■第199話 風の行き先編 飛行船と緊急連絡
小さきものの知る地に、同じ光が眠っている。
マダムは、それを地図の上で指差した。
三箇所。いずれも、簡単には辿り着けない場所だった。
■マダムの解析
マダムの指示で、湖底の土砂も採取されていた。
数日後、マダムがラボに現れた。
「お待たせしました」
「わたしの方で土砂を解析し、類似する地質を検索しました。小さきものの知る地で、三箇所に確認できました」
師匠と爆音社長は顔を見合わせた。
(どうやってそんなん調べんねん……)
爆音社長は心の中で呟いた。マダムの情報網と解析能力は、いつも常識を超えていた。
「いずれも大自然の奥地で、簡単には到達できません」
マダムは地図を広げ、三箇所を指差した。西の山のさらに奥。東の大草原の果て。南のジャングルの深部。
「こりゃ、飛行機で移動するしかないな……」
爆音社長が呟いた。
その瞬間、師匠がピクリと反応した。目が、輝き始めている。
「飛行船を作ろう」
「は?」
「大きな滑走路もいらないし、船より移動は楽じゃないかな」
師匠の目は、完全に輝いていた。新しいものを作る時の、あの目だった。
さくやが素早く反応した。
「はいはいはいはい、始まったで」
さくやはドアを開けて廊下に向かって叫んだ。
「設計部隊、集合やーっ」
■緊急連絡
その時、別のさくやが息を切らして駆け込んできた。
「ファリダから連絡です」
全員がさくやを見た。
「レオンの鉱山周辺に、不審な軍勢が集結しているとのことです。王族軍が警戒態勢に入りましたが、相手の規模が大きく、対処しきれないかもしれないと」
爆音社長が立ち上がった。
マダムは静かに頷いた。
「あらあら……やはり動き出したようね。恐らく、新エネルギー鉱山の一つでしょう」
さくやが首を傾げた。
「海の拠点にも、ファリダが置いていった鉱石あるけど、光ってへんで」
「持ってきてもらえるかしら」
■二種類の鉱石
ジュウベェが、ファリダが置いていった鉱石を持ち込んだ。
黒く光る鉱石。湖底の光る砂利とは、明らかに違う。
エレナがすぐに解析を始めた。数時間後——。
「光る砂利と類似する成分です」
エレナが報告した。
「光る砂利ほどのエネルギーは発揮しませんが、石炭の数十倍はあります」
マダムは頷いた。
「光る鉱石にも、程度はいろいろあるようね。ただ、各地で動きが活発化してきた感じだわ」
師匠が尋ねた。「光る鉱石の存在は、もう把握されているのでしょうか?」
「わたしたちでも気付いたのよ。既に動いている機関があって当然だわ。ただ、三箇所はまだ探索段階というところじゃないかしら」
さくやが拳を握った。「軍勢……何に使うねん」
「戦争じゃないかしら。少ない燃料で動かせる大量兵器……」
マダムの言葉に、ラボの空気が静まり返った。
「先に見つけて確保したいところね。さくやの出番かしら」
マダムがさくやを見た。
「はいっ」
さくやは即答した。
■出発の準備
爆音社長が立ち上がった。
「ほな、飛行船作ってくるわ」
「そんなカジュアルな」
さくやが突っ込んだ。
師匠が尋ねた。「さくやと、誰が行きますか?」
「ユーリ、レイナ、エレナかな。ラーシュもいると安心やし」
エレナが付け加えた。「ラーシュがいると、理論値以上の安心感があります」
「せやな」
師匠が決断した。「では、各十名で五十人の部隊で、光る鉱石の探索をお願いします」
「はいっ」
さくやたちが声を揃えた。
爆音社長がニヤリと笑った。「いずれと思っていた試作品があんねん。それ改良するわ」
マダムがふふっと笑った。「頼もしいわね」
■飛行船、湖へ
翌朝、爆音社長が叫んだ。
「できたでー」
みんなが駆けつけると、巨大な飛行船があった。白い布で覆われた気嚢。頑丈な金属の骨組み。大きなゴンドラ。そして、プロペラ。
「乗れるのは五十人や。荷物も積める」
「じゃあ、テストフライトしよう」
飛行船はゆっくりと浮上した。プロペラが回り、前進する。
歓声が上がった——次の瞬間、飛行船は湖にゆっくりと墜落した。
どぼん。
静寂。
さくやがじっと湖面を見つめた。
爆音社長も湖面を見つめた。
「……知った風な口を」
爆音社長は踵を返し、ラボに消えた。
それから一週間、ラボから出てこなかった。食事だけが扉の前に置かれ、中からは金属音と怒鳴り声が聞こえてくる。さくやたちは扉の前を通るたびに、足音を殺した。
八日目の朝、扉が開いた。
「できたでー」
#小説 #ショートショート #ファンタジー #創作 #冒険 #探検 #発見 #ほっこり #キャラクター小説 #読書好きと繋がりたい




