね。どちらの流派で?」
「パンダ師匠アル」
「パンダ流!これは珍しい!我々は『カイザー流猫拳』の使い手でして——」
「猫拳って何やねん!」
極めつけは戦闘中のカイザー自慢大会。
「カイザー様の今朝のお召し物、お似合いでしたね」
「ええ、あの青いネクタイが素敵で」
「カイザー様のファッションセンスは抜群ですから」
「今度スタイリストに弟子入りしたいです」
「ファッション談義してる場合か!」
■心理的消耗戦 ―疲れるのは味方だった―
1時間経過。
へとへとになっているのは村の戦士たち。
「何この虚無感……」ラーシュがぐったり。
「戦ってるのに達成感がない……」ユーリも消耗。
忍者たちは相変わらず元気。
「我々の体力はカイザー様直伝の『愛のパワー』で無尽蔵なんです!」
「愛って何やねん……」
大虎も完全に困惑。
座り込んで首をかしげている。
「虎も理解放棄したアル……」
■さくやの逆襲 ―カイザー様解析作戦―
「待て!」
さくやが戦闘を止める。
「お前ら、カイザーのこと本当に知ってるんか?」
「もちろんです!愛しています!」全員で合唱。
「ほな質問や。カイザーの本名は?」
「……え?」
「本名ですよね……えーっと……」
沈黙。
「年齢は?」
「……わかりません」
「身長は?」
「……測ったことが……」
「趣味は?」
「……そういえば……」
完全に詰んだ忍者たち。
「待って!優しいんです!」
「それだけ?」
「笑顔が素敵で!」
「具体性ゼロやん!」
「あと、いい匂いがして!」
「もう完全にストーカーやろ!」
■集団カウンセリング ―アイデンティティクライシス―
忍者たちが地面に座り込む。
「私たち……何も知らない……」
「忠臣失格だ……」
「カイザー様に申し訳ない……」
完全に戦闘放棄して自己分析開始。
「そもそも何で忠誠を誓ったんだっけ?」
「給料がよかったから……」
「福利厚生に惹かれて……」
「温泉旅行が楽しそうで……」
「完全に就職理由やん!」
さくや呆れる。
「これは大問題です!」
「今すぐカイザー様研究を開始しましょう!」
「賛成です!」
その隙にラーシュが網を準備。
シュウメイたちが包囲完了。
「今や!」
バサッ!
「あっ!研究会の最中に!」
一網打尽成功。
■学術研究所設立 ―真理の探究者たち―
木に吊るされた忍者たち、しかし研究は止まらない。
「まず基礎データの収集から」
「身長体重スリーサイズ」
「好きな食べ物嫌いな食べ物アレルギー」
「血液型星座動物占い」
「学歴職歴恋愛歴」
「もはや探偵やろ!」ユーリ突っ込み。
「これは学術研究です!」
「『カイザー学』の確立を目指します!」
「論文『我が主君カイザー様の実態調査』執筆予定!」
「博士号取る気かい!」
夜が更けても研究継続。
「カイザー様の睡眠パターンについて仮説を発表します」
「興味深いですね!お聞きしましょう」
「まず就寝時刻ですが、統計学的に——」
「統計学まで持ち出したアル!」
翌朝。まだ続いている。
「カイザー様の歯磨き習慣に関する考察」
「これは重要な研究テーマですね」
「学会で発表しましょう」
「学会まで作る気かよ!」
全員で耳栓を探しに走る。
師匠……助けて……」さくやの心の叫び。
こうして村史上最もアカデミックな戦いは、 『カイザー学会』設立という想定外の結末を迎えた。
「真理に近づくため、我々の研究に終わりはありません!」
「誰か止めて……」
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