■第181話 氷の城編 消えた村
何かがいた。
そして、全員が消えた。
雪だけが、静かに積もり続けていた。
■村の中
三十人は村を歩き回った。
家の中を覗くと、食事の途中で放棄されたような跡があった。椀がひっくり返り、食料が床に散乱している。壁には深い引っかき傷が残り、扉が外れて雪の中に倒れていた。
「抵抗した跡がありますわ」レイナが壁の傷を指さした。
エレナは床を調べながら言う。 「複数の足跡が入り乱れています。ユーリたちだけではない。別の何かがいた」
さくやは村の中央に立ち、周囲を見渡した。
トナカイがいなかった。ユーリはいつもトナカイと共にいた。そのトナカイも、一頭も残っていない。
「全員、連れて行かれたんやな」さくやが静かに言った。
■手がかり
三十人で手分けして痕跡を調べた。
ユーリが普段使っていた小屋の床に、かすかな血の跡があった。引きずられたような跡が、小屋の外へ続いている。その跡は村の外れで雪に覆われ、方向さえ分からなくなっていた。
「どこへ行ったんやろ」さくやが雪の上に膝をついた。
その時、エレナが村の外れの木に気づいた。樹皮に何かが刻まれている。近づいて見ると、矢印だった。小さく、浅く、でも確かに刻まれていた。
「ユーリが残したんですわ」レイナが静かに言う。
矢印は、雪山のさらに奥深い方向を指していた。
■師匠への連絡
さくやは無線を取り出した。
「師匠、聞こえますか」
しばらくして、師匠の落ち着いた声が返ってきた。
「聞こえますよ。どうしましたか」
「ユーリの村が荒れています。家は壊れ、道具が散乱して、木々も倒れています。ユーリを含む三十人全員がいない。トナカイも一頭もいません。村の外れの木に矢印が刻まれていました。ユーリが残したと思います。雪山のさらに奥を指しています」
少し間があった。
「……分かりました。追ってください。ただ、必ず目印を残しながら進んでください。木に印を刻むでも、目立つ石を置くでも。後から来る者が辿れるように」
「分かりました」
「気をつけて」
さくやは無線をしまった。
師匠はすぐに動いた。南西の拠点のジュウベェに無線を入れ、穏やかな声で告げる。 「ユーリが雪山で失踪した。よければ十人、向かっていただけますか」
ジュウベェはすぐに頷いた。十人は車に乗り込み、レイナの村へ向かった。到着次第、ロープウェイで雪山へ入る手はずだった。
■出発
三十人は装備を整えた。
食料、防寒具、医療品。エレナが素早くまとめ、レイナが各自に配る。誰も多くを話さなかった。やることが分かっていたから。
さくやは矢印の方向を見た。白銀の世界が、どこまでも続いている。
「行こう」
三十人は雪山の奥へ向かって歩き始めた。一歩ごとに、木に印を刻み、目立つ石を置きながら進む。風が吹き、雪が舞う。ユーリが刻んだ矢印を胸に、足跡が白銀の世界に続いていく。
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