■第201話 風の行き先編 それぞれの持ち場
高地では、毎日誰かが走り回っていた。
海では、毎日誰かが海を見張っていた。
それぞれの持ち場で、それぞれの時間が流れていた。
■高地のユーリとラーシュ
ユーリは毎日、動物たちと高地を駆け回っていた。
オオワシに乗って空を飛び、黒ヒョウと森を駆け、ゴリラ一家と遺跡を探索し、チュール一家とサバンナを歩く。気づけば夕方になっていた。
ラーシュは別の方向へ向かっていた。
ハスキーに乗って、まだ踏み込んでいない区域を一人で走る。崖を登り、沢を渡り、地形を確かめていく。戦う相手はいないが、それでも体が動く。
夕方、二人が拠点に戻ると、大体同時だった。
「どうやった?」
「岩の向こうに、でかい滝があった」
「そっちは?」
「遺跡に、まだ掘れてない部屋があった」
それだけ話して、二人はそれぞれ飯を食った。
■海の拠点
海の拠点は、マダムの指示で防塞港へと改良されていた。
大砲などの装備が並び、城壁のように頑丈な壁が築かれている。戦艦も二隻待機していた。
リアンとレッドの巡視船は、近海を常にパトロールしている。
「なあ、レッド」
リアンが海を見ながら言った。
「何や」
「お前、本当に強いのか?」
「当たり前やろ。お前こそ、胡散臭いけど大丈夫か?」
「胡散臭いとは何だ」
「顔が胡散臭いねん」
「お前の関西弁の方が胡散臭いわ」
「ヒャッホー、言うやんけ」
二人は不毛な会話を続けながらパトロールしていた。だが、その目は真剣だった。海を見つめ、異変がないか常に警戒している。
マダムの言葉が、頭をよぎった。
「湖には光る鉱石が眠っている。ここを目指す相手も現れるかもしれません」
■三箇所の特定
一ヶ月かけて、飛行船とプロペラ機の訓練は熟度を高めていた。
その間、師匠とマダムが地質データを照らし合わせ、場所を絞り込んでいった。いずれも、小さきものが足を踏み入れられるかも謎な大自然の中だった。
三箇所が特定された。
師匠が地図を広げた。
「一箇所目は霧の竹林です。チンギスの村からさらに東へ、海を越えた先の大陸にあります。常に霧に覆われ、視界が悪く、方向感覚を失いやすい場所です。レイナ、植物や動物と話せるあなたの力が必要です」
レイナが頷いた。
「二箇所目は大峡谷です。西の砂漠の国のさらに先にあります。深さ数千メートルの峡谷で、飛行船でないと到達できません。風が強く、気流が複雑です。さくや、エレナ、お二人の操縦と判断力を頼りにしています」
さくやとエレナが顔を見合わせた。
「三箇所目は密林の森です。南のジャングルの奥地にあります。未知の動物、毒、病気——何があるかわかりません。ラーシュ、先頭をお願いできますか」
「ああ、任せろ」
「そして、ユーリ。大自然が相手です。あなたがいなければ、どこも辿り着けないかもしれません」
ユーリは少し間を置いてから、静かに頷いた。
■夜の集まり
その夜、さくやたちが集まった。
「いよいよ、出発やな」
「うん」とユーリが頷いた。
「データを正確に持ち帰ります」とエレナが言った。
「動物たちも、協力してくれるはず」とレイナが微笑んだ。
「誰も傷つけさせない」とラーシュが言った。
さくやは、一人一人の顔を見た。
「よし、行こう」
誰も返事をしなかった。でも、全員が頷いていた。
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