■第178話 王都奪還編 再開発の始まり
仲間が増えると、仕事が変わる。
一人でできないことが、できるようになる。
砂漠の商人と荒野の男が、王都に現れた。
■工事の始まり
大統領制の宣言から三日後、城下町の各所で工事が始まった。
まず手をつけたのは上水道だった。老朽化した配管を掘り起こし、新しい管に交換していく。防火水槽の増設、雨水管と上水管の分離工事、ろ過設備の増設。さくやが設計図を手に現場を走り回り、エレナが数字で進捗を管理し、レイナが市民への影響を確認し、ユーリが全体を俯瞰する。
城下町のあちこちで石畳が剥がされ、地下に人が潜り、槌の音が響いた。
「ここ、図面にない埋設管がある!」さくやが地下から叫ぶ。
「エレナ、どうする!」
「少し待ってください」
■ハリムの到着
三日目の昼、城門の方から砂埃が上がった。
荷車の列だった。大小様々な荷車が連なり、資材が山積みになっている。先頭に立つ小さきものが、遠くからさくやを見つけて手を上げた。
ハリムだった。
「待たせたな」
「来てくれたんか」さくやが駆け寄る。
「商人やからな」ハリムは笑った。「資材の手配は俺の仕事や。配管、ろ過装置、防火水槽の部材、全部積んできた。足りないものがあれば言ってくれ、すぐ手配する」
エレナが荷車の中身を確認しながら言う。
「全て揃っています。手配が早い」
「注文書を見た瞬間から動いとった」ハリムは涼しい顔で答えた。「商人は段取りが命や」
さくやは荷車を見渡した。一ヶ月分の資材が、一度に揃っていた。
「……さすがや」
「串カツとは言わんといてくれ」
さくやは笑った。
■リオンの到着
翌朝、今度は別の方角から砂埃が上がった。
こちらは人の群れだった。小さきものたちが大勢、荷物を担いで城門へ向かっている。先頭を歩く者が城門に差し掛かった瞬間、さくやは目を丸くした。
リオンだった。
「さくや! 聞いたで、王都で大きな工事があるって! うちの連中、全員連れてきた!」
「全員て……何人おるんや」
「三万人!」
さくやは頭を抱えた。
「多すぎるやろ」
「多い方がええやろ!」リオンは胸を張った。「荒野の鉱山で鍛えた連中や。掘るのも運ぶのも得意や。何でも言ってくれ、すぐ動く!」
「……考えるより先に行動するのは相変わらずやな」さくやが苦笑する。
「そや! 段取りはさくやさんに任せる!」
ユーリが静かに言った。
「人手は多い方がいい」
エレナが頷く。
「工期が大幅に短縮できます」
さくやは腕を組んで三万人を見渡した。それから、大きく息を吸った。
「……ほな、段取りするか」
■工事の加速
ハリムの資材とリオンの三万人が加わり、工事の規模が一気に変わった。
城下町の各地区で同時に工事が進む。上水道の改修、防火水槽の設置、雨水管の分離。地下では配管が新しくなり、地上では石畳が戻っていく。
さくやが現場を走り回りながら指示を出す。リオンはさくやの指示を受けてすぐに動き、三万人を的確に配置していく。ハリムは資材の流れを管理しながら、足りない物があれば即座に手配した。
「このペースなら三週間で主要工事が終わります」エレナが計算する。
「当初の見込みより二週間早い」さくやが頷く。
夕暮れ、工事現場を見渡すと、城下町が少しずつ変わっていくのが分かった。掘り返された石畳、新しい配管、増設される防火水槽。まだ工事の途中だったが、確かに形になっていた。
ハリムが隣に立った。
「ええ街になりそうやな」
「なるで」さくやが答えた。
レイナが手を合わせる。
「神様も見守ってくださっていますわ」
リオンが大きな声で言う。
「完成したら、みんなで飯食おう!」
「それは賛成や」さくやが笑った。
城下町の夜に、槌の音がまだ響いていた。
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