■第209話 遥かなる光編 パンダの来訪
翌朝、外に出ると、パンダが並んでいた。
傷だらけで、だらりと座っている。
まるで病院の待合室のようだった。
■待っていた
「……え?」さくやが目をこすった。
十頭のパンダが、コテージの前に座っている。白と黒の毛並みは泥と血で汚れ、あちこちに傷が見える。虎にやられたのだろう。
しかし、その表情が妙に人間くさい。疲れた会社員のような、諦めたような、それでいてどこか図々しい雰囲気だ。
「驚くところやけど、元気なさ過ぎてこっちも驚けんな……」さくやが呟いた。
「傷だらけですね……」エレナが近づいて観察した。「手当しましょうか」
「そうやな。放っておくわけにもいかんし」
その時、ユーリが大声で言った。
「おい、こっちこい」
パンダたちは面倒くさそうに顔を上げた。
ラーシュがパンダのところへ行き、尻をぽんぽんと叩きながらエレナの方へ促した。
「ほら、動け」
パンダたちは渋々立ち上がった。歩き方までおっさんくさい。
■手当て
エレナが傷を確認しながら言った。
「皆さん切り傷だらけですね。深い爪痕が何本も走っています」
「縫合が必要な傷もありますね……」
パンダたちは大人しく手当てを受けた。消毒液を塗られても、針で縫われても、じっと耐えている。
手当てが終わると、パンダたちは包帯でグルグル巻きになった。まるでミイラのようだ。
「傷が深いところは縫いましたから、数日は包帯しておきましょうね」エレナが優しく言った。
レイナが付け加えた。
「また来てください。消毒したり包帯を変えたりしますから」
パンダたちは、わかったようなわからないような顔で頷いた。
そして笹を食べ始めた。包帯を巻かれたまま、夢中で頬張っている。
「食欲はあるんやな……」さくやが苦笑した。
ユーリがパンダを見ながら言った。
「お前らにとって竹林は天国やな。無限にありそうやし、でかいし」
パンダは何だか満足そうだった。
■ガイド
探索メンバー二十五人が出発の準備を始めると、パンダの半分の五頭がついてきた。
「え、来るん?」
五頭の包帯パンダは、何も言わずについてくる。
さくやが理解した。
「竹林のことは何でも知ってるよって感じかな」
「ガイドってこと?」ユーリが嬉しそうに言った。
「そういうことやろな」
五頭の包帯パンダは、二十五人の探検隊を取り囲むように歩いた。前に二頭、左右に一頭ずつ、後ろに一頭。
「賢いな……」ラーシュが感心した。
その日、虎やイノシシの襲撃はなかった。パンダたちが警戒していたおかげだろう。
■竹の拠点
翌日、竹林の中に少し開けた場所を発見した。小川が流れ、地面も平坦だ。
「ここや」さくやが決めた。
そこに竹でコテージを作ることにした。竹を切り、組み立て、屋根を作る。
パンダたちは、重い竹を運ぶのを手伝った。力持ちで、小さきものの三倍は働く。
「お前ら、意外と働くやん」ユーリが驚いた。
パンダは得意そうな顔をした。
竹のコテージが完成した後、全員が竹林拠点に移動した。元の拠点は緊急避難所として残した。
■警報装置
十頭のパンダの傷も概ね塞がったので、包帯を取った。
パンダたちは包帯が取れて嬉しそうだった。体を伸ばしたり、ぐるぐる回ったりしている。
「さて行こうか……」
全員で出発した。五十人の小さきものと、十頭のパンダ。
パンダたちは毎日、特に何をするわけでもなかった。小さきものの周囲を囲んで、のんびりと笹を食べている。
「お前ら、仕事してるん?」ユーリが聞いた。
パンダは笹を食べながら、満足そうに頷いた。
「してるらしいで……」さくやが笑った。
深い霧で遠くが見えない竹林の中では、パンダがのんびり過ごすことが、危険が迫っていないことを示していた。
パンダが慌てず、笹を食べ続けている限り、安全なのだ。
「ある意味、最高の警報装置やな」ラーシュが言った。
「確かに」
そうして、奇妙な一行は竹林の奥へと進んでいった。
十頭のパンダと五十人の小さきもの——誰が見ても、不思議な光景だった。
しかし、この竹林では、それが自然に思えた。霧の中、笹を食べるパンダの音だけが響いている。
「光る鉱石、どこにあるんやろなぁ……」さくやが呟いた。
「必ず見つかりますよ」レイナが微笑んだ。
「そうやな。絶対に見つける」
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