■第188話 氷の城編 作戦と爆薬
知恵を出し合えば、道が見える。
それぞれの強みが、ひとつになる。
明日、行く。
■作戦会議
翌朝、レイナが描いた地図を広げた。
焚き火を囲み、五十人が地図を覗き込む。城の外観、周囲の地形、氷山からの道筋、北の丘の位置。レイナが昨夜丁寧に描き上げたものだった。
「よくここまで描けましたわ」レイナが少し照れながら言う。
「昨夜ずっと描いとったもんな」さくやが言う。
エレナが立ち上がり、地図を指しながら話し始めた。
「作戦を説明します。前提は二つ。吸血鬼は存在する。ユーリは生きている」
五十人が黙って聞いた。
「まず正面扉を爆破します。吸血鬼が出てきます。その瞬間、北の丘を爆破して雪崩を起こす。城から出てきた吸血鬼の足止めが目的です。その間にさくやとジュウベェが正面から城へ突入。同時にわたしとレイナは城の裏手を爆破して潜入します」
ラーシュは地図を見ながら静かに頷いた。
「城内でユーリを発見したら、ハスキーのソリに乗せます」エレナが続ける。「わたしとレイナがユーリをここへ連れ帰り、応急手当を行います。ラーシュとジュウベェは城内へ吸血鬼を誘導します。さくやは吸血鬼に爆弾を投げながら応戦。全員が城から離れたのを確認して、城ごと爆破します」
「以上です」エレナが静かに言った。
さくやが口を開いた。
「……随分ラフな作戦やな」
「大枠です」エレナが真顔で答えた。「細部は現場で判断します」
「それが一番心配なんやけど」さくやがぼやく。
「理論的には問題ありません」
「理論値を超えたらどうするんや」
「善処します」
さくやは頭を抱えた。
「ラーシュ」さくやが聞く。「十人で吸血鬼を抑えられるか」
ラーシュは少し間を置いた。
「あの時の吸血鬼ならな。俺たちは強くなった」
「ジュウベェ、正面突入の時は絶対単独で動くな」さくやが念を押す。
「承知しましたぞ!」ジュウベェが力強く言う。
「もう一度言う。単独で動くな」
「……承知しましたぞ」
■爆薬製造
作戦会議が終わると、エレナが全員に材料を配った。
「一日かけて大量に作ります。手順を教えます。全員でやります」
五十人が一斉に動き出した。
エレナが手順を説明し、さくやが段取りを組む。ラーシュの十人も黙々と作業に加わった。ジュウベェたちも真剣な顔で材料を組み合わせていく。
「これ、どれくらい作るんや」さくやが聞く。
「城内の要所に仕掛けるぶん、雪崩用、裏手突破用、応戦用。合わせると相当な数が必要です」エレナが答える。
レイナは爆薬を丁寧に包みながら、静かに手を合わせた。
「神様、この爆薬が正しい使われ方をしますように」
「それ祈ることなんか」さくやが苦笑いする。
一日かけて、大量の爆薬が完成した。
■役割分担
夕方、さくやが全員の前に立った。
「まとめるで」
「戦闘班はラーシュ、ジュウベェ、ウチ。捜索班はエレナとレイナ、それぞれ十人ずつ。ハスキーは城の外で待機。撤退の合図は口笛や」
さくやが短く口笛を吹いた。
「これが聞こえたら、全員外へ出る。迷わず出る。ええか」
五十人が頷いた。
「突入は明日の夜明けや。今夜はゆっくり休んでくれ」
■夜
焚き火が静かに揺れた。
城の影が遠くに見える。大量の爆薬が、雪の上に静かに並んでいた。
さくやは空を見上げた。雪が静かに降っている。
「ユーリ、もう少しやで」さくやが小声で呟いた。
ラーシュは焚き火を見つめたまま、何も言わなかった。
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