■第203話 風の行き先編 暴走列車の逆襲
列車の警笛が、港に響き渡った。
地面が、小刻みに揺れ始めた。
何かが、猛スピードで迫ってきていた。
■暴走列車
岩山のトンネルから、甲高い警笛が鳴り響いた。
拠点放送からアナウンスが流れた。
「もうすぐ鉄道が到着します。戦艦駅へ高速突入します。皆さん道を開けてください」
戦闘中のサムライたちがざわついた。
「戦艦駅? そんな駅あったか?」
「ない」
「繰り返します。まもなく暴走列車が突入してまいります。気をつけてください」
放送の声が徐々に慌てた口調になっていく。
「やばいから皆どいて。マジでどいて。本気でやばいから」
さくやが港のレールを見た。
海の拠点駅へ向かうはずのレールが、いつの間にか海に向けて切り替わっていた。レールの先端は港から戦艦の方向へ向かって急カーブを描いている。
「まさか……」
トンネルから轟音とともに列車が姿を現した。客車も貨物車もない、機関車だけの無人列車だ。煙突から黒煙を吹き上げ、ブレーキをかける様子もなく猛烈な勢いで突っ込んでくる。
「逃げろ」
サムライもスキンヘッドも慌てて左右に飛び退いた。敵味方関係なく、命がけの退避行動だ。
猛烈な勢いで進む無人の列車は、港に達するやいなや、まるでジャンプ台を駆け上がるように空中へ飛び出した。
空中を、列車が飛んでいた。
「嘘やろ……」さくやが呆然と呟いた。
戦艦に向かって一直線に向かう鉄の塊を見た銀髪の男が叫んだ。
「撃て」
敵戦艦の砲台が次々と火を噴いた。
空中で列車は直撃を受け、火花を散らした。そして次の瞬間——
「どごぁぁぁぁぁぁん」
耳をつんざく爆音とともに、巨大な火球が夜空を真っ赤に染めた。列車内にも爆薬が仕込まれていたようで、想像を絶する規模の爆発となった。衝撃波が港全体を揺るがした。
スキンヘッドもサムライたちも、爆風に巻き込まれて一緒に吹き飛んでいった。
「なんでござるかこれはぁぁぁ」ジュウベェの悲鳴。
「味方の攻撃で死ぬとは思わなんだぁぁぁ」シンゲンの嘆き。
戦闘船は爆破に巻き込まれて真っ二つに裂け、轟音とともに海中へ沈んでいった。戦艦も大きな被害を受け、甲板が黒焦げになりマストが傾いている。銀髪の男が顔を真っ黒にして咳き込んでいた。
スキンヘッド軍団は驚異的な身体能力で破片から破片へと飛び移りながら戦艦へ戻っていった。
「おのれ……次は万全の体制で来るからな。覚えておれ」
さすがに「おーい」とは言わなかった。
戦艦は黒煙を上げながら、海の拠点から離れていった。
■アナウンス
波間に消えていく船影を見ながら、さくやがぽつりと呟いた。
「列車に爆弾詰めて突っ込ませるって……」
こんなことができるのは、爆音社長だけだと思った。
拠点放送からアナウンスが始まった。
「いやぁお前らだいぶやばそうだったからさ、こういうのも用意してんねん。レール切り替えるの大変やってんぞ。計算も結構シビアでな。まぁでも上手いこといってよかったわ」
少し間があった。
「あ、列車は保険入ってるから大丈夫。心配すんな」
ジュウベェが吹き飛ばされた仲間を介抱しながら呟いた。
「お、おそろしいでござるな……」
周りでは爆風で吹き飛ばされたサムライたちが次々と起き上がっている。全身打撲程度で済んだようだ。
「これが味方の援護でござるか……」
「次からは事前に教えて欲しいでござる……」
エレナが冷静に報告した。
「敵戦艦、撤退を確認。戦闘船五隻中四隻撃破。敵の損害は甚大です」
「でも、また来るって言ってたな」ユーリが言った。
「次は万全の体制で、か……」ラーシュが腕を組んだ。
レイナが手を合わせた。
「海の神よ、空の神よ……次の戦いもお守りください……」
さくやが小さくため息をついた。
「あいつら絶対リベンジに来るやん……」
夜空には、まだ爆発の煙が漂っていた。
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